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面妖日記 薄紙を燃やした匂い

ここ一ヶ月ほど、夜中に絵を描いたりトイレに行ったりと、一人になった時、薄紙を燃やしたような、フライパンを空焚きしたような、焦げた匂いが薄っすらとまとわりついていた

タバコの残り香とも違い、ヤニ臭さがなく妙に掴みどころがない

臭うだけで、不気味でもなく怖くもないのである

ただただ、ふわふわと私の周りを漂い、暫くすると消えていく

そんな日々がひと月以上続いた。

ふと妖怪アンテナ長男に聞いてみたら

「あっこれ・・・羨ましいとか、何かを諦めた感じだ。これ生霊だな。」

「ホンでもかなり薄ぅ〜い生霊だなぁ」と言われ、誰ぞい?と思った瞬間、古い友人kの顔が浮かんだ

えぇえええええ🤪🤪🤪

Kちゃん?!?!

慌ててタロットで「これKちゃん?」と聞くとカップのエース

マジすか?yesじゃん

Kちゃんは古い友人で、モデル体型で美人なので、たまに人物デッサンのコスチュームモデルをしてもらっていた。

人見知りなので、少人数・・女性のみの参加のデッサン会だった

彼女の仕事の都合で、年に1、2回の頻度だったように思う

このデッサンはKちゃんではありません。彼女を描いたクロッキー画は手元に無いので、過去作品で参照まで

普段はOLをしていたが、副業で占いやハーブ療法などを手掛けていた。

勉強熱心でとにかく知識が豊富
離婚をきっかけに、数年前からOLを辞めて、占いとハーブ療法に専念するようになっていた。

それでも経営はなかなか厳しく、アルバイトをしながらの生活だったと思う。たまにイベントなどで見かけることがあり、時折 飲みに行ったり、お茶をしながら雑談を楽しんでいた。

Kちゃんとは不思議話で盛り上がることも多かったが、グーッと距離が近くなったと思うと2、3年音信不通の後、急に連絡が来たりした。

何故か偶然イベントで出会うことが多く、そんな時はまた近しくなったり、また音信不通になったりの繰り返しだった。

喧嘩したり不具合が生じるわけでもなかったが、どことなく掴みどころのない感じだった。

そんな彼女から数週間前に連絡をもらったことを思い出した

「昔描いてもらったデッサンを買い取りたい」という話だった

デッサン画は、今の家を建て替えるときに、ほんの少しだけ残して捨ててしまったが、Kちゃんのデッサンは何枚か手元に残っていた。

あくまで練習のつもりのデッサンなので、残した3枚全部進呈することにしたが、「それはだめだ」と言うので、お小遣い程度の金額をいただく事で納得してもらった。

急にどうしたのかラインで聞いてみると、「迷ったときのお守り」と言われ?マークだった

突っ込んで聞いてみると「仕事も頑張りたいし、親の介護も今後視野に入れて、絵を見て頑張ろって思いたいから」ということだった

それ以上は多分聞いても教えてくれない感じだったので、深追いせずに「ホンジャマカ額は自分で入れてねー」と軽いのりでラインを閉じた

しつこいようですが・・・このデッサンはKちゃんではありません。彼女を描いたクロッキー画は手元に無いので、過去作品で参照まで

その時ふと 何やら寂しい感じがして
仕事が上手く行ってないのかなぁ・・・とか

親の介護って・・・まだ親、若いよねぇ(彼女は私よりだいぶ年下)

なんぞ?親が病気?

などとも思ったが

孫守りの疲れで、その日は荷物を梱包してすぐに寝てしまった

そんなことを思い出していると

長男が「オレこの感覚分かるかなぁ・・俺が舞台諦めた時の感覚に似ている・・・ウ~ン寂しいような、役者続けている奴らが羨ましい様な・・・」

長男は東京のちいさな舞台で、役者をしていた。

けれど、コロナ渦と生活苦で、親しい劇団もバタバタ解散し、本人もメンタル崩壊しかけてやむなく帰省。

「挫折感と焦燥感と帰ってこれたという安堵感かなぁ・・・俺この人の諦めと寂しさ・・・分かる・・・オカンもそんな時期あったんじゃね?」

少しだけ困った顔に見える長男に言われ、そういえば・・・と思い出す

息子たちがまだ小学生の頃、PTA役員と地域のボランティア役員がほぼセットで来たとき・・・あーこれで暫く絵も描けないなぁ、公募もコンクールもいよいよ出せないなぁ・・・教室の駆動時間も減らさないとなぁ・・・と諦めたときの心境

公募団体に復帰したものの、自分の居場所はここじゃないなぁと悶々とした日

昔から薄っすらと感じていた、既存の美術活動では生き残る才能がない感じ・・あぁ、ここでは無理だなぁという諦め感

確かに似ているのかもしれない

だが!しかし!

同じではない

私は「しつこい」のである!😜

確かに、仕事を減らしたり、公募用の作品制作も辞めたわけだが・・・描くことは諦めなかった

「自分の場所は自分で作る!」と小さい作品をチマチマ描き続けたのである

だから、多分息子のように、Kちゃんに気持ちを重ねることはできないのである・・・

「まぁ、なんだかんだで、占いも絵もそこそこお金にできて続けている、オカンが羨ましかったり、聞いてほしかったりなんじゃね?」

そう長男に言われて

速攻「そりゃ無理だ、だってあの娘相談されてもホントの事言わないし、アドバイス欲しいと言われて私なりの意見を言っても、想像を超える、斜め上の方向に行くし、いつも突然連絡途絶えるし・・・こっちがポカン!とする事多すぎたから、無理やなぁ」

そうなのである、美人で愛想が良くて、礼儀正しくて、仕事熱心で、しっかりしているのか抜けているのかよく分からなくて、不思議話で盛り上がれるKちゃんは、実は掴みどころのない不思議ちゃんなのである

最初のうちは「何この娘?天然?オモロー」とか思っていたし、彼女のどこか一線を引いている感じもベタつき感が無くて、触れられたくないならそれでいいか・・・と思っていた。

それでも、そんなつかず離れずの関係性も20年以上続くと、ふと気付くことがある。

「あれ?この娘、いつも同じ所を回ってないか?」

頑張って頑張って、空回りして、周りが見かねて手を差し伸べると、軽やかにヒョイと乗っかり、「ありがとうございます頑張ります」と言って「ああよかったね」と安心していると「私決めました!」と明るい笑顔で言う彼女

しかしながら・・・彼女が決めた方向性が「ええ?工エエェェ(´д`)ェェエエ工そっちの方向??」

ということが多い。

「いや、それ極端じゃね?」と言うと「大丈夫!やるだけやる!」と、聴く耳はない。こうなると割と頑固なのである

そう言い切るときの彼女の周りは、ピシッとガラスの壁が張られたような感じになり、一歩も踏み込めないのである。

いい大人が自分で決めた事だし、私は彼女の親友でもなければ親でもないわけなので「まぁいいか」と切り離して考えることが多かった

そんな彼女をオモロイと思い、嫌いになれないでいた私だが

最近は、孫守と家中蔓延したインフルエンザで彼女の事もすっかり、頭の片隅に消えていた

今回の生霊騒ぎで(本人は多分気づいていない)何やら今までとは違う展開になるのでは?と思った。

多分 今の彼女に、親元に帰らなくてはどうにもならない事が起きているのか・・・(なにせ母ひとり子一人なので)これから起きるのか・・・わからないけど

何かを諦める、というところに来ているのかもしれない

「薄紙幽霊」
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人間関係にも賞味期限があると私は思っている。

今回の一連の動きは「そろそろ潮時かな?」と思わざるを得ないのである

黙ってフェードアウトが良い事もある。

願わくば、彼女が次の展開にきちんと足が向くことを願うばかりだ

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