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ロジハラ

今週のワイドナショーで取り上げられて一時話題となったこの言葉

『ロジハラ』

ロジカルハラスメントの略、
論理的に正しい指摘であっても 相手を思いやる気持ちがない人
真っ向から正論をぶつけて 困らせたり優位に立とうとする人
*ワイドナショー参照


自分はかなり論理的なタイプ。
きっかけは、小学5年で移籍したスイミングクラブのコーチ。1時間練習が週に2回しかないという環境の中で効率的な練習をするために、「どんな目的でその練習をするのか」をよく教えてくれた。
そのおかげでタイムがどんどん良くなっていったことが成功体験となり、論理的な思考となっていった。

水泳はもちろん、勉強にまで論理的を持ち込む。
「なぜそうなるのか」「どうやってそれが導かれるのか」というちゃんとした根拠に基づいて論理的に覚えるものもあれば、根拠はなくでたらめだけどちょっと腑に落ちるような嘘の理由付けで論理的に”見せる”こともした。

例えば、日本の地理で中国地方を細分化すると、山陰地方・山陽地方となる。
これの根拠のある理由は、中国語で陽が当たらないところ(北)を『陰』、陽の当たるところ(南)を『陽』というかららしい。でも、「中国語なんて知らねーよ」って話だ。
それなら嘘でも、太陽が南から照らしたとき、中国地方の真ん中を東西に走る中国山地の影響で島根と鳥取は影になるから『陰』、広島と岡山はその影響を受けないから『陽』と考えた方がわかりやすい。

そして、3年以上の塾講師経験を経てたどり着いた、これらよりももっと単純な覚え方が、
「原爆ドームとかカープとかサンフレッチェがある広島と、ただでさえ何にもない砂丘しかない鳥取、どっちが陰キャラ?陽キャラ?」だ。

全く根拠はないしただの偏見だけど、なんか納得できる理由付けをする。これが、論理的に取りつかれた人間の思考回路だ。


日常生活でもそう。何か物事を行うときは、ゴールに向かうまでの道のりを無理やりにでも論理的に作る。そうすることでモチベーションにも繋がる。
さらに、理詰めをすることでどこが欠けているか、矛盾しているかを知ることもでき、効率化を図るだけでなく、完成度も格段に上がる。

だが一方で諸刃の剣でもある。論理的には”到底”理解しがたく、納得できないこと(このまま詰めればもっと良いゴールに導けるのに、(変更できない)指示されたゴールがそれより格段に劣っている場合など)となると「無駄」だと思ってしまい、エネルギーがうまく使えない。



自分のロジカルさを書き連ねたところで、ここからが本題。

この『ロジハラ』のニュースを見て、自分もロジハラをしてしまっていたのではないか、という思いが出てきた。


大学時代はずっと塾講師のバイトをしていた。その時の指導は(個人的に)「とにかくシンプルでわかりやすい論理的な覚え方」をモットーに行っていた。
例えば先ほど挙げた山陰/山陽地方の覚え方など。
(ただ「島根・鳥取と広島・岡山、どっちが陰キャラっぽい?」と聞いて、これらの県のことを何も知らなくて「広島・岡山」と勘で答えられたり、アジア圏の米生産量に関する話で「細長いお米、タイ米ってあるでしょ?」と言ったら、その存在を初めて耳にしましたみたいな反応を中1の生徒×3人全員にされるなど、常識を知らなさすぎるとそれすら使えなかったが)

他にも、一次関数のグラフで「”調子がいい”時『右肩上がり』って言うから、傾きが”プラス”の時は『右上がりの直線』になる」とか、
国会の話で「政権握ってる方は余裕あるけど、政権握ってない政党は政権奪うのに必死で、上げ足取ったりギャーギャー騒ぐんだよ。霜降り明星の粗品も、騒いでるせいやに向かって言ってたでしょ『野党!』って。だから政権握ってない方が『野党』」みたいな。(芸能関係の話を交えて説明した中で唯一通じたのがこれ、今の子供って本当にテレビ観ないんだな)

こんな感じで、「それが本当かどうかよりも、わかりやすかったらそれでよくね?」精神で教えていた。(度が過ぎる場合はさすがに「偏見だけどね」とか「覚えるとしたら~」と言ったり、勉強が苦手な中学生相手でしか言わなかったりしたけども)


だが、こういった論理的な教え方もロジハラに当たるのではないかと思ってしまった。

先に挙げた例は少し違うので、ここで実際に自分がやっていた英語の授業の一部を紹介する。


【英語 現在完了の否定文、疑問文】

講師:
現在完了の否定文、疑問文の作り方は、be動詞の否定文、疑問文の作り方と同じ。じゃあ復習。「あなたは先生です」を英語で言うと?

生徒:
You are a teacher.

講師:
オッケー。じゃあ「あなたは先生ではありません」は?

生徒:
You are not a teacher.

講師:
そうそう、『be動詞の後に not をつける』んだよね。疑問文「あなたは先生ですか」だと?

生徒:
Are you a teacher?

講師:
完璧。『be動詞を一番前に持ってくる』んだよね。これと同じだから、be動詞を現在完了のhaveに置き換えると、否定文は?

生徒:
『haveの後に not をつける』

講師:
疑問文は?

生徒:
『haveを一番前に持ってくる』

講師:
オッケー、完璧!簡単でしょ?じゃあ練習問題解いてみるか。

~~~~~~~~~~

講師:
お、合ってる!この問題はなんでこの答えにした?

生徒:
現在完了の否定文はbe動詞の否定文の作り方と同じだから、haveの後に not をつけた。

講師:
解説まで完璧じゃん!簡単でしょ?

生徒:
簡単。これなら大丈夫。

講師:
よし、じゃあこれに似た問題を来週の授業前に小テストでやってもらうから。

ー翌週

小テスト
I have don't gone to Kyoto.

講師:
これ、なんでこの答えにした?

生徒:
うーん、わかんない...

講師:
現在完了の否定文ってどうやって作るんだっけ?

・・・・・・・・・・


こういった感じだった。
太字にした部分「これ、なんでこの答えにした?」は、ワイドナショーで上司からのロジハラとして紹介された「なんでミスしたの?なんでできなかったか説明して」というフレーズに似てないか。

思いやる心がないどころか、勉強できるようになってほしいと思いやっていても、困らせてしまってはいるし、講師と生徒という立場上どうしても”優位”にもなってしまっている。

これがハラスメントになっていたら、もう教えられない。塾講のバイト辞めててよかったー。



過去のことをロジハラで訴えないでくれ。

訴えるなら、「山陰地方の島根には出雲大社があるじゃないですか!これのどこが陰キャラなんですか!」にしてくれ。
「Creepy Nutsの二人って、他のラッパーと比較すると陰キャラっぽいだろ?でも、ラップで日本一3連覇してるし、DJで世界一になってるじゃん。陰キャラにもすごいところがあるんだよ」って、それっぽく納得させてやるから。

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