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たこ焼き小話

このあいだホットプレートを買った。そうしたら、たこ焼きの鉄板もついてきた。そこで、先日はひともすなる「たこぱ」なるものを敢行した。しかし、このホットプレートの火力がいまいちで、遅々としてしあがらないので、友人たちと業を煮やして「するな」と書いてはあったけど、カセットコンロに直にのせてやりましたよ! この我々の蛮勇により、たこ焼きは早く調理が済みたこぱは盛り上がりをみせたのです。ガス最高。

各自回すシステム

ちなみに、我が実家には、たこ焼きの文化はななかった。というのも、父母は関東圏出身だったので、粉ものを焼くといえば、具がやたらシンプルなお好み焼きしか出てこなかった。このそっけないお好み焼きというものは、父の稼ぎはそんなに良くなかったからうちのオリジナルか? と思ったりもしていたが、後年人形町の『松浪』に連れて行ってもらった時に、実家のお好み焼きと同じようなものだったので、ああいうのが関東のお好み焼きなんだとわかった。とうさんごめん、貧乏のせいじゃなかった。ああ、お好み焼きの話になってしまったが、たこ焼きよ。つまり、西の食べ物であるたこ焼きというものは家庭では出てこなかった。そんなわけだから、わたしがたこ焼きを食べたのはずいぶんあとになってからで、中がとろっとしているので、なんだこの生焼けは、とちょっと思った。なんなら今もちょっと思っている。いまもちょっと思っているが、夜に羽田の国際線ターミナルからどこかに行くときにはかならずたこ焼きを食べてしまう。といっても当然ながら、ここ3年ばかりご無沙汰をしてはいる。

最近、5分ばかり遅刻する癖が出てしまっているので、でかい口を叩けたものではないけれど、大金がかかっている移動の場合、慌てたりするのが本当にいやなので、空港にはだいたい早く行って、エンジョイする。ギリギリについて空港滞在時間を最短にしたいという向きもあろうが、とにかく私は安心してグズグズしたいのだ。「でも乗れる」ではなく「乗れなかったらどうしよう」の方が勝つ。ハラハラしてなんの得があるというのだろう。時間たっぷりでさっさとチェックインしてさっさと出国の方がよっぽど精神衛生上良い。搭乗時間まではうきうきと空港内のお店と飲食店をウロウロする。空港のごはんは高いけども、そこで、馬鹿みたいに飲み食いするわけでもないじゃろう? バックパッカーの倹約思想からの解放には10年以上を要した。もちろんおっしゃるとおり、値段に見合う味に出会うのは街中よりだいぶ率は低いけど、まあおいしいものもある。旅行は日常よりはだいぶ運に左右されるので率が狂うことだってあるし、まずさだって醍醐味じゃないか。運はいい方だし。

微妙な待ち時間

でな、羽田の国際線ターミナルの出国後のエリアには、「甚六」があるのだ。白金にあるお好み焼き「甚六」の。粉物ととんかつとコロッケを愛する社長がすきな店で、会社の打ち上げのようなものでたまに連れて行ってもらっていた、高級感あふれるので自分では行く勇気はない。それの空港出張所のようなものだ。もちろんたこ焼きも提供している。ただ、ここで働く店員はおおよそが外国人だったりするのだが、彼らだとたこ焼きがあっつあつで出てくることがまれなのが残念ではある。あっつあつが大好きなのは、中国人と日本人くらいなもので、ほかの国の人たちはそんなにあっつあつに興味があるわけではないらしい。世界のラーメンの提供温度を調べると、日本と中国がダントツであっつあつだという記事を読んだことがある。そういえば、ベトナムのフォーもそんなでもない事が多い。まあ、それは食文化というもので彼らは彼らなりにおいしい温度で提供してくれているのだからしゃあないと思うことにしている。まあ、食べにくいしね、あっつあつ、実際。7割の確率で火傷しないたこ焼きとビールを注文して、飛行機の離着陸をギラギラの目で眺めていると、ギリギリ派の友達が空港に到着したと連絡をくれたりする。当然、生焼けだよなたこ焼きって、とは思いながら。

この、出発前ぬるたこ焼きとビールを決めるとなにがおこるかというと、その旅を思い出す時に、まずソースの香りがまとわりついてしまう、ということである。なんかもうちょっとこう‥‥きらきらした情景とともに始まりたくはある。海外に憧れてた小さい頃はバブル期だったもので、そういう場所はいつもおしゃれであり、カクテルであり、オリーブが楊枝に刺さっているものだ、といつも思うが、ついついたこ焼きとビールになる。あ、ついで情報だが、早朝出発のときはうどんがおすすめです。梅わかめうどん。お店の名前を忘れたけれど、窓際にあるうどんやさん。ぬるめなのは「甚六」と同じ。

もうちょっとでやれるかな。空港たこ焼きビール。