嘘っぱち怪談大会


こんにちは。詠み人知らずです。

先日、嘘っぱち怪談大会をやりたくて公募したところ、沢山の暇人に参加いただいたため、その時のレポートとなります。

今回の嘘っぱち怪談大会のルール


セリフや文章の一人称や語尾を変えるなどのアレンジはアリ

実在する名詞を使用するのはアリ


※以下の怪談はすべて嘘っぱちです。


1.

キティちゃん

自販機

首を絞められているようだった


 ……友達――仮にAくんとしますね。ゲーセンでバイトしてたAくんから聞いた話です。皆さん、キティちゃんのポップコーンマシンってわかります?そう……ゲームセンターとかにある……。あれって、基本的にずっと歌ってるじゃないですか。それが、ある時急に喋らなくなったらしくて。故障だと思って主任に伝えたら、「毎年この時期になると黙るんだよ。お金を入れてボタンを押したらまた歌うから放っておいて大丈夫」って言って、特に対応もしてもらえなかったらしく……。それからしばらく、キティちゃんが歌わない日々が続きました。いつも何時間も聞いていたから、最初こそ少し違和感があったものの、人間すぐ慣れるもので、特に何事もなく過ごしてました。

 8月の某日、バイト終わりのAくんが、帰る前に自販機で飲み物を買おうとしたんです。キティちゃんのポップコーンメーカーの前を通り過ぎて、一番奥の自販機にある炭酸飲料を買おうとしたら、急にポップコーンの歌が鳴り響いたんです。「できたてのポップコーンはいかが?」って。Aくんは、ある時期に黙ると聞いてたので、単純にその時期が過ぎて直ったのかなって思ってました。「そうだ、せっかく直ったんだし、ポップコーン買って帰ろうかな」と思い、お金を入れてうすしお味を選択してレバーを回しました。できたてのポップコーンは夏に食べるには熱すぎるけれど、あとを引く味がしたそうです。
 帰宅して残りのポップコーンも平らげて、寝る準備をして布団に入ったら、どことなく胸が重い感覚がしました。夏だから寝苦しいのだろう、と寝返りを打とうとしましたが、身体が言うことを聞きません。誰かが馬乗りになって、首を絞められているようでした。もがきたくても動けず、必死に叫ぼうにも声も出ません。こんな非常時にも関わらず、頭の中では「できたてのポップコーンはいかが?」とあの歌声が響いていました。このままでは窒息死する、なんとかして息をしないとと思ったとき、ふいに携帯電話が鳴り響きました。すると、頭の中の歌声が消え、上にのっていた“何か”もいなくなりました。

 翌日出勤すると、やっぱりポップコーンメーカーは歌っていました。昨晩の出来事があったので、少し恐怖を感じながら、主任に「あのポップコーンメーカー直ったんですね」と言いました。
「え?なんで?」
「えっ、だって歌ってるじゃないですか。」
「……いや?今日も黙ってるよ」


2.

キキララ

雪見大福

そうして、私たちはその後その森に行くことはなかった


 私の実家、すぐ近くに森があるんですよ。というか、山を切り崩して建てられた地域だったので……。坂はきついですけど、コンビニとかバス停とか学校が近くにあって、それなりに人気な土地だったんですね。んで、コンビニの近くに一際深い森があって。昼頃とかだと鳥とかリスとかもいて、写真撮る人も多いんですけど、夜になると街灯もないから真っ暗で不気味だったんですよ。

 ある日、冷凍庫にアイスがないことに気づいて、コンビニにアイス買いに行ったんですよ。雪見だいふく2つ買って。帰りは下り坂だから、足元気をつけながらかけおりていって。そしたら、道でキキララのキーホルダーが落ちてるのを見かけたんですよ。落とし物かな?って。ここにあったら踏まれるしなぁと思って、ガードレールのポールに引っ掛けてあげたんですよね。んで帰って。次の日、学校から帰るとまた同じところに同じキキララのキーホルダーが落ちてて。引っ掛けたところにはなかったから、風かなんかで落ちたのかな?って思ってまた引っ掛けてあげたんですよ。それが4日くらい続いて。なんか気味悪いキーホルダーだなって思いました。でもキキララだし。そんなオカルト系とは縁もゆかりもないようなキャラでしょ?特別気にかけることもなかったんです。
 休日になって、友達と近くのジェラート屋に行こって話になって、お昼くらいにいつもキキララを引っ掛けてる道を通ったんですよ。そしたら、ポールにもいつも落ちてるところにもなくて、少し森に入ったところに落ちてたんですよ。あ、これキーホルダーの金具が光って、カラスか何かが取ってるから落ちてんのかな?って思ったんですけど、それにしては今日は変なところというか、いつもと違うところに落ちてるなって。これからジェラート屋に行くってのもあって、靴とか手とか汚したくないし、そのまま通り過ぎていったんですよね。
 でまぁジェラート食べてちょっと散歩して、そろそろ帰るかーってなって、また同じ道通って。そしたら、森の奥の方に子供の後ろ姿が見えたんですよ。片方の方がちょっと大きかったけど、二人の子供の後ろ姿。もうすぐ日も暮れるし、何より微動だにしなかったんで。「何してるの?」って後ろから声かけたんですよ。でも聞こえなかったのか返事もなければなんの動きもなくて。仕方ないから、友達と森の中入っていって、その子供たちのところまで行って、後ろから「もうすぐ日暮れるから帰りな」って声かけたんです。でも返事どころか振り向きさえしなくて、流石に失礼すぎるでしょと思って前に回り込むと、目とか口とか耳とかが一部……ガサついてるっていうか……欠けてるっていうか。しかも血も出てて。友達と思わず悲鳴をあげて目を逸らしたんだけど、枝が揺れる音以外しないから、そ〜〜〜……っと目線を戻すと、子供二人いなくなってて。代わりに、さっきまでいた場所にはキキララのキーホルダーが落ちてて。そのキーホルダー、よく見たら色がちょっと剥げてて、その剥げてるところとさっきの子供二人の欠けてるところと同じだったんですよ。

 もうキーホルダーなんか拾わずに急いで来た道を戻りました。そうして、私達はその後その森に行くことはありませんでした




3.

KIRIMI.ちゃん

喫茶店

ネイル

 実はこの場で初めて言うんだけど、俺昔女だったんですよ。

(そこから始める必要ある……!?とざわめく一同)

その……まぁ、はい。で、喫茶店でウェイトレスとして働いてた時の話なんだけど、当時の俺のシフトが朝の10時半から午後3時までだったんですよね。開店は朝の10時から、閉まるのが午後5時半。俺が現場に入ったら、いつも一番奥の席に髪が長くて綺麗な女の人が座ってて、コーヒー飲みながら読書をしてたんですよ。昼頃になるとクラブハウスサンドとコーヒーのおかわりを注文して、また読書。俺があがる時間になっても席から動かなかった方でした。あるとき、ネイルが変わったのに気づいて、でもここで言ったら嫌がる人もいるしなと思ってじっと見てたら、「ネイル変えたの。気づいてくれた?」ってお客様の方から声をかけてくださったんですよ。「はい!いいですね、花のネイル。」なんて返して、初めてまともに会話しました。そこからちょくちょく話すようになって、伝票書くためのボールペンをKIRIMIちゃんにした時も「ボールペン変わったのね。」なんて声をかけてくださったりしたんですよ。……うん、仲は良かったと思います。

 割とそのお客様のことは好きだったんだけど、ちょっと予期せぬ出来事がありました。なんとそのお客様がいなかったんです。いや、ほぼ毎日いる方が変だけれど、それでもその方がいるのはいつものことだから心配になったんですよね。で、その日初めて来店されたおばさまが、じっと俺のことを見てたんです。「どうかされましたか?」って声をかけたら、「あなた、最近仲良くなった人とかいる?」って聞かれて。いやー、特には思いつきませんねって返したんですけど、「最近話すようになった人とか、いるでしょう?絶対いる。」って言われたものだから、「最近常連のお客様とはよく話しますよ。」って答えたんです。そしたら、「それは良くないものだ」「今すぐ絶交しなさい」「ここのバイトもやめなさい」って言うものだから、ちょっとムッとして「どうしてですか?」って聞いたんですよ。
「その常連は幽霊だ」
「ほら、あなたのすぐ後ろにいるんだから!」
「今すぐ除霊してあげる!」
って言われて、手をぐっと掴まれたものだから思わず大きな声で「結構です!!」って払い除けて、店主もお客様のことなだめて対応してくれたんですよ。そんなオカルト話じゃあるまいしって思って、次の日いつもどおり髪の長い綺麗なお客様がいつもの席に座ってたから普通に接客しながらお喋りしてたんですよ。その日の午後3時、バイトからあがるときにそのお客様も「私も今日は帰ります」って仰ったものだから、珍しいなぁと思ったんです。帰っている途中、なんだか視線を感じると思って振り返っても、誰もいなかったんですよ。多分昨日のこと引きずってるんだなって思って考えないようにしました。

 それからしばらくして、大学進学と共にそのバイトをやめて引っ越しをしたんですよ。で、大学入学後、新しくできた友達とパーティーするために家に招待したんです。浮かれてたくさん写真を撮ったんですけど、その後撮った写真を送ってくれた友達が、「あの日こんな人いた?」って文言とともに、写真の一部を拡大して切り取ったものを送ってくれたんです。その人、あの喫茶店の常連さんそっくりだったんですよ。気味が悪くて怖くなって、霊媒師に除霊を頼んだんですけど、その霊媒師曰く「非常に強い感情があるから、すぐに除霊はできない」って言われました。ただ一つ、性別を変えたらその感情はなくなるかもしれないと言われたので、急いでタイに行って、今はこんな感じで男として過ごしています。手術してからは肩こりとかもなくなって、視線を感じることもなくなりました……。


4.

見知らぬ男が立っていた

髪の長い女が恨めし気にこちらを見ていた

少年の声が聞こえた


 高校生の時の話なんだけど、徒歩通学だった俺はいつもの道を歩いてたら工事中になっていて迂回を余儀なくされたときがあったんだよ。で、これは俺が通ってた高校に流れてた噂なんだけど、「その道(迂回する際に通る道)では昔交通事故があった。その事故によって母親とその子供が亡くなった。子供は車にはね飛ばされ、母親と離れ離れの状態で亡くなった。その道を通るときに少年の声が聞こえたら、悲鳴であっても絶対に声を出してはいけない。出したら最後、その少年が親だと勘違いしてついてくる」ってのがあって。朝はいいんだけど、部活終わって帰るときだと街灯が一切なくて、しかもあの噂もあってちょっと怖いな〜と思いながら歩いてたわけ。そしたら、よく見えなかったけど見知らぬ男が立ってたの。じっと止まってるから、ただでさえ不気味な道なんだからやめてくれよ〜って思いながら早足で通り過ぎたんだよ。でもまぁ噂の少年とかじゃないし、そりゃおじさんが道にいることもあらぁなって思って気にせずその日は帰ったんだよね。
 次の日、部活終わりだから割と夜遅い時間、またその道を通ったわけ。そしたらまたおじさんが立ってて。暗いからよく見えないけど、俺より背が高いくらいの男ね。で、よく聞くと「どこだ……どこだ……」ってなんかぶつぶつ言ってたんだよ。なんか探すにしても、こんな暗闇じゃ無理でしょと思って、「なんか探してるなら携帯で照らしましょうか?」って声かけたんだよね。そしたらそのおじさん、「ありがとう……」って言ったから、「探しものなら手伝いますよ」っつったんだけど、返事返ってこなかったから、とりあえず視線の先あたりを照らしてたの。でも、そこからじっと眺めてるだけで、「どこだ」とかも言わないまま20分くらい経ったかな、いよいよもう痺れを切らして「門限もあるんで帰ります」っつって。門限なんかないのに。んで帰ったの。
 次の日帰るとき、おじさんいなくなってたから「あ、まぁなんか見つかったのかな」としか思わなかったんだよ。んで普通に帰って。

 んでしばらくして、今から数年前にね、久々にその道通ったわけよ。車で通ってさ。すっかりあの噂とかも忘れてて。そしたら事故ったんだよ。事故ったっつってもそんなに大きな事故ではなかったんだけど、ガードレールに派手にぶつかって。その時にさ、俺見ちゃったんだよね。髪の長い女が恨めし気にこちらを見てのを。そしたら、後ろから「お母さん……お母さん……」って聞こえてきたわけ。その声がね、あの日夜道で会ったおじさんの声だったんだよ。


5.

路地裏

ピエロ

マスターは私に一杯のコーヒーを差し出した


 昔、突然雨がざーって降り出した夜に、雨宿りとしてバーに入ったんですよ。ピエロっていう名前のバーでね。繁華街の少し外れにあったんですけど、繁華街の少し外れっていうと、風俗店とかが結構近くにあったりして。で、ピエロもまた風俗店と同じビルに入ってる小さいバーだったんですよ。で、風俗店って何かと怪談が多いものでね。で、そのピエロが入っていたビルと同じ建物の風俗店でね、従業員が職場の一室で首をつってたことがあったらしくて。その事件以降不審な現象がそのビルでよく起こるようになったって。ただの雨宿りだったもので、気を利かせたマスターは私に一杯のホットコーヒーを差し出しながら教えてくれたんですよ。詳しく聞くとね、その職場の一室でうめき声が聞こえたり、入り口にぼうっと白い影が見えたりするって。とはいえ、怪談としてはよく聞く話でしょう?眉唾だと思ってね、「へぇそんなことが」なんて適当に相槌をうって。しばらくすると雨足も弱まってきたから、お代を置いてありがとうねって店を出ていったわけですよ。今度酒でも飲みに来るわって言い残してね。

 それからしばらく……とはいっても、半年くらいしか経ってたんだけど、ふとピエロのことを思い出して、そういや酒を飲みに行くなんて言ったなぁって。ちょうど金曜の夜だったものだから、ふらっとまた繁華街までいって、路地裏に入って少し曲がって、あの日立ち寄ったビルまで行ったわけ。そしたらなんと、ピエロが閉まっててね!金曜の夜にやってないバーなんかないから、「あぁ潰れたんだなぁ」って。もう少し早く飲みに行けば良かったななんて思ってねぇ。でも折角ここまで来たから、適当にどっかで飲もうかと思って、少し明るい通りに出て居酒屋に入ったんですよ。そこで大将と話してねぇ。「大将、ここから少し路地に入ったところにあるピエロっていうバー知ってる?」って聞いたら、「だめだよお客さん、あんな不気味なところの話しちゃあ」って言うんだよ。確かに少し薄暗かったけれど、そこまで不気味とも思わなかったから、はは〜ん、これはあの怪談話が悪さしてるなって思って。
「え?なに、あのビルの怪談話そんなに有名なの?」
「有名だとも。あそこはなにかといわくつきなんだよ。入ってた風俗店の従業員とその下にあったバーのマスターとの間に子供ができてね。でもそこのマスターが認知しなかったんだよ。そしたら、その風俗嬢がマスターを刺しちゃって。そのあと職場の自分の担当部屋で首吊っちゃったっていうんだから。もう何十年も前の話だがね、未だに呪いがある〜だなんだで、人すら寄り付かないんだから。」

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