嘘っぱち怪談大会 No.2, 3

No.2

じとっとした嫌な汗で目が覚めた。初めて悪夢を見た。
家の周りを歩いていたら、突如として巨大な自転車に乗った老【婆】に追いかけられた。遠くにいる時は避けるだろうと思っていたが、異常なほど速かった。漕ぐスピードも速ければ、車輪の大きさも異常なほど大きいのだ。老婆は言葉を発するわけでもなく、猛スピードで近づいてきた。焦った私は大急ぎで走った。じゃりじゃりとした自転車のチェーンの音が響く。角を曲がっても尚自転車の走る音が聞こえており、振り返ると老婆は私を追いかけていた。無我夢中で走る中。足にぐにゃりとした感触が伝わる。犬の【糞】か何かを踏んだのだろう。確認している暇もなかった。鼻にツンとくる異臭がまとわりつく。追いかけられていよいよ轢かれる、というところで目を覚ました。

友人から【5mの自転車で追いかけまわす都市伝説】を聞いた、その日の夜に見た夢だ。この話を見聞きした人は、同じ夢を見るらしい。


No.3

彼女は動画配信サイトで、配信をしている。登録者数と再生回数に応じて、広告がついて収入を得られるらしい。【俺の彼女はアスナ似】だ。目が大きくて、色素が薄いながらも、気の強そうな表情が可愛い。彼女が主にやっているのは【化粧】品レビューだ。カメラの前に化粧品を持っていき、手でピントを調整しながら何やら話している。彼女の活動は応援しているし、基礎的な【パソコン】の使い方を教えたり、ちょっとした編集作業くらいだけだが手伝いもしている。化粧品レビューをしているのもあり、化粧品で場所をとるのがたまに瑕だが、それでも彼女が一生懸命やってることに口を出したくなかった。
化粧品レビューが主なコンテンツだからか、見ている人は基本的に化粧に興味のある人だったが、最近妙なコメントがつくようになった。始まりは生配信をしていたときだった。すっぴんから化粧をする過程を撮影しているもので、質感や発色について言及しているとき、コメントは「良さそう」とか「欲しい」とか「きれい」が圧倒的に多かった。そんな中、急に「どこに住んでるの?」と流れて来たのだ。気味が悪かったが、コメント量が多くすぐに流れてしまった。その後も似たようなコメントが多かったが、ある日急に「会いに行くね」というコメントが来てたのだ。流石に彼女も怯えてしまい、念には念を入れてなるべく二人で過ごすようになった。一か月間、なるべく一緒に過ごしてきたが、見知らぬ人間が彼女に会いに来ることは無かった。度を超えたいたずらコメントだったが、実害が出なかったことは嬉しかった。しかし、彼女がこんなことを言ってきた。

「この一か月、毎日夢に知らない男の人が出るの。いっつも同じ人。思い出したくないことまで夢でされる。もう耐えられない。」


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