神様

#創作大賞2024
#ミステリー小説部門

第十四話


う。
スペシャル中華。いいとこついてきたな。
「いやでも、そんなの何かのきっかけで、たまたま知りえるし、あきとの捜査で大学来てたなら、吉井さんがたまたま食べたとか。」
「秋斗さん、、今中さんに、スペチュードクって言われてましたね。これが親父ギャグかもしれないですね。」
スペチュードク。その会話を知っている人はいないはずだ。
何で知っているんだろう。あきとがいなくなる前の会話。
もしかしたら
「もしかして本当に神様なんですか。」
「まあ、はい。」
こんな普通の感じのおじさんが神様ってことがあるだろうか。
いやない。ないな。
「着きました。仙崎の自宅です。」
「こんな自宅前に停めてバレないですか。」
「仙崎は自宅には戻ってないですよ。」
「そうですね、電気も消えているし、美紗緒本当にいるんでしょうか。」
「今中さんは車で待たれますか。」
「いえ行きます。」
車から降りた。
吉井さんは勝手に門を開け、それから玄関ドアに手をかけ、そっとドアを開けた。
「えっ 吉井さん、鍵かかってなかったですか。」小声でたずねる。
それには答えず吉井さんは玄関できちんと靴をぬぎ部屋に入って行った。私もあわてて、そうっと後に続く。
「佐谷さん。」吉井さんがそう言ったほうを見ると美紗緒がダイニングテーブルの足のところに手を縛られていた。
「美紗緒!」
「香里、、」
吉井さんはポケットから爪切りのようなものを取り出し(たぶん爪切りだ)美紗緒の手の拘束具を切った。
「美紗緒、けがはしてない?暴力は、、」
「けがはしてない、、自宅にある契約書類を返してもらうってことで、自宅に来たら、こんなことになったけど、他は、大丈夫。あ、携帯取られた。」
「何で自宅になんてひとりで行くの。」
「だから契約書を返してもらうために、、」
「だから何で、行ったら危ないってわかるでしょうが。」
「でも、、っていうか香里なんでここが分かったの?と、この人は?」
「あ、警察の吉井さん。」
「警察はなんで私の居場所がわかったんですか。あっまずはありがとうございます。」
「とりあえず、この家から出て車に乗って下さい。仙崎も、もう戻ってくるかもしれませんから。」
そうだった。ここは仙崎の家だった。あらためて部屋を見渡すと、広くて、家具もお洒落だ。家電なども高価そうなものばかりだ。
そう思いながら仙崎の家から出て、車に乗る。
吉井さんが発車させると、美紗緒は泣き出した。
「家に帰りたい。」
「うん。吉井さん、いいよね。美紗緒このまま家に帰っても。」
「はい。お送りします。」
「美紗緒。大丈夫だよ。 大丈夫。」
美紗緒の震えている手を、両手で握りしめた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?