神様

#創作大賞2024
#ミステリー小説部門

第十話

「ねーちゃん。ねーーーちゃーーん。中野さんから電話。」
走っていって電話に出る。
「もしもし、すみませーん。」
「あ、こちらこそ、携帯にもおかけしたのですが、すみません。」

この前の顛末を中野さんに電話して相談してみたのだ。
警察の知り合いがいるってこういう時便利だよね、と弟に言うと
「いろいろ間違ってるけどそうだね。」と言われた。

「先日のお話なんですが、何も新しい話がなくて申し訳ありませんが、やはりこちらとしては、塾に賠償金などは支払う必要はないとしか、言えないんですよ。
今の所暴力を振るわれたということもないので、、」
「でも暴力や事件が起こった後じゃ遅いですよね。」つきなみな質問だ。
「そうなると警察よりは弁護士事務所などで相談して、裁判所からの接見禁止令を出すといったような手立てしかないのですが、それも現時点では難しいのが現状ですね。」
「そうですか。はい、、あの、中野さんお忙しい中ありがとうございました。」
「お役に立てず大変申し訳ないのですが、、」
「いえ、あ、ではまた。」
「失礼します。」

うーむ、今のところ、相手の出方を見るしかないのだろうか。
仙崎氏に言われていた、次回、はまだ来ていない。連絡もない。
美紗緒の方もあれから、表面上は穏やかに塾のバイトを続けている。塾のバイトをやめてしまうと、収入が減るのに加えて、相手の情報が何も入らなくなってしまう、と美紗緒は言っていた。

事態が動いたのは、それから何日もしないうちだ。
美紗緒から入ったLINEにはこう書かれていた。
『助けて 前と同じ事務所にいる 軟禁状態』
美紗緒の携帯に電話をかけようとして、考える。
もしこれが、こっそり打ったLINEで、私が携帯を鳴らした場合、携帯を取り上げられたりLINEをしたのがばれたり、そうなったら、まずいのではないか。
頭を切り替え、中野さんの携帯に電話をする。
でない。
もう一度電話をする。
でた!
「もしもし中野さん?前に言ってた友達が」
「あ、違います。」
「え?」
「すみません中野の携帯ですが、いま中野が外してまして。
今中香里さんですか。」
「そうですが何で、」
「画面にお名前が出てたもので。吉井です。あの、以前中野と事情聴取させてもらった時の、覚えてないですよね。あの、中野に何か伝えておきましょうか。」
えっと吉井さん、、 もしかして、あの、年配のおじさんか、え?中野さんに何を伝えてもらえばいいのか、
「えっと、え、ちょっととにかく急いでいて、すみません吉井さんですね、わかります。またかけますので。」
急いで電話を切り、家を飛び出し、ビルに向かう。

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