神様

#創作大賞2024
#ミステリー小説部門

第十七話

「はい。」
「あきとって何で死んだんですかね?」
吉井さんを見る。
「あきとって、悩みとかなさそうに見えたけど、そりゃ悩みがない人なんていないけど、やっぱ親の半グレの世界に巻き込まれて、生きてきたんですかね。」
「そうですね、佐藤秋斗さんは、半グレ世界に巻き込まれてました。大学に入るまでは、裏で悪い事を手伝うこともありました。それが大学に入って、後悔しはじめて、もがいて、そうですね、主に覚醒剤を紛失したフリをしたり犯罪を食い止めようとしはじめました。覚醒剤を紛失など、命がけのことですし、わざと紛失などもっと命がけです。そんな様子がお仲間にもバレ始め、」
「ってちょっとちょっとちょっと!何普通に!ストップ!すごい知ってるじゃん!何が起こってる?! ちょっと深呼吸させて。」
深呼吸。スー、ハー。
顔を見合わせる。
「とりあえずマック入ろっか。食べ物なしで私ファンタメロンで。」
「あ、はい。お会計は別で。」
吉井さんはホットコーヒーをたのんだ。

「あ、では続きをお願いします。」
頭を下げる。
「はい、秋斗さんは、わざと紛失して捨てていたんですが、お仲間には、独り占めしたと思われたようですね。」
そりゃ、そうか。
「儲けた分を出すようにナイフで襲われて、体中血まみれになった事件もありました。もちろん、うちうちで片付けられましたが。」
「血まみれ?そんな傷なかったけれど。」
「服で隠れますからね。手のひらにできた防御創はご存知ないですか。」
「あ」 あれか。転んで手をついた時にって言っていた。
「そうやって仲間に疑われると動きにくくなるので、秋斗さんはしばらく大人しく過ごし、すぐに来る覚醒剤の大きなヤマを待ちました。それがフィリピンの取引です。」
「セブ島の。」
「はい。そしてあちらで大量の覚醒剤を受け取り、少しずつ日本に持ち帰らせる役割を担ったのですが、覚醒剤を受け取り、」
「覚醒剤を捨てて、自殺したんですね。」
「え?死んでないですよ。」
「えっ 殺されたっていう事ですか?」
「いや、言ってませんでしたか、死んでないですよ、秋斗さん。」
そ、
「それ早く言ってってば!」


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