神様

#創作大賞2024
#ミステリー小説部門

第十九話 最終章

いつものスタバで待ち合わせをして、あきとを待っている。
あきとと、感動の再会を果たしてから二週間。
と言っても、あきとであることは誰にも内緒だ。
顔も名前も変えている。今の名前はタケルだ。

あきとと私は付き合い始めた。きっと私の弟は言うだろう。
タケルさんて秋斗さんにちょっと似てるよねって。私の弟の勘は、誰より鋭いのだ。
でも顔も違うし、きっと本当に気づくことはないと思う。
花屋兼カフェのようなところで働いている。そういえばそこでは家具も売っていた。素敵なお店だ。

「あ、タケル!ここだよー。」手をちょっと上げて、タケルを呼ぶと、こちらを向いてニコッとした。
ああ。ちょっと笑顔にあきとの名残があるんだよなあ。大丈夫かなあ。

あきとは、アイスのカフェモカを受け取ってテーブルに来た。
「お待たせ。」
そして声をひそめて、いたずらっぽい笑顔をして言った。
「それにしてもさ、香里が花屋にあらわれて、あきと?って聞いてきた時は心底驚いたよ。絶対に分からないはずなのに。」
「もう、その話、何回目?そうなんだよね、ほんとに自分でも不思議だよ。
愛の力としか説明つかないよね。」

本当に、何であきとだと分かったんだろう?まるっきり別人で、服の感じも、生き方も、すべて違うのに。
行ったことのないお店、行ったことのない街。

私は何であそこに行ったんだろう。

何も覚えていないのだ。

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