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建設業はどこへ向かうのか(2) プロジェクトの体制

はじめに

こんにちは。押山です。
建築の発注プロセスは多岐にわたりますが、それらを成立させるための、具体的な手法は未だ確立されていないのではないかと思います。ここで言う具体的というのは、どんなソフトを使うか、どんなフローで業務を行うべきか、どの段階で検品のプログラムをはさむべきか、データの管理方法はどうするのか、そういった部分の話です。これらの課題に向き合いたいなと最近は考えています。理論上可能なモノはいろいろありますが、それをどう実務レベルに落とし込むかが大変です。しかし、おろそかになってしまいがちですが、実現しなくてはならないことではないかと思っています。こういうことは誰かが考えてくれるまで考えず、誰かが考え着いたらさりげなく教えてもらおうとするところが日本にはあると思います。私としては互いに公正を担保しながら業務を遂行したいところです。しかし、事前に交わされる契約は明らかに偏っており、建設業法で定める「対等と公正」の原理が損なわれているように感じます。ただ、これも時代が作ってきた慣習なのだと思います。今後10,20年とかけてフェアな関係でより良い建築が作れると良いなと思う今日この頃です。

これからの建築生産プロセス

建築生産プロセスというのは建築が作られ使われるまでの過程を意味しています。まずは結論から明示しますと、私が現在理想とする建築プロジェクトは、以下のような体制化で進めていくことです。この体制が出来るのであれば、コスト的にも建築の品質においても良いものが出来るのではないかと思っています。

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品質管理組織というのは、一言で言えば設計変更における建築のデータの変更契約の内容・変更を管理する組織になります。(これの重要さは今後記述していきたい)私が勝手に妄想しているだけなので、まだこのような会社は存在していないと思います。ただ、民間であればこういうコンサル会社に依頼するのかもしれませんし、各会社からメンバーを集めてチームを作るのもいいと思います。この辺りはやりようはいくらでもあると思いまので、そこは発注者者側の腕の見せ所だと思います。問題は公共施設です。公共施設に関して、私は今後建築プロジェクトそのものの工程を履歴として残し、それらを建築プロジェクトのデータベースとして、公的機関側が構築しておく必要があると考えています。そのうえで第三者としての立ち位置にあり、調停人となる組織があることが理想だと思います。しかしながら、現状では限りなく難しいと思います。なぜこのデータベースが大事なのかと言えば、建築費用がどういう根拠に基づいて増減があったか?ある技術により減額できた場合にただ数字だけでなく、その過程を説明できることで、次年度の予算を正当性をもって確保できる。または、さらに減額した分を再投資やグレードを使ったことによる建築として価値の向上、価格以外の指標や建築を作るまでの発注方法の検討などの利点が挙げられます。これがあるとないとでは、建築プロジェクトそのものの品質が変わってきます。既存の入札制度を上手くかわしながらも、透明かつ公正な建築生産プロセスを踏むためにはとても重要ことだと思います。かつそれは、国内で行われる建築産業の指標になるため、民間の建築プロジェクトにも良い影響を与えることになります。そのデータを元に業者の単価やスケジュール、原価などをある程度みることが出来るようになり、出来るだけブラックボックスのないまま建築プロジェクトを進めることができ、リスクの軽減に繋がると思います。またVE(Value Engineering)による減額もただ単にスペックダウンするだけではなく、調整する手法なども検討出来と思いますし、建築プロジェクトそのものが面白く、いろいろな可能性をもって社会の共有資産として運用できるのではないかと思います。その意味ではこのような体制を敷いた公共建築のプロジェクトを行うことは非常に意義のあるかと考えています。

建築のデータと契約内容・変更を管理する組織といわれましても、それが結局なにをするのか、なぜそれが大事なのか疑問に感じるかもしれません。これは私の経験や視点から仮説ですので、もしかしたらこんなのなくても全然問題ないよという可能性もありますし、それは不可能であるという意見もあると思います。ただし、ここで書き連ねたことはこれを読んでいる方々が現在対峙している課題に対して、何かしらのヒントが隠されているのではないかと思っています。
すごいざっくりした話ですが、日本の建築生産プロセスは諸外国を真似するという方法だけでなく、日本らしさを持って更新することが出来るのではないかと思っているということです。

問題は上流へ、技術は下流へ

この体制で一体どんな問題が解消されるのでしょうか?現在私が直面している問題のほとんどは、建築プロジェクトの上流を上手く整備できないことから生じるものです。これは長年日本の発注者優位によって建築プロジェクトが進めれ、発注者側が受注側に甘んじてきたことによって上手くやっていたものが、だんだんとリテラシーが逆転し今や発注者側は建築プロジェクトの問題や、その原因と対策もはっきりとわからない状態も多いのではないでしょうか?これは自業自得ではあるわけですが、作られた建築物を使う人たちや社会の共有資産と考えた場合にはあまり良い状態とは言えません。
しかし、この問題を解決しようとする場合、技術力を持った会社にプロジェクト上流に参加してもらう方法がありますが、建築プロジェクトは元請がありそこから下請けに分配されていく構造をとっていたため、発注者側からはその根幹の技術を持った会社を直接探すというのが意外と出来ず、結果的に中間業者が入り、マージンを取る構造になっていきます。最近のBIMも全く同じ構造をたどっており、結局のところ従来の発注フローを踏襲する流れになっているように思います。

あくまで私が感じてきたこの問題の前提は、巨大やつ複雑形状のプロジェクトになりますので、もしかしたら、いやいやそんな問題発生したことがないわと思われるかもしれません。その場合は、将来の巨大かつ複雑形状に特化した建築プロジェクトの体制だと考えていただたらと思います。少なくとも私の考えではこの体制を取れれば多くの問題がクリアになり、公正な交渉や判断ができるのではないかと思っています。大は小を兼ねるではないですが、巨大で複雑な形状の建築プロジェクトに耐えられる体制ならば、小さくて単純な形状の建築にもそのまま使えるだろう思っている次第です。

見積もりの正当性

公共施設の予算取りの話も踏まえる
建築物を作っていくうえでも見積もりというものがあります。私が特に疑問に思っているのは入札時、もしくは相見積もりする際の見積もりの正当性についてです。入札というのがどこの部分なのか、わかりずらいと思いますので、先ずは建築生産の一般的なフローを共有したいと思います。
※もう少し詳しく見たい方は以外と知られていない建築が作られる過程をご覧下さい。

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※一般的な建築生産プロセスの図

左から順に見ていきますが、企画とは建築プロジェクトをどう進めていくのか、または建築物の仕様や要件を決める段階です。対して、設計とは実際に法律や発注者(建築主)の要件を満たしていく建築物の図面を描いていくことを言います。申請とは公的機関に出す書類のことで、建築を建ててもいいですよという許可をもらうための手続きになります。
そしての後に公共施設であれば入札、民間であれば各施工業者に対して相見積もりをするということになると思います。私が疑問に思っているのはここでの見積もり額をどうやってみんな納得しているのか?ということです。

入札をするということは、当たり前ですが発注者側に対してこれくらいで出来ますよと金額を提示することです。金額を提示するということはそれを算出するための材料が必要になります。そしてその算出する材料は何かということなんですが、それが設計で作成される実施設計図と呼ばれる図面になります。ちなみにこれを元に申請(確認申請)も行われます。
この実施設計図から情報を読み取り実際に単価や想定される工事費などが算出されることとなります。ここでなぜ私がこの算出される数字に対して疑問をいただくかとというと、この実施設計図はあくまで仕様書(こんな風な建築にしたい)という要望が書かれている図面なのですが、実際にこの図面を元に建築物を3Dデータに起してみると、建築物としての整合性が取れていないことがほとんどなのです。整合性が取れていないというのは、このまま建築を建てたら建築として成立しない状態であり、建築を構成する要素(意匠、構造、設備)の関係性が解かれていない状態を指しています。この整合性が取れていない状態が、もしかすると一般的な建築プロジェクトでは深刻なレベルで起こっていないのかもしれません。しかし、巨大であり複雑な建築であった場合には、あらゆる箇所が検討しなおしになり、あちらを修正してみたら、こちらを修正するということの繰り返しになります。そもそも全容が誰にもわからないわけです。そのためそれらの影響で法規に触れた場合には計画変更する(確認申請し直し)ことになります。

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※入札後も調整でやり取りする図

その時に思うのです。1.そもそも成立していない建築の図面を元に出した見積もり金額2.どれだけの修正箇所が必要なのかもわからない、この状態でどうしてその見積もり金額が妥当かということを、どうやって判断したり、交渉したりしているのかが気になるのです。これについて知人に聞いてみたりしたのですが、積算(厳密には違うが、ここでは一般の人にも解りやすく見積もりのこととしておきます。)が本当にすごい精度(図面の整合性が取れていなくてもそれを加味するだけの安全率)なのだという回答くらいしかもらえず、未だに私としてはしっくり来ていないのです。なぜなら、実際に発見される問題というのは、かたちを詳細に検討し確認していったらわかるというのは本当にたくさんあり、それすらもあらかじめ想定しているのであれば、それはもう神的な視点を持つくらいでないと難しいのではないかと思うのです。もしこれがざっくりしたものであるとするならば、それはただ単に下流の位置する業者が飲み込んでるにすぎず、建築の見積もりの相場のようなものは根拠として成立しないのではないかと思っているのです。


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