Tet元日記念、 ハノイ特殊観光案内/Long Bien橋がハノイのランドマーク
都市のランドマークと言えばいくつかの高層ビルがアタマに浮かびます。
有名どころではクアラルンプールの2本のトウモロコシみたいなPetronas Towersとか、船のようなプールが屋上に載ったシンガポールのMarina Bay Sansとか、空に延びていく竹のような台湾の台北101とか。
ドバイのブルジュ・ハリファは世界一の超高層で、上海の上海中心はアジア一。
ホーチミンなら蓮の花?の形をしたBitexco Towerですかね。オフィスとしては使い難いことこの上ない。
目立つからランドマークになるのは当たり前。目立たないランドマークっていうパラドキシカルな存在がハノイのコレです。
歴史、ブンカ、戦争の記憶、バイクの洪水、その他ハノイのすべてを表しているLong Bien/ロンビエン橋~~。
アメリカの爆撃で何度も壊され、修復され、原形をとどめているのは一部ですが、実に美しい。
今でも鉄道が走り、狭い道をバイクが駆け抜けます。
歩道的なものが一応ありますが、その床は厚さ3cmくらいのコンクリートっぽい板で、ところどころ穴があいて一部は新しくなっています。
隙間から下がよく見えます。人が踏み抜いて落ちたっていうニュースはここ10年ありません。たぶん。
ただ歩行者が転落するより、列車の重さと振動で橋そのものが崩落する危険の方が大きいでしょう。客観的に言って。
造られたのはフランス植民地時代です。
ハノイから東に100キロいったところの港町ハイフォンまで鉄道でつなぐため、Song Hong/ホン川/紅河を渡るところにDayde & Pille社の施工により1902年に完成しました。両端の橋脚に銘板が残っています。
エッフェル塔を設計したエッフェルのデザインと言う説もありますが、真っ赤なウソです。
ホーチミン市にあるサイゴン中央郵便局の鉄骨構造はエッフェルによるものです。っていうかエッフェル自身はエッフェル社の社長で、設計、デザインをしたのはその社員です。
設計ガイシャのシャチョーってそういうものです。最終的な責任を持つという意味では、シャチョーの作品ですっていうのは間違いではない。
鉄骨の吊り橋風トラス構造ですが、斜めのカクカクした部材が太っとくて武骨で、まっ茶色に錆びついていて洗練とは程遠い分、強烈な印象を放っています。
この橋を眺めるのにお薦めの場所をいくつか紹介します。
1.Serein Café & Lounge/ 16 Tap the Ga Long Bien
まずはハノイ側の橋のたもとにある5階建てのカフェの屋上からの眺め。
4,5年前にできた、一見したところ普通のカフェです。1階はやってるのかやってないのかわからない地味さ。
っていうかここのお客が目指すのは屋上だけです。3階、4階は室内のバー、5階が屋上で、その上にもう1つ小さなテラスがあります。
カメラを持ち込む場合は500k.ドン≒2,300円払えって入口に書いてあり、一度止む無く引き返したことがあります。べらぼう。スマホで撮影する分にはタダです。何考えてんだか。
カフェですがカクテル系が充実しています。値段は5スターホテルのバー並み。それでケッコウ賑わっているからいいショーバイしてる。
撮りテツの人は時刻表をよく調べてからカフェに行かなければなりません。列車は1日にせいぜい10本くらいしかないので。
見応えのある長い編成の客車は、早朝か深夜の中国国境Lang Son/ラクソン方面行きに限られます。カフェは朝8時から夜11時までやっています。
夜汽車の光が橋を渡っていくのは、きっと、かなりステキな光景だと思います。
2.Long Bien駅
カフェからカーブする坂道を上がるとロンビエン駅です。
以前はアールデコ調で趣きがあったのが、安っぽいフランス風に改修されました。キレイにはなった。
ハノイから一駅目ですがここが始発の列車もあり、いつも賑わっています、というのはウソで、乗る人はマバラです。
3.駅前から歩いて橋に入る
橋の降り口が駅の出入り口の目の前です。信号がないので引っ切り無しにバイクが通り抜けていきます。
100mくらいアブナイ歩行者通路を進んだあたりにDayde & Pille社の銘板があります。橋脚は茶色く錆びて、地のブルーのペンキの色と混じり合って渋い表情を見せています。
列車が来ればラッキーですが、同時に崩落の危険との現実的な遭遇でもあります。
写真は先日、朝からいい天気だったので歩いて渡った時のものです。
列車は通らなかったものの、バイクがたくさん走っていて多少揺れました。因みに車は通行禁止です。道幅3mくらいのところをバイクが2列で走ります。
途中に何か所か歩道が膨らんだ部分があり、キレイな服着て写真を撮るおネーさん方や、バナナ売りのオバサンや、いろいろいました。
1か所、スロープで河川敷に降りられる場所があり、農作業のオヂサンたちがバイクで行き来していました。
ハノイで有名なゼンラ愛好家のヒト達の活動場所もその辺にあるはずですが、まだ寒かったのでいませんでした。きっと平和を愛する長閑な人たちの集まりに違いありません。
橋のトラスがなくなっている部分は戦争で壊されたところです、すぐに仮の橋を架け、それが今でも使われています。
歩いているヒトはキワメテ稀です。渡り切るのに30分くらいかかりますがすれ違ったのは二人。だいたいハノイ人は歩かないのでそんなもんでしょう。
4.川向こうのリバーサイドレストラン街
橋を渡った先はハノイ市Long Bien区です。
橋の出口は狭い道で、ぐるっと回って川べりに出る小道を抜けると、ビアホイ街というか、バーベキュー系のレストランが何軒か並んでいます。
橋を愛でながら飲んで食べて、みたいな場所でしょう。ハノイ人のこの橋に対する愛着のようなモノを感じます。
この時はもうテトの休暇に入っていたのでどこも休みでした。いやもしかしたらビアホイ系ということで、コロナのジシュク対象だったかも。また次回。
(追記)行ってきました。ここはもうサイコーです。
5.Chuong Duong/チュォン・ズオン橋から見る
Chuong Duong橋はロンビエン橋の700mくらい南に架けられていて、Long Bien橋に比べれば新しい、崩落の危険も少ない安全な橋です。
車とバイクでいつも混んでいます。歩道がないので歩くとしたら危険な橋です。
ここからの眺めのいいところはロンビエン橋の全貌が見渡せること。半分以上壊されたことがわかります。
車かバイクの荷台に乗って見るしかありませんが、ゆっくり見るには渋滞の時間がいいでしょう。朝ならLong Bien区側からハノイ中心部に向かう方向、夕方はその逆です。
右側通行なので橋を堪能できるのは朝渋滞です。
6.橋の下
Google Mapを見ると、ハノイ中心部側は橋の下のかなり川縁近くまで道があるようなので行ってみました。
ところが実際は河川敷は不法占有耕作地になっていて、道と言っても畦道みたいなもので、部外者が勝手に入れるような雰囲気はありません。
まあ彼ら、洪水が起きたらすべてを失うというリスクを冒してやってるワケで、敬意を表して、ちらっと見るだけで撤収しました。
19世紀後半、フランスが攻めてきたときにホン川を上ってきた戦艦から撃った弾がハノイの昔の城門に当たった痕が今でも残っています。位置的にはきっとこの辺りから撃ったものです。
それでフランスが勝ってベトナムを植民地にして、この橋や教会やオペラハウスやいろんな建物を作り、いまでもそれらは使われています。
Long Bien橋を世界遺産にしようという動きもあります。ワタシは十分、その価値はあると思うけど。
アメリカの不条理な政治的介入。共産主義が広まるのを止めるためって、そんなのありか。
その傷跡を刻んだこの橋は、後世に伝え残すべきものです。
ただスゴイ老朽化しているので、少なくとも鉄道は通るのをやめた方がいいような気がしないでもない。
歩いて渡るのも、ジブンでやっておきながらお薦めはしません。
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