白川公次

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マガジン

  • サイバー安全保障論

    在野の研究者が、一応修士課程の間に独学したサイバー安全保障について、生意気に書き連ねる。

  • 昭和維新に関する研究

    昭和維新とその周辺(国学、戦後新右翼など)について、研究ノートやら雑記やらを不定期で更新予定。

最近の記事

米サイバー軍、初の攻撃的なサイバー演習を開催

8月30日、米サイバー軍は、サイバーフラッグ24-2を開催した。この演習は、攻勢的サイバー空間作戦(OCO)を組み込んだ初の演習となった。 オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、英国、米国の、ファイブアイズが参加した。 サイバーフラッグ演習は、2014年から実施されてきたが、これまで、サイバー空間に於ける防衛に重点が置かれていた。 高まるサイバー攻撃の重要性防衛から攻撃に転換した背景には、米軍をはじめとした、各国におけるサイバー空間に関する認識と教義の変化があると考

    • ロッキード・マーティン・サイバー・キルチェーンとは何か

      ロッキード・マーティン・サイバー・キルチェーン(Lockheed Martin Cyber Kill Chain)は、サイバー侵入行動ないしサイバー攻撃の手順に関する代表的なモデル。 敵対者が目的を達成するために何を完了する必要があるかを特定するものであり、その行動の可視性を向上させるものである 。 ・「偵察」 侵入者が目的を達成するためにターゲットを特定するために調査を行う作戦の計画段階で、電子メールアドレスやその他の連絡先情報の収集などが行われる。 ・「兵器化」 作

      • 血盟団、五・一五の残留分子の諸事件

        背景五一五事件で、軍部全体の政党排撃の政治的意思が公然にまる 事件を聞いた菅波一統、荒木陸相の留任希望 政友会鈴木総裁に大命降下する大勢となったが、陸軍少壮将校の不満を慰撫しなければならず 二十二日、斎藤実 子爵に大命降下  多数政党首領以外の首相 革新陣営「上記の目的は革新風潮を鎮静鎮圧し憲政の常道への復帰」  支配階級の最後の防塞とみなした  1935の新海軍条約協定は目前 斎藤内閣、革新的色彩みえず  荒木のみ革新政策推進、合法的改造では急速には行えず   五

        • 仕事依頼の受付(軍事・安全保障分野の文章)

          【専門】 安全保障 地政学 軍事 国際政治 国際関係 外交 各国地域情勢 時事問題 先端・新興技術(ドローン・AI・3Dプリンター) サイバー攻撃・作戦 【半独学】 政治思想 社会思想 哲学 宗教 民俗学 国学 歴史 その他社会科学系全般(大学レベル以上) 社会科学系の学部を卒業し、大学院では安全保障を専攻、修士号を取得。 上記専門分野に関しては一定以上の知識を有する為、それに関するものであればなんでも受け付けます。 学問的誠実性、文献調査の正確性と、期限の遵守は保証しま

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        • サイバー安全保障論
          5本
        • 昭和維新に関する研究
          4本

        記事

          サイバー作戦に必要な人材―ハッカー、プログラマーだけじゃない

          個人のハッキングと異なり、国家主導のサイバー作戦においては、綿密な計画の下で行動が行われる。そこでは、組織として人材の専門分化がなされている。 脆弱性アナリスト  脆弱性の発見を担当する。「バグハンター」の呼称でも知られる。 開発者  マルウェアの開発や、エクスプロイト、ツール等の構築を行う オペレーター  システムやネットワークにアクセスし、開発されたマルウェアの展開と保守を担当する システム管理者  コンピュータとサーバーの信頼ある維持管理、構成、運用を保証する テスタ

          サイバー作戦に必要な人材―ハッカー、プログラマーだけじゃない

          サイバー安全保障関連ニュース(七月)

          オランダ諜報機関、中国のサイバースパイ活動は予想以上に広範囲に及ぶと発表 Dutch intelligence says Chinese cyber espionage goes wider than it suspected オーストラリアは中国がサイバースパイ集団を支援していると非難した。知っておくべきこと Australia has accused China of backing a cyber espionage group. Here's what you ne

          サイバー安全保障関連ニュース(七月)

          五一五事件

          血盟団事件から五一五事件へ二人目(団琢磨)の暗殺実行以後、警戒厳重に 談合の結果、個人テロは至難になった為、今後は残った民間同志と海軍側と聯合して集団テロ決行で大体一致 海軍側(古賀、中村ら)、井上日召の自首を聞いて最初の計画通り第二陣決行決心 中村が、井上と連絡あった橘孝三郎の愛郷塾一派、陸軍士官候補生の一団、血盟団残党を糾合、海軍側との連合軍組織、大川、本間憲一朗、頭山秀三の援助求め、可能なら西田、菅波一統の陸軍側も蹶起させ、一大集団テロ蹶起慣行を決意 上記諸勢力と井

          北朝鮮、スパイ・金銭目的のランサムウェア攻撃。日本企業の機密情報も

          北朝鮮がスパイ・金銭目的のランサムウェア攻撃を行っている。 防衛、航空宇宙、原子力、工学分野の企業を対象に機密情報が狙われており、北朝鮮の軍事・核開発の推進に利用される。 また米国の医療機関を狙った資金調達目的の攻撃も。 日本、アメリカ、韓国、インドの企業が対象となっている。 実行主体は朝鮮人民軍の情報機関である偵察総局の第三局麾下のアンダリエルなど 。 「log4j」などの既知の脆弱性が利用され、侵入が行われている。 米英韓のサイバーセキュリティ機関による共同の勧

          北朝鮮、スパイ・金銭目的のランサムウェア攻撃。日本企業の機密情報も

          NATO統合サイバー防衛センター設立へ―これまでの歩みと残る課題

          2024年7月10日、NATOは、ワシントンD.Cで開催されたNATOサミットにおいて、NATO統合サイバー防衛センター(NATO Integrated Cyber Defence Centre;NICC)の設立に合意した。ますます高度化するサイバー脅威に対する防御を強化するためであるとしている。 NICCは、NATOおよび同盟国のネットワークの保護と、サイバー領域の利用を強化するという趣旨である。また、軍事活動を支援するために必要な民間所有の重要な民間インフラを含むサイバー

          NATO統合サイバー防衛センター設立へ―これまでの歩みと残る課題

          サイバー作戦実行に必要な情報とその取得方法

           情報は、あらゆる行動を行う上で基礎となるものである。サイバー作戦に於いて利用される情報は広範である。その対象は、デジタル上のものから、物理的なものまで含まれる。 取得される情報対象のネットワーク等に関する情報 ドメイン IPアドレス 管理データ 連絡先に関する情報 信頼し、接続しているセカンド・サードパーティの組織やドメイン ネットワークトポロジー  機器同士がどのように接続されているか ファイアウォールやフィルタ、侵入検知システムなどのセキュリティ機器 ハードウェア

          サイバー作戦実行に必要な情報とその取得方法

          血盟団事件の背景と概要

          血盟団事件とは、井上日召こと井上昭が中心となって起こした暗殺事件であり、五一五事件の契機となったものである。ここでは、事件に至る背景と概要についてまとめる。 井上日召開業医の三男 東洋協会専門学校を二学年で中退後、明治四十三年渡満 陸軍諜報機関となり、翌年発生した支那革命及び、後に青島戦争などに参加 滞在中、木島完介、本間憲一朗(五一五関係者)、前田虎雄(神兵隊関係者)の盟友得る 大正九年末頃帰国、日本の現状を知る  「社会主義者の増加、極左翼の横逆、労働大衆の赤傾、指導階

          血盟団事件の背景と概要

          ロシア、AIツール「Meliorator 」で偽情報を拡散、国際共同捜査で露見

          7月9日、ロシアの影響力工作に関する書簡が、アメリカ・オランダ・カナダによる共同で発表された。 ロシアの国家支援メディアであるRT(旧称Russia Today)は、「Meliorator」というAIソフトウェアを使用し、偽のSNSアカウントを多数作成し、特定の国に対する虚偽情報を拡散しているという。 「Meliorator」を利用し、ロシア政府の影響力を強化するための悪質な影響力工作が行われている。米国、ポーランド、ドイツ、オランダ、スペイン、ウクライナ、イスラエルなどが

          ロシア、AIツール「Meliorator 」で偽情報を拡散、国際共同捜査で露見

          ハント・フォワード作戦(hunt-forward operation)とは何か

          ハント・フォワード作戦(hunt-forward operation)は、要請に応じてパートナー国に部隊を派遣し、そのネットワーク上の悪意のあるサイバー活動を監視および検出するものである。 アメリカが開始した作戦であるが、同様のものは英国に於いても実施されている。 ハント・フォワード作戦では何が行われているか実行主体:米国サイバー軍 (USCYBERCOM)サイバー国家ミッション部隊 (CNMF)のうち、ハント・フォワード作戦用に編成されたチーム 任務: パートナー国のサ

          ハント・フォワード作戦(hunt-forward operation)とは何か

          「ニコ動」よりヤバい、欧米医療がサイバー攻撃の標的に

          日本では、ニコニコ動画に対するサイバー攻撃が記憶に新しいが、欧米に於いては、もっと深刻な事案が発生している。 6月3日、イギリスの医療サービス提供業者である「シノビス(Synnovis)」がサイバー被害を受けた。 医療業界がサイバー攻撃の対象となったのは、これが初めてのことではない。アメリカでも、5月に「Ascension」が被害を受けた。 医療産業を狙ったサイバー攻撃Ascension: Ascensionは、142の病院を経営するアメリカで第2位の医療システムである。2

          「ニコ動」よりヤバい、欧米医療がサイバー攻撃の標的に

          陸軍部内に於ける「昭和維新」―五一五に至るまで

          日本主義に基づく革新運動―いわゆる昭和維新の機運から、陸軍は諸事件を引き起こした。部内での対立関係から「皇道派」が形成され、やがて血盟団事件、五一五事件、二二六事件といった諸事件へと繋がっていく。 背景長州閥への不満 大正末年~国家改造叫ばれ、各部門に革新的機運が自ら生じた →陸軍部内にも波及、因襲慣行の革新が第一目標  人事其の他に支配的力を有していた長州閥に革新機運向けられる   長官が閥外出身でも、人事網・諜報網利用し、長州閥の部下統制不可能に  田中義一政界進出後

          陸軍部内に於ける「昭和維新」―五一五に至るまで

          サイバー領域に関する8つの性質・特徴

          サイバー空間・サイバー領域は、既存の物理的な領域とは異なる性質を有している。以下では、その性質や特徴について挙げていく。 サイバー空間での戦闘は目に見えない基本デジタル空間上で完結 行動に対する結果がわかりづらい →そのシステムは、この攻撃で本当に停止した?(見た目は無傷)  もし敵対空ミサイルを停止できていなければ、自空軍の行動に支障  物理的な攻撃では目に見える   →通常戦争開始後はサイバー攻撃より物理攻撃が重視される?(ウクライナに於けるロシアの爆撃など) サイバ

          サイバー領域に関する8つの性質・特徴