ラブのてんこ盛り?!~「ぷかぷかな物語」を読んで~
届いたその日に一気に読んだ。
著者・高崎明さんの10年の記録でもある「ぷかぷかな物語」を息つく暇もなく読んだ。10年分生きて得した気分になった。
内容は、読んでのお楽しみだけれど、副題にあるように、「障がいのある人と一緒に、今日もせっせと街を耕して」いる毎日の奮闘記だ。
帯に、『「障害者はいない方がいいい」?「障害者は不幸しか生まない」?いいえ、障がいのある人と一緒に生きていったほうがトク!』とある。相模原障害者施設殺傷事件を受けて、高崎さんの熱量はますます増すばかりだ。それは世間の関心が薄れていくことに反比例して。
世間がヘイトで一色になる前に、色とりどりの色を届けたい。こんなに楽しくて、明るくて、愉快で、豊かな世界があるのだと伝えたい。そんな思いに溢れた本だ。
私は、次男・次郎が生後すぐ生死をさ迷った時「障がいが残ろうが生きてさえいてくれれば、幸せだ」と思った。それは、25年たった今も変わらない。
写真は、次郎が1か月の入院を終えて、やっと自宅に帰った時、長男・太郎がおそるおそる次郎に近づいて一緒に撮った写真だ。母親の私が、気も狂わんばかりになっていて、この時太郎には口内炎があり、ごはんがうまく食べられず痩せていた。笑顔のない太郎の顔はそのまま、笑顔のない私の表情だったと思う。
この頃、次郎は寝るばかりで、時々力なくヒエヒエと泣いた。そんな次郎をオロオロと育てる私には、何も見えてはいなかった。でも、「私は幸せだ」と自分に言い聞かせていた。次郎は生きて私のところに帰って来てくれた。それだけが、幸せだと思っていた。
大人になった太郎に指摘されたことがある。「お母さんは、『自分は幸せ!』って、決めてるところが、不幸だと思うよ。幸せなんて、ふっと、感じるものなのに、『私は幸せです!!』って言ってるお母さんは、無理があるよ」と。
さすが太郎、よく見ている。そして、『幸せ』が何かもわかっている。私もちょっと無理があるよなーとは思っていた。大変なことや、辛いこと、いろいろひっくるめての障がいのある子との暮らしなのに、『私は幸せ!!』って、言い過ぎとは思う。
でもな、もう、『大変~』とか、『困ってる』とか『ちょっと不幸かも?』とか、言えんようになってしまったのよ。
もし、そんな弱音を吐けば、『おや、それは大変ですね。すべては、障がいのある子の所為ですね。この子が不幸の原因です。可哀そうに。今すぐ楽にして差し上げます。今は、安楽死という方法がありますよ(まだ、安楽死はないが)。生きていても可哀そうですから、本人の為でもあります。』という世の中がもうすぐそこまで来ているからだ。
まさに、それは、相模原障害者施設殺傷事件が提案した来るべき社会だ。
これから親になろうという人が、出生前検査を望むことも、検査結果に悩むのも、それは、私の所為でもあると思うのだ。私は、障がいのある子の親として、障がいがあることは、不幸ではないことを、しっかり伝えられているだろうか?障がいのある子を育てて、どれだけ、幸せと、喜びと、豊かさをもらったかを、伝えられているだろうか?
だから今は、苦労話しは出来ないのだ。
世の中の振り子がヘイトに大きく振れた今、
私たちは、てんこ盛りのラブを世界の隅っこで叫ぶのだ。
だけど、ひとつ大きな声で言いたい。
私の大変さなんて、世間の無理解が原因だからね!障がい(特性)を知らず理解できず、訓練しようとしたり、無理難題を押し付けて、それに抵抗することの大変さ。
「出来ないことは出来ないのだ」というたったそれだけのことを、わかってもらえず、今に至る。この孤独。
変われる人が変わってゆけばいい。合わせられる人が合わせたらいい。柔軟な心と頭と、優しい気持ちで、社会を作っていったらいい。
人間を規格品を作るみたいに教育という名の訓練をして、規格外の人間を排除している今の社会の方が間違っているのだから、すっげー大変だった!!
そんな私の苦労も涙も、次郎の笑顔が救ってくれて生きてこられたのだ。
おそらく、多くの人が知っている障がいのある人の大変さは、間違った訓練や、指導や、支援の末の二次障害も多くあることも知ってほしい。障がいがあるがために、親と引き離されて施設に入れられたことの傷。障がいに甘えるなと押し付けられるルール。閉じ込められること。排除されること。いじめられること。
人として大切にされるならば、起こらなかった問題も多いと思うのだ。
それは、健常者でも同じだ。
だから、もう一度言う。
私たちは、てんこ盛りのラブを世界の隅っこで叫ぶのだ。
もしも自由と愛と平和を望むなら、どうか出会ってほしい!
私たちが当たり前だと思っていた常識をひっくり返し、知らず知らず閉じこもっていた殻を壊し、ガハガハと心の底から笑わせてくれる存在に。
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