THE BEACH BOYS

ビーチ・ボーイズの一番好きな曲って決めるの難しいなあと思う。

明るいロックンロールか、しっとりと美しいハーモニーか、「意外なほどにひんやりとした絶望」か。俺としてはその3つがビーチ・ボーイズの魅力である。

その3つを表現した曲もこれまた山のようにある中で、特別な3曲を選ぶ。

Wouldn't it be nice

ビーチ・ボーイズっていうバンドの最高峰だと思う。ブライアンが(まだそれなりに)元気で、カールがその恐るべき才能を開花させる寸前で、マイクも、デニスも、アルもブルースも才気にあふれている。ブライアンのサウンドメイクは狂気の一歩手前まで研ぎ澄まされ、「ビーチ・ボーイズのロック」としてはこれ以上の出来はおよそ望めない。「ロックバンドとしてのビーチ・ボーイズ」がギリギリ保たれた、バンド最後の名作、と呼べる。

この曲以降のビーチ・ボーイズは名前としてあるだけで、実質的にはブライアンのソロか、「ビーチ・ボーイズと言う名のプロジェクト」だ。

Surf's Up

それまでのビーチ・ボーイズ、燦々と照らす太陽、青い空、かわいい女の子、ゴキゲンな車とは程遠い楽曲。

刺すような夏の陽光じゃなく、穏やかに窓から差す冬の日差し。

静かな海が遠くないところに見える。ブライアンは、部屋の中で、偏執的にメロディを書き上げている。死んでしまいたい、という気持ちと戦いながら。

鳥肌が立つほどに美しいメロディと、絶望だけがこの曲にはある。

Wendy

ある日、年老いたビーチ・ボーイズ達が「Surfer Girl」を歌う動画を見る。

ブライアン、マイク、アル、ブルース。そして初期のギタリストでもあるデヴィッド・マークスと若いサポートメンバーがギターを弾く。おじいちゃんたちは楽器を持たず、リラックスして美しいハーモニーを歌うだけだ。これはこれで素晴らしい。2012年の動画だったから、メンバーは大体70歳くらい。

で、その後に若かりしビーチ・ボーイズ達が歌う「Wendy」の動画を見る。上記の「Surfer Girl」の50年前の動画。当然みんな若い。ピチピチでキャーキャー黄色い声援が飛ぶ。特にカールなんて10代で天使のようにかわいい。楽曲自体はとてもシンプルな曲で、ロックンロールともバラードともつかない不思議なサウンドだ。まだ伝説になる前のビーチ・ボーイズが楽しそうに歌う。メンバーの、兄弟の死も、絶望も、裁判も、権利も、重圧も、ビーチ・ボーイズという名前の大きさも彼らは持たない。そのイノセンスが、この曲を特別な色に彩っている。

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