杉内寿子八段(96)、女性棋士最年長勝利記録更新!

皆様こんばんは。
木曜日は日本棋院の公式戦対局日です。
本日は同じ部屋で杉内寿子八段が対局されていたのですが・・・。
なんと、宮崎龍太郎七段に勝利!
今月96歳になられた杉内八段、自身の持つ女性棋士最年長勝利記録を更新しました。
最近は杉内八段の対局を観戦する機会が少なく、久しぶりに元気なお姿を見られただけで嬉しかったのですが、碁の方も素晴らしかったですね。
一時期は調子を落とされていたように思いますが、完全復活ではないでしょうか。
棋士全体での最年長勝利記録は、ご主人の故・杉内雅男九段の96歳10か月ですが、いよいよ更新が現実味を帯びてきましたね。

それでは対局について感想を述べてみたいと思います。
なお、棋譜は日本棋院ネット対局「幽玄の間」にて中継されました。
ぜひご覧頂ければと思います。

〇黒31~白48
黒31の仕掛けは、いかにも杉内八段らしい積極策でした。
左辺や右辺の大場に向かう無難な打ち方も考えられますが、杉内八段は最も厳しい手を選ばれますね。
宮崎七段は中央の白3子を捨て気味にかわし、結果は互角でしょうか。

〇黒49~白78
白52に対して、中央の白3子を取っておく手も考えられるところです。
地としては大したことがありませんが、左右の黒に不安が全くなくなりますからね。
しかし、守りだけの手は杉内八段の眼中に無かったことでしょう。
黒53から白全体の攻めを狙っていきました。
黒65も実にのびのびとした、杉内八段らしい一手だと思います。
上辺黒が薄いので一旦守っておくプロも多そうですが、やはり杉内八段の眼中に無かったかもしれません。
その後も黒69、71と攻めかかりますが、急に攻めすぎても益が無いとみて黒73と小休止、そこで白が74~78と守って一段落となりました。

〇黒79~黒87
黒79には驚きました。
右辺白への攻めを中断したので、地の争いに切り替えていく構えかと思いましたが、左上白の眼を取って脅かす構想だったのですね。
とことん戦い抜くという意思を感じました。
黒87は大場ですが、遠く左上白への影響力も意識していそうです。

〇白88~黒109
白88と守りましたが、まだ隙があるとみてすぐさま黒89、91と仕掛けていきました。
流石の鋭さです。
攻め合いなども含んだ部分戦ですが当然読み切っていて、黒109まで進んで黒優勢が明らかになりました。
左下の黒地が大きいです。

〇白110~黒123
しかし、黒113は本局初めての明確な失着だったのではないでしょうか。
白110に石がきて、左辺や上辺の黒に圧力がかかっているので、一手かけておけば十分だったと思います。
白114から上辺黒大石に襲いかかり、勝負は分からなくなりました。

〇白124~黒129
どうやら黒の凌ぎ方に何かミスがあったらしく、白に大チャンスが訪れています。
しかし、結果は黒129までぴったり2眼生きとなりました。
おそらく白が何かを勘違いしたものと思われます。
白124で125の所に打っていれば、黒が死んでいたのではないでしょうか。

〇白130~白138
中央黒を助けず、黒133、135と打ったのも的確な判断です。
白138がどれほどの手なのか、私は数字で考えないと安心できないのですが、杉内八段は感覚でぱっと判断できている気がします。

〇黒139~黒165
黒139では、私ならチマチマと隅や辺の寄せを打ちそうです。
しかし、終盤に入っても杉内八段は戦う気満々です。
黒139の準備から、黒141と仕掛けていきましたね。
この戦いの結果中央の白地が減り、黒優勢がはっきりしました。

〇白178~黒217
白178に対して、黒179と目一杯に受けたのには驚きました。
形勢が良いので、私なら怖がって黒214と遠慮して受けるかもしれません。
しかし、杉内八段はそんな緩んだ手を打つ気にならないのですね。
結果として白に隅で生きられたものの、黒217までつながれば損をしていない気がします。
結果は黒4目半勝ちとなりました。


危ない場面もあったものの、全体的に杉内八段の溌剌とした打ちぶりが印象的でした。
朝から夕方までの長い対局ですが、持ち時間をしっかり使って考えられていたようです。
これほどの体力、集中力を維持されているのは、日々の修練の賜物以外の何物でもないでしょう。
皆様はこの対局をご覧になって、どう感じられましたか?

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