応氏杯決勝第1局 一力遼-謝科

皆様こんばんは。
本日は応氏杯決勝五番勝負第1局が行われました。
久々の日本代表の優勝チャンスということで、非常に楽しみでしたね。
対局の模様はYoutubeの日本棋院囲碁チャンネルや日本棋院ネット対局幽玄の間にて解説付きで中継されました。
ここでは私の印象に残った場面をご紹介したいと思います。


1図(実戦)

一力九段の黒番です。
黒1の攻めに対して、白2から先手で生きて白6に回りました。
よくある進行とは言え、変わり身の早い中国選手らしいと感じました。


2図(実戦)

黒1と動き出せば、この碁では白2から押していくのが自然です。
こうなると白の勢力が大きくなるので、それを嫌って黒1でAと打つプロも多いでしょう。
本局の一力九段は目一杯の手を打つという意識が強かったのではないかと思います。
これで本局の骨格が定まりました。


3図(実戦)

黒1の消しに対して、慌てて攻めずに白2と取りましたが、これも中国選手らしいバランス感覚と言えるでしょうか。
黒5までの補強に対して白も6と薄い石を補強し、一瞬じっくりした碁になるかと思いましたが・・・。

4図(実戦)

黒1~7!
右辺からの黒地を盛り上げ、さらに白を攻めようとしています。
下方の黒が心配ですが、それはそれで凌ごうというのですね。
普通のプロは怖いので、黒7では何か一手補強しておくでしょう。
黒地を増やす、白を攻める、下方黒を取られないという3つの希望があるところで、そのうち2つ叶えば納得できるというわけです。
しかし、一力九段は全部叶えようというのですね。
物凄い気迫です。

5図(実戦)

当然白1と襲いかかりましたが、この黒が死ぬわけがないと判断しています。
実際、白13の後は黒A、白B、黒C、白D、黒Eという手順で簡単に生きられますね。
ほとんどのプロはそう打つでしょう。


6図(実戦)

ところが、実戦は黒△!
これには本当に驚きました。
一力九段にしか打てない手ではないでしょうか。
力関係は圧倒的に白が有利なので、普通はまず確実に生きることを考えます。
しかし、一力九段は黒Aの反撃まで見ているのですね。
ブレーキを踏む気が全く無いかのようです。

7図(実戦)

当然白1と眼を奪ってきます。
白11まで進んだ盤面を見て、正直なところこの碁は黒勝てそうもないと思ってしまいました。
死にはしないまでも、相当苦労するのではないかと。

8図(実戦)

しかし、黒13まで進むとがらりと印象が変わりました。
Aの断点を放置しているにもかかわらず、白が切ることはできません。
となると白×も弱いので、もうどちらが攻めているのか分からなくなりました。

9図(参考図)

この後白1、3と切るのは、黒6の反撃があって上手くいきません。

10図(参考図)

前図の続きですが、黒8のカケがぴったりですね。
黒10の後、白Aの当てにつなぐことはできませんが、黒B、白C、黒Dと大石をつなげておいて黒勝勢です。


11図(実戦)

黒のリードが見えてきましたが、黒△とはまた凄い頑張りです。
この手で黒Aと打てば白Bが利かないので黒大石がより安全に見えますし、最初から黒Cなどと守る手も候補になりそうです。
しかし、一力九段は自分の読みを信じました。

12図(実戦)

白1~7と襲いかかられて危なそうに見えますが、ちゃんと凌ぎを用意していましたね。

13図(実戦)

愚直に黒1、3を決め、黒5とノゾいたのが好手順でした。
白Aには黒Bとつなぎ、黒Cの切断と黒Dの押さえが見合いで凌げます。

14図(実戦)

結局、黒6まで生きることになり黒の優勢は明らかです。
途中で応氏杯特有の時間延長により黒が2目を失いましたが、最後は1点(半目)勝ちとなりました。
最小差となりましたが、おそらく白に逆転のチャンスは無かったでしょう。
一力九段、見事な先勝でした。
中盤で力負けしないのは頼もしい限りですね。
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