仲邑菫三段、タイトル獲得!

2023年2月6日は歴史的な一日となりました。
女流棋聖戦第3局で、仲邑菫三段が上野愛咲美女流棋聖を破ってタイトル獲得!
13歳11か月でのタイトル獲得は歴代最年少です。
そもそも、多くの棋士は入段した時点で14歳を超えていることを考えると、異次元の大記録と言えるでしょう。
一応自慢しておくと、「やさしく語る 棋譜並べ上達法」で14歳までにタイトルを獲得すると予想していました。
とは言え、自分で書きながら半信半疑ではありましたね。
希望的観測が入りすぎてはいないかと・・・。
しかし仲邑三段は毎年順調に成績を上げ続け、昨年は2度のタイトル挑戦、そして今回3度目の正直でタイトル獲得と相成ったのでした。
ちなみに、女流名人戦リーグでも上野四段と並ぶ4勝0敗と、タイトル挑戦に近い位置にいます。
タイトル獲得がただの幸運によるものではないことは明らかです。

女流棋聖戦第1局は、まず黒の仲邑三段が序盤でリードしました。
黒77、79と構えて右辺の黒模様が立派です。
しかし、白84からの捌きが巧妙でしたね。
黒模様を小さく制限したうえ、白100に回っては互角の形勢です。
ハンマーパンチで知られる上野女流棋聖ですが、立ち回りも上手いところを見せました。
その後の乱戦では剛腕を発揮し、黒の大石を仕留めて決着しました。

第2局では、黒の上野女流棋聖が独特の構想を見せてくれました。
黒25、27とわざわざ「2目の頭」をハネられにいくのは、悪い打ち方の代表とされていますが、本局では面白いとみたのかあえて試みました。
上野女流棋聖は常識や流行にとらわれない打ち方をしますが、本局でもそれが表れましたね。
白48あたりまでは互角の形勢だと思いますが、その後黒が左上隅と左下隅を荒らし、左辺中央の黒も悠々と生きては黒に形勢が傾きました。
上野女流棋聖が上手く立ち回ったとも言えますが、仲邑三段の悪い癖が出たとも言えるでしょうか。
以前に比べるとかなり少なくなりましたが、仲邑三段は攻めに力を入れすぎて空振りするケースがしばしばあります。
しかし、そこから仲邑三段が目一杯に寄せ、なんと逆転半目勝ちとなりました。
入段当初は最大の弱点だった寄せですが、今や上野女流棋聖と勝負ができるレベルにまでなっているのですね。

そして第3局。
この碁はまさに力比べの一局でした。
お互いに意地を張り、ぎりぎりの戦いを繰り広げていきましたね。
NHK杯方式の1手30秒の早碁なので、大きなミスが出やすいのですが、両者ともに全く恐れる様子がありませんでした。
右下なども一歩間違えれば即ツブレですが、非常に深く読んでいたことが伺えます。
その後は両者命がけの、より危険な戦いに発展しますが、仲邑三段の白156~白164の打ち回しには感服しました。
あれだけ目一杯の手を打ち続けてきたにもかかわらず、一瞬で切り替えて勝利への確実なルートに進んだのです。
まるで歴戦のベテランのような勝負勘でした。

ということで、見事タイトルを獲得し、名実ともに女性のトップ棋士となりました。
もっとも、まだ実力としては藤沢里菜、上野愛咲美の2トップに並んだとまでは言えません。
今後も仲邑三段が猛追し、2人はさらに引き離そうとする競争が続くでしょう。
さらなるレベルアップが期待されますね。
いったいどこまで強くなるのでしょうか。


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