小池芳弘-三浦太郎(広島アルミ杯)

皆様こんばんは。
本日は虎丸カップが行われました。
無差別小学校低学年の部では、永代斗真くんが優勝!
永代塾囲碁サロンを一緒にやっている永代和盛の長男です。
実は昨日、首藤瞬八段と一緒に斗真くんと対局していました。
半年ほど見ない間にかなり上達したと思ったものですが、子供の成長は早いですね。

さて、プロの棋戦では土日に広島アルミ杯・若鯉戦が行われました。
私の入段後にできた棋戦なので、比較的新しい棋戦というイメージがありましたが、もう18回になったのですね。
詳細についてはYoutubeの日本棋院囲碁チャンネル棋道web、日本棋院ネット対局幽玄の間をご覧ください。

ここでは、2回戦の小池芳弘七段と三浦太郎三段の対局をご紹介したいと思います。
多くの対局から1つを選ぶとき、とりあえず全局を各10秒ぐらいで流し見て、その後ゆっくり検討するのですが、本局に関しては即決でした。

1図(実戦)

小池七段の黒番です。
白1のノゾキに対してつながず、黒4~8の手筋で反撃しました。
序盤からここでコウ争いが始まるのは珍しいですね。

2図(実戦)

コウ争いの結果、黒が右上隅を取り、白は右下隅を破壊したうえにポン抜きを得ました。
互角に近い振り替わりのようです。
ここまでも十分見せ場がありましたが、今回は省略します。

3図(実戦)

さて、本局で特にご覧頂きたいのはここからです。
中央にできた黒模様を、白が上手く消して勢力を得ました。
それを生かしての白△の打ち込みが厳しいです。
形勢ははっきり白リードですね。

4図(実戦)

黒1~7まではお決まりの進行ですね。
この後白はAの断点を守り、黒Bとなることが多いです。
白は攻めによって地を得することができました。
ただ、元々の力関係を考えれば、黒はこの程度で済むなら文句は言えないというところです。

5図(実戦)

そこで、実戦は白1の伸び!
黒に連絡を許さない強手です。
その代わり、黒2、4の出切りは覚悟しなければいけません。
次の一手は・・・。

6図(実戦)

!?



7図(実戦)

!?


なんということでしょう。
一力遼棋聖など多くの一流棋士を輩出してきたレベルの高い棋戦に、シチョウの分からない棋士が2人も紛れ込んでいるとは・・・。

8図(参考図)

種明かしをすると、まず黒1には白2、4と渡るのが普通の形です。
ただ、この渡り方には欠陥があり、黒Aと切る狙いが残っています。
白Bと取ってコウ争いですね。
見た感じでは白がやれそうにも思えますが、形勢有利の白としてはリスクが大きいと判断したのでしょう。

9図(参考図)

なお、黒1に対して白2とコウを避けようとしても、黒3(Aの所)の手筋があります。
黒5の後白Aには黒Bがまた当たりになるので、結局Cの所のコウ争いになります。

10図(参考図)

そこで実戦は1回白2と逃げ、黒3と取らせてから白4と切ろうとしたのです。
黒Aには白Bと渡り、今度黒Cと切られても2の左に抜いて手になりません。
1子取られた形からの取り返しはコウになりますが、2子取られた形からの取り返しはコウにならないのです。
この原理は、死活や手筋の問題でしばしば活用されています。
しかし、実戦でこんな派手な形で現れることは珍しいですね。

11図(実戦)

それを踏まえると白1に黒3と取らず、あえて黒2と打った意図も分かりますね。
あえて白3の逃げを誘い、その代わりに渡りを止めようというのです。
黒8の後白Aには黒Bで左下白を取ることができます。
実際のところ、その進行で黒が得しているとは言い難いかもしれません。
取れていた石に逃げられたダメージも甚大ですからね。

12図(実戦)

しかし、できれば白1、3と左下を守って頑張りたくなります。
そこで、今度は黒4から逃げ出していきました。
黒14まで、Aの眼取り、Bの出などを狙っています。
ややこしい戦いになりました。

黒が無理気味な打ち方をしているので、白やれるはずとの三浦三段の判断は正しいです。
しかし、早碁なのでノーミスで乗り切れるとは限りません。
小池七段はそこにチャンスを見出そうとしたのですね。
小池七段は大変な勝負師で、手の良し悪しよりも、僅かでも勝率を上げる方法を常に模索している印象があります。

13図(実戦)

結果は黒×を取られたものの、左上で大きく生きて形勢逆転しています。
黒中押し勝ちとなりました。


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