離婚後共同親権について(2)
以前、Twitterに投稿した、下記Tweetからのスレッドについて、長すぎて読めない、ブログにまとめて欲しいという意見もありましたので、転記します。(誤字や分かりにくいところがありますが、そのまま転記しています)
離婚後に子どもに会えるかどうかは、別居親と子の面会交流権の問題であり、共同親権とは関係ありません。 また裁判所では、よほどの事情がない限り、面会交流を認めるという運用がされていると思います。
子の、居所、教育、権利義務関係などを、離婚後も共同で決めたいという主張なら共同親権を目指すという事になるのでしょうが、子ども会いたいから共同親権というのは、目的と手段が合っていないと思います。 こういう点は理解されているのでしょうか・・・
ご意見ありがとうございます。 いくつかの点について回答や意見などを述べていきます。
まず、共同親権の議論の必要性についてですが、論拠の一つとして、子の連れ去りをあげる方がいます。
子を連れた別居の場合は、多くの場合は婚姻中なので共同親権だと思います。
どうして離婚後共同親権の議論が必要なのか理解できません
離婚後の話ですと、現行法では親権者とは別に、監護者の指定が出来ます。
その点を踏まえると必要なのは、共同親権ではなく、共同監護権ではありませんか?
繰り返しになりますが、親権は、子の居所、教育、権利義務関係などの重要事項を決める権利です。
病気したときの入院の是非、学校の入学、銀行口座の開設などを共同して決めることが、離婚後も必要が生じます。
現在の親権を前提にすると、子どもが持っているポケカを売りたいと言ったときに、離婚後も父母の同意が必要となります。 それが現実に可能なのでしょうか。
もちろん、別居後も信頼関係があり、子の状況について絶えず相談する関係があれば可能ですし、それが理想だと思います。
しかし、なかなか理想通りにいかないのが現実です。
協議が整わない場合には、家庭裁判所の申し立てが必要となります。
正直なところ、現在の家庭裁判所の人員では、共同親権が始まった後に持ち込まれるであろう雑多な争いに、迅速に対応する余裕はありません。
このような状況では、共同親権は、別居親の、子どもの重要事項決定に関する拒否権として機能する可能性があります。
今でさえ、義務である養育費の支払いを、面会交流との交換条件に利用されている現実があります。 それが更に悪化するのです。
子にとって何ら益はなく、有害になります。
共同親権を推進する方が、子の社会生活を維持するために必要な具体的なケースを例としてあげて、共同親権後の社会を語っていることを目にすることがありません。
そのため、現実社会でどのような影響が生じるのかきちんと考えていないのではないかと疑問に感じています。
裁判所での面会交流の運用については、司法統計を見れば分かると思います。
令和2年度の司法統計を例に挙げます。
具体的なデータは、このあたりを参照にしてください。
面会交流の事件総数 10,776件 面会交流が認められた件数 7,490件 69.5% 取り下げが 2,926件 27.2%
たった7割ではないかと感じられると思います。
しかし、取り下げせずに最後まで続ければ、面会交流が95%認められている計算になります。
比較材料として、子の引き渡し請求をみます 事件総数 2,658件のうち、引き渡しが認められた件数は 728件で 27.4%
取り下げせずに最後まで続けても、54.2%
比較することで、面会交流が認められる率が、圧倒的に高いことが分かると思います
もっとも、家裁を利用することの一番のネックは、事件終了までにかかる期間が長いことです。
令和2年度の子の監護事件総数 32,911件の審理期間を見ると
1 月以内 1,342 件 4.1%
3 月以内 6,012 件 18.3%
6 月以内 9,338 件 28.4%
1 年以内 10,594 件 32.2%
2 年以内 5,050 件 15.3%
2年を超える 575 件 1.7%
8割が半年を超え、半数近くが1年を超える期間となっています。
それから、判決や調停で面会交流が認められても、実際に会えないことがあるという点についてです。
正直なところ、これは人間関係の問題ですので、ある程度はやむを得ないことだと思います。
面会交流にも間接強制が認められていますが、直接強制にはなじみません。
無理矢理、同居親から引き離して、別居親と面会交流をして、その後同居親に戻すということは、人間関係の破壊であり非現実的です。
子の引渡しの強制執行において、直接的な強制執行が認められているのは、継続的な人間関係の維持を無視できるからに過ぎません。
この点は、共同親権になったからといっても、何も解決しません
そのため、面会交流の実効性を担保するためには、共同親権ではなく、家庭裁判所の増員や面会交流支援団体による適切な支援が一番必要な政策だと分かると思います。
そのため、会えないことを理由に共同親権を推進している方がいるのは理解できません。
どういう論理で状況が改善されると考えているのか、ご説明頂きたいと思います。
それから、面会交流が、1ヶ月に2時間が相場で少ないという点についてですが、相手方の負担を理解した上での発言でしょうか。
子育ては、本当に大変です。 シングルであれば、時間とお金のやりくりに心をすり減らしながらも、笑顔を保つようにして子どもと接し、休む暇もない状態で24時間を過ごしていることも多いと思います。
子どもの状況は年齢によって様々ですが、家を出ようと思ってから、実際に家を出るまでに数十分かかることもあります。
また、日本の社会は、小さい子どもの移動に不寛容な社会です。
ベビーカーで公共交通機関を利用することを快く思わない人も少なくありません。
ましてや、子どもが大泣きを始めてしまうと、いったん降りて、子どもが泣き止むのを待つこともあります。
2時間の面会交流をするだけでの、その日一日が潰れてしまうこともあると思います。
こういう苦労は、別居親には見えません。
そのため、もっと会えるはずだと簡単に考えがちです。 面会交流の時間はたった2時間かもしれません。
しかし、その裏には、膨大な努力が隠れていることを忘れてはなりません
また、小さいときは、ちょっとしたことでも熱が出る子もいます。
体調管理に気をつけていても、面会交流の当日に体調が悪くなることもあります。
それを、面会交流しなくない口実だと受け止められ、なじられる、怒られるなどすれば、面会交流への意欲が下がります。
それから、面会交流については、婚姻中に、きちんと子どもの養育をしていたのかということも関わってきます。
婚姻中に、おむつ交換や寝かしつけ、離乳食をあげたり、保育園や幼稚園の送り迎えを普通にしていたのであれば、子どもを2時間預けても、不安は感じないでしょう。
しかし、子どもの養育を全くしていないのであれば、子どもを安心して預けることが出来ません。
この場合は、面会交流の回数や時間を増やすことに対する心理的ハードルが高くなります。
当たり前ですが、婚姻中に出来ないことは、離婚後も出来ません。
離婚してから、一方的に子どもとの関わり合いを増やそうとしても、それはムリというものです。
また、子どもが成長すれば、同居している親よりも、友達と過ごす時間が多くなります。
年頃になれば、同居親との会話がないことも普通にあります。
そんななかで、面会交流が義務づけられていれば、子どもが友達と遊ぶ時間を削って面会交流することとなり、子どもの負担になることも有ると思います
面会交流は、今まで述べてきたように、相手方の大きな負担の上で実施されているのだという点は、理解する必要があります。
こういうことを全く考えずに、自分の望みばかり押しつけるのは、子のためという建前を利用した、単なる我が儘です。
結婚により、恋人の時とは違う、夫婦間での人間関係の構築が必要だったように、別居や離婚により、新しい人間関係を構築する必要があります。
しかも、離婚は、人間関係が壊れた状態がスタートです。
親なんだから会えて当然だという考えは間違っていると気付く必要があります。
そもそも、婚姻中であっても、自分の都合ばかりごり押しするのではなく、相手の都合に合わせるのが通常ですから、言うまでもないことだと思います。
ただ、Twitterでの書き込みを見ていると、この当たり前に気付いていない方が少なくないように感じます。
そもそも論かもしれませんが、連れ去りだ、犯罪だ、という主張をしながら、共同親権を求めるという考え自体が理解できません。
子どもの意向を無視して、連れ去る犯人から親権を奪い、自分の単独親権を求める方が自然です。
また、相手から見ても、自分のことを犯罪者だとなじるような人と誠実ができるとは思わないでしょう。
どうして共同親権を推進するのですか?
合理的なご意見があればお聞かせ頂きたいと思います。
最後に、面会交流の申立人について一言。
面会交流が子のためと言われていますが、実際に申し立てをするのは、子の父母です。
子が別居親に会いたいと思っても、父母が申し立てをしなければ、面会交流を実現することが出来ません。
例えば、子どもが別居親に会いたいと思っても、別居親が再婚などをして関わり合いを持ちたくないと拒絶するケースがあります。
この場合に、同居親も別居親に会わせたくないと考えていれば、子どもは別居親に会うことが出来ません。
面会交流が子の福祉のためにであれば、幼少であっても、子が独立した裁判手続きが取れるような制度があればいいと思います。
と、長々と書きましたが、最後までお付き合いありがとうございました。
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