ベンジーがSKUNKに込めた思いを考える
はじめに
BLANKEY JET CITYにSKUNKというアルバムがあり、ブランキー全体の中で見ても異色な曲が多く、熱中的なファンとしてはブランキーを語るのに欠かせないアルバムになっている。
そんなSKUNKの表題に選ばれたSKUNKという曲、ベンジーがブランキー中期から発信する動物愛護がテーマな曲ではあるものの、テーマに反して陰鬱とせず、ある意味狂ったようなテンションになっている。
この曲について今回は考えていく。
①イントロ + Aメロ1
ギター一本のイントロから始まるこの曲は、ベンジーのこの一言で幕を切る。
オレの憧れ アラスカ帰りのチェインソゥー
いきなり無生物への憧れから始まるという驚異的な自己紹介から始まるのである。この文言、一度口に出して見て欲しい。
オレの憧れ アラスカ帰りのチェインソゥー
なんか胸がスカッとしないだろうか?
まずアラスカから帰ってきた帰国子女のチェインソゥー自体が意味不明なんですが、脳裏に赤くて強そうなチェインソゥーが思い浮かぶ。
なんでもかんでも メチャメチャに 引き裂いてくれる
カン高いエンジン 青白い煙はいて
もうこれを聴いた頃には頭の中でブンブンとチェインソゥーが音を立てているわけだが、さぁ何を引き裂くチェインソゥーなのかというと
法律だろうが 鋼鉄だろうが
法律と鋼鉄である。
だろうがだろうがと言っているのでおそらくこの世の大体のものは壊せるのであろう。ここでベンジーの表現力が光る。
基本的に鋼鉄と法律、どちらの方が引き裂けるだろうか。私は難易度としては法律>鋼鉄だと思う。
その難しい法律の方を頭に持ってくることで、本当に何でもぶっ壊せる最高のチェインソゥーであることが一発でわかる。
また、しっかり韻を踏んでおり、音としても耳触りがとてもよいフレーズになっている。
法律 HO U RI TSU
鋼鉄 KO U TE TSU
②Aメロ2
ここでドラムとベースが入って「オゥレノ憧れェ!」というシャウトに近い歌声から一気にテンションを上げていく。
オレの憧れ アラスカ帰りのチェインソゥー
真赤なボディーに 彼女も悲鳴を上げる
500馬力は 人間以上のぬくもり
彼女も悲鳴を上げるを聴いた時、「え、これって悪いチェインソゥーなの?」という一抹の不安を覚えるも、直後それは払拭される。
500馬力というスポーツカーにも並ぶ馬力を持つチェインソゥー、さぞかし熱を持つことは予想できるが、その熱が只の荒々しく無機質な熱ではなく、人間以上のぬくもりだと教えてくれる。
「よかった。良いチェインソゥーだった。」
激しく震えてる 感情もない
人間以上のぬくもりの後に感情もないというほぼ正反対の言葉をぶつけられてしまう。
チェインソゥー、お前もう何なんだよ。
このチェインソゥーは人間以上のぬくもりを持っているものの、感情は持っていない。
ただそこにある。見えざるシステムとして存在している神様みたいなものなのかもしれない。
③間奏 + Aメロ3
このめちゃめちゃなノリから一気にテンションを下げてのベースソロ、嵐の前の静けさとも言える前奏。
オレは正気で あんたは少し
イカレテルけど 気にしちゃいけないよ
動物園の動物たちは 何が何だか
死ぬまで分からない
狂ったようにチェインソゥーの紹介をしていたこの歌が突如として問題提起を始める。テーマは動物園反対。
この曲を聴いていて一番印象に残るフレーズは個人的には「動物園の動物たちは 何が何だか死ぬまで分からない」だ。
動物達は遺伝子に食べる為の術、繁殖の術、外敵から逃れる術、色んなものを受け継いで生まれてくるんだと思う。
でも連れてこられた、生まれついた動物園にはエサは探さずとも降ってくるし、用意されなきゃメス(オス)もいない、外敵もいない、生まれた時に持っているものを全部捨てて、おかしな生活に身を置くことになってしまう。
実際、動物園に反対する人たちがいて、なんでダメなんだと聞いて、どんな答えが聞けたら納得できるのかなと思うと、ベンジーのこの表現がシンプルに突き刺さるような気がしている。
④Aメロ4
オレの憧れ アラスカ帰りのチェインソゥー
真赤なボディーに 彼女も悲鳴を上げる
500馬力は 人間以上のぬくもり
激しく震えてる 感情もない
最初からチェインソゥーへの憧れ、凄さを語っていたところで、突如Aメロ3で動物園反対というメッセージを打ち出した理由を今までの歌詞と共に理解させるのがこのAメロ4
そう、ベンジーは動物から自然の生き方を奪う動物園なんかチェインソゥーでぶっ壊してしまえと言っている。
⑤Bメロ1 + ギターソロ
さて、この記事を書いてて初めて気づいたが、この曲はメロが二種類しかないし、何ならAメロをしつこく4回も繰り返している。
演奏と歌詞の緩急が凄まじくて、4回のAメロがすべて違って聴こえるから飽きなかったんだと思う。
礼儀知らずの かわいいスカンク
罠に落ちたよ 脱けだせない
誰か彼を 助けてあげて
彼はオレの 友だち
SKUNK
ハンターに捕まってしまったスカンクを助けてくれと叫ぶベンジー、当然助けてくれるのはチェインソゥー
何でも壊せる最高のチェインソゥーが動物園という概念を引き裂いてくれる。
この歌詞を聴いた後にベンジーのギターソロを聴くとチェインソゥーが勢いよく何かを引き裂いているように聴こえるギターソロ
ベンジーのギターソロはバイクに乗ってる曲だとエンジンみたいに聴こえるし、不思議と歌詞とリンクされているように感じる
⑥Bメロ2
礼儀知らずの かわいいスカンク
罠に落ちたよ 脱けだせない
誰か彼を 助けてあげて
彼は僕の 友だち
SKUNK
そしてこのフレーズをリフレインする。
オレが僕と変わっている。
個人的にはこれはどちらもベンジーだと思っていて、より切実な想いであることを伝えているのかなと感じた。
おわりに
ベンジーの動物園反対を唱える曲は何曲かあって、4/7に出たソロのニューアルバムでも「ラッコの逆襲」という曲で歌っている。
BLANKEY JET CITY時代だと皆殺しのトランペット
長きに渡って動物園反対を示しているベンジーだけど、表立った活動をしているわけではない。ただ歌を作って歌う。特にMCで何かを言うわけでもなく歌うだけ。
ただミュージシャンとして歌を通してみんなが当たり前に平和で素敵なところだと思っている動物園について是非を考える機会を投げかけている。
そこに一貫した哲学みたいなものを感じる。
それでも別に何も考えずに聴いたってブチ上がれるのがSKUNKだと思っていて、音と語感の良さだけで楽しめてしまう。
でも、その歌詞には実は深い想いも宿っているというのがBLANKEY JET CITYの魅力なんだと思う。
おまけ
チェンソーマンという漫画がある。チェンソーの悪魔を宿した主人公が様々な概念を持った悪魔を倒していくお話。
そのめちゃめちゃな世界観がこの曲にピッタリな気がして、アニメ化することが決まっているのでOPはSKUNKになるんじゃないかと本気で考えている。