32歳のSevenStars

「女のタバコって、ダサいよな」
父は私に度々そう言った。そのとき私は喫煙者ではなかったし、父もとうの昔に煙草をやめていた。
けれど、今、私は立派な喫煙者だった。とは言え、吸い始めたのはごく最近。早い子は高校生の頃から吸っていて、学校にバレると停学や停学者が入る部屋にぶちこまれていた。
母も煙草嫌いだった。私もどちらかといえば好きではなかった。
それでも私は今は喫煙者。このまま肺が真っ黒になって穴だらけになってしまえばいいと思う。
左手首やふくらはぎや太ももは自分でつけた傷でズタズタだし、もう普通に振る舞うのも疲れたし。そんな私が語るのもおかしいかもしれないが、これでも昔はモデルになりたかった。
現在はたまに、それに近しい依頼を頂いたりする。
幸せじゃないかと思う。優しくてかっこいい旦那と結婚して、親と離れて暮らせて。
でも私が見ているのは全く違うものだ。
母はヒステリックな教育ママだった。父は私をおもちゃにしていた。父からの罪滅ぼし代わりはあれど、真っ赤なチェックのワンピースを着て泣き叫ぶ私も、泡を吹くまで怒鳴られ頭を打ち付けた私も、首を絞められかけた私もいなくならなかった。仕事だってこなせたことがない。
やるせない私は今さら手首を切って処方された薬を飲んで、煙草を吸うしか気力がない。
唯一の目標にすがりついて、泥濘を歩いている。
子どもは望めない。
穏やかに笑う夫には、言葉にしても私の気持ちは届かなかった。

悪い子になりたい。それで、どこへでもいけたなら。



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