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「あの花が咲く丘で、また君と出会えたら」原作感想

あの花が咲く丘で、また君と出会えたら

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作品情報

作品名:あの花が咲く丘で、また君と出会えたら
著者:汐見夏衛
レーベル:スターツ出版文庫

留意点

この作品を読んで生まれたクソデカ感情を殴り書きした感想になってます。
推敲はしていません。
自分が後々見返したときに「あっ、こんな話だったな」とわかるように書いてるので感想+内容って感じです。
映画、原作を読んでない人への配慮はしていません。注意して下さい。

感想

読了。
本当に本当に国語の教科書に入れたほうがいいって心から思えるような作品。
戦争の醜さがこれでもかってわかるくらいの名作でした。
自分はこの作品を、先に映画で大泣きしながら見て、今回原作を読みましたが映画で見た内容を思い出してしまい泣きながら読んでました。
主人公の百合は、いわゆる一匹狼、みたいな感じでちょうど反抗期の時期に親との喧嘩で防空壕に入ったときに過去にタイムスリップしてしまい、戦争が終わる1945年で生きていく。という話でした。
彰と出会って、ツルさんと出会って、必死に生きる毎日。
そんな生活を続けていく中で、戦争の醜さを実感していきます。
まず自分が感じたのは「軍粮精」が初めて出てきた場面です。
戦時中は英語を使うと非国民と言われてしまうため「キャラメル」を「軍粮精」と呼ぶことになっています。
そんなことをしても勝敗なんて変わらないのに、なんでそんな馬鹿みたいなことをしてしまうんだろう。
どうして誰も違和感を感じないんだろう。そんな百合と同じような感情が出てきました。
そして彰と百合の花が咲く丘へ。
ここで百合が考えていることを彰に伝えます。
彰は百合のことを「非国民」なんて呼ばず、しっかり話を聞いて「今はもう、そうしなしなければこの国を救えない」と戦争しないといけない世界で生きる彰の気持ちもわかるし、百合の気持ちもわかる、そんな複雑な気持ちになりました。
そして登場するのが千代ちゃん。
千代ちゃんの服の下には自分で縫って作った薔薇の刺繍が。
今とは違って遊ぶものも遊べるところも少ない戦争時だからこそ、刺繍ぐらい自由にさせてあげてほしいのに、周りの大人がそれを許すわけもなく、誰にも見られない下着として使っているのは寂しいなと感じました。
そしていつも来てくれる兵隊さんたちが「特攻隊」と発覚シーン。
国のために死ぬことが誇りだと思っているとか意味のわからないこと言って、百合と同じ感覚を自分も持ちました。
上官の言ったことに感化されて特攻隊に入ったと言っているシーンがあったけど、自分は本当に洗脳に近いなと思いました。
戦争に負けそうになっているという事実を隠すために市民を洗脳して戦争に行かせる。そんな時代だったんだろうなと強く感じました。
小さな男の子と会う百合。
戦争によって食べるご飯もなく、ただそこにいるしかない男の子に食べ物をあげて、「戦争で負ける」といったとき、後ろから戦争に飲み込まれた大人が出てきます。
警棒で殴りかかってきたのを受け止めるツルさん。
本当に痛そうで見ていて辛かったです。
また殴りかかってきたのを止めたのは彰。
ここ映画だと「特攻隊員は神様なのに逆らっていいのか?」みたいな追い出し方をしましたが、原作だと馬鹿な大人が彰を殴ってしまい、罪悪感で逃げる。となっていることに驚きました。
映画でも自分がトップレベルに好きなシーン、百合と彰のデート。
二人で一緒にかき氷を食べて、そのかき氷の味を「幸せの味」と表現しお互い笑い合うシーン。
この時間が一生続けばいいのに、心からそう思いました。
このエピソードの最後にあった、「彰といると、どうしてこんな満ち足りた気持ちになるんだろう。でも、私はその気持ちを考えるのが怖かった。だから私はその気持ちに蓋をして、目をそらしていたのだ」という言葉が、本当に百合のことを考えると辛かったです。
襲いくる炎。
ついに百合の住んでいるところにも空襲がやってきます。
ツルさんの着物を犠牲にもらった米を握りしめ、空襲から逃げる百合。
自分は映画でこのシーンを見ていたからこそ、このシーンが実際だとどんな状態なのか、というのが凄く伝わってきて涙が止まりませんでした。
足に木が乗ってしまい、逃げれなくなった百合。そこにやってきたのはそう。彰。
まじで最高の男すぎた。百合を背中に乗っけて逃げる彰。
道中見かけた沢山の死体たち。どんな思いで見てたんだろう。と考えると本当に胸が苦しかったです。
そしてついにいつも来てくれる兵隊さんたちに「出撃命令」がやってきます。
「────出撃命令がでました。3日後の13時です」
この言葉に対して、ツルさんは「おめでとう」と祝福の声をあげます。
どうして人が死ぬのに祝福の言葉をかけるんだろう。そんな疑問を自分も、百合も思い浮かべます。
そして兵隊さんたちの一人。板倉が逃げ出します。
板倉が逃げた理由。
戦争によって足がない幼馴染の許嫁を置いて死ぬわけにはいかない。
ここに対しての表現が自分は本当に心にぐっと来て、「板倉さんは死にたくないんじゃない。生きたいんだ」という百合の言葉が強く心に残っています。
そんな板倉を逃す彰。それを逃さないとする加藤。
でも最終的に加藤は板倉を見逃します。
きっと、特攻命令が来るまで一緒に過ごしてきたからこそ、板倉の気持ちがわかり、見逃したんじゃないかと思いました。
そしてもう一度百合の花が咲くあの丘へ、彰と向かいます。
あの丘で百合はついに彰への恋心を自覚してしまい、「行かないで」と口にしてしまいます。
「なんで彰が行かないといけないの?なんで彰が死なないといけないの?」
そう彰に伝える百合が本当に可哀想で、生まれた時間が違ったら、戦争なんてなかったら、もっといい未来があったんじゃないと考えると本当に胸が苦しかったです。
そして最後に隊員さんたちと食事をできる最後の日。
このときツルさんがいった「この人たちは極楽へ行くんだよ」という言葉。
また洗脳かと。天国なんて行ける保証ないのに、誰も見たことがない極楽という言葉にすがって、戦争で犠牲になる特攻隊員を美化しようとして。本当にこの世代の人は頭が狂ってると改めて実感してました。
野口さんの言葉。
俺は特攻命令が出て嬉しいと。
最初目にしたときは何を言ってるんだ?と思いましたが、仲間とともに本当は死んでいるだったはずなのに、戦闘機の故障で特攻することができず、仲間から、
「俺達は先にあの世で待ってる」
なんて言われたら、特攻命令がようやく出た野口さんの気持ちは少し理解できる気がしました。
戦争がなければ仲間とそんな別れ方なんて起きずに、もっといい関係慣れたかもしれないのに。と考えると本当に辛いです。
「そうだ、共に散ろう!」
そうみんなで口にして気合をいれる隊員たち。
本当に今の時代じゃありえないし、見たくない風景で、映画でお酒を飲んだ隊員さんたちが盛り上がってる姿を本当に思い出してしまいました。
そして彰との別れ。
「百合……元気でな」
という彰の言葉が「さようなら」や「またな」じゃないことに本当に苦しくてもう会えないんだなと思うと本当に百合が可哀想で。
現実にもきっとこういう人がいるかも知れないと思ったら、少しでも報われてるといいなと思いました。
そして当日。本当は彰に会いに行く予定はなかった百合。
でも彰が残してくれた手紙を見ると会いたくなって走り出す百合を見ていると本当に辛くて、最後の最後に戦闘機の中から百合に投げた百合の花をみるとどうして報われないんだろう?どうして戦争なんかしているんだろうと涙が止まりませんでした。
そして現代に戻る百合。
現代では一晩しか立っておらず、母親に「ごめん……ごめん……」と謝る百合を見ていると本当に戦争の時代が辛かったんだなと。よく耐えたなと本当に感動しました。
「消えない思い」
当たり前の日常が戻ってきた百合。
流石にあんな経験をしたら大人になるというか、周りからは変わったといわれるようになった百合。
自分でもなんで何事に対してもイライラしていたかわからないって言っている辺り、中学生とは思えないぐらいの精神的にも身体的にも大人になっている百合を見て自分が頑張らないとなと思いました。
そんな当たり前の日常を生活をしていく中で、彰からの「泣き虫だなぁ、百合は」という言葉が頭から離れず、もう会うことのできない人を想う百合が少し可哀想で報われてほしいなと。
そして学校の行事として向かったのは「特攻資料館」。
戦争の時代を生きた百合だからこそ、考えることがたくさんあったと思います。
特攻してしまった人の手紙が置いてあるコーナーで、百合と馴染み深い人の手紙を見つけて読み始めます。
映画では彰だけだったような気がしますが、原作では寺岡さんの手紙や、石丸さんの手紙もあり驚きました。
そして見つけたのは彰の手紙。
両親、そして兄弟への感謝と、百合への手紙。
時代を超えて百合は彰からの手紙を読むことができました。
「俺は君のことを愛していた」
妹みたいといっていた彰の本心。
両思いだってわかってももう遅くて、そんな手紙を読んだ百合は泣き出してしまいます。
自分ももう涙腺がやばくてやばくて。
彰の写真には、胸ポケットに百合の花が2つ入っていて。
こんなにも愛されていたんだ。
こんなにも深く、静かに、私のことを愛してくれてたんだ。
という言葉が本当なんで二人は結ばれなかったんだろうと本当に読んでいて辛かったです。
そしてここからは映画にはなかったシーン。「
「新しい世界」
初めてであった中2の男の子。
そんな男の子を直感的に彰とわかってしまいます。
新しい世界。そうだ。この世界で私は生きていくんだ。
───ねぇ、彰。
私の声が聞こえますか?
あなたは今、どこにいるの?
そこは、痛みも苦しみもない悲しみもない、穏やかな場所ですか?
せめて今は優しい夢の中で、安らかに眠っていることを祈ります───。
本当に彰には安らかに眠っていてほしい。と強く自分も願ってしまいました。
そして始まるエピローグ。
自分はこの原作を読む前に一度考察をしたことがあります。
この本のタイトル「あの花が咲く丘で、また君と出会えたら」というタイトルはもしかしたら彰がいったセリフなんじゃないかと。あの表紙は彰からみた風景じゃないかと考えていましたが、このエピローグで解決しました。
生まれ変わったら───あの花が咲く丘で、また君と出会えたら。
俺の本当の気持ちを伝えたい。
そう心に決める彰は本当にかっこよくて、生まれ変わったら先では報われるといいなと。
そしてこんなにも最高すぎるタイトル回収に泣くしかなくて。
本当に本当に神作でした。
汐見夏衛さん。本当にありがとうございました。
続編の「あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。」ももちろん読ませていただきます。
本当にありがとうございました。

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