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干ばつ...

さて、今、世界各地で干ばつによる被害が広がっています。数か月前から話題になっていましたが、ここ1~2週間で、中国やヨーロッパ、そして、アメリカからも続々と干ばつのニュースが報道されています。

干ばつ、農作物への被害も相当なモノでしょう。500年に一度の大干ばつだとか。湖や川が干上がっている写真が送られてきます。日本は、雨が多くて大変でしたが、各地の干ばつのほうが大変なようです。

その中に、水の中に沈んでいた物が姿を現した!という記事もでています。

イラクの都市、スペインの巨石、イタリアの沈没船、北欧の文字が刻まれた石、中国の石造物、アメリカでは車、殺人(?)の痕跡も。テキサス州では、恐竜の足跡も見つかっています。

研究が進んでいいね!とか、新しい発見!いいことじゃないか!と思うかもしれませんが…実は、そうでもありません。

❶すでに知られていた遺跡がほとんど

 水中遺跡、日本以外の国では珍しいものではありません。先進国では各国数万件の水中遺跡が把握されています。沈没船や水没遺跡などなど。ユネスコの統計では300万隻の沈船が世界にあるとか…。また、世界の事例から見て超ざっくり平均を出すと、海岸線1㎞に水中遺跡1件となります。例えば、ウクライナの海岸線延長は2,000㎞ちょっと、水中遺跡も2,000件ほどあります。

何年か前の干ばつの際も、遺跡発見のニュースが出ていました。でも、今回は、そのスケールが違いますし、なによりエリアが広い。欧州・中国・アメリカ…

❷ニュースに出るのは、特異な例

 例外もありますが、干上がっている水中遺跡は、各地にあるようです。その中で、目立つものが報道されています。氷山の一角のようなものかな…。いままで知られていなかった遺跡、知られていたけど全容が見えなかった遺跡、テレビ的に目立つ遺跡が報道されています。

❸研究するには機動力が必要、突然の対応は難しい

 これらの遺跡、記録を残すことが大切。どんどん記録していけば、と思うかもしれません。が、しかし、突然現れた遺跡に対して対応する予算が…。雨が降れば、また、沈んでしまう遺跡もあるでしょうし、どう対処するべきなのか。難しい問題ですね。

 そもそも、干ばつが進んでいる地域でのんきに考古学研究をするな!という意見もあるかもしれません。

❹一番の問題は…遺跡にとって乾いてしまうのは最悪のシナリオ!

 はい、これが一番大変なこと。水中遺跡は、水中にあるからこそ、今日まで残っていた。水中では酸素から遮断されるため、遺跡の保存状態が陸に比べてよい場合があります。50㎝以上の堆積があれば、完全に真空パック状態。数千年前の有機物がそのまま残っていることも…

 これが、乾燥すると一気に劣化します。発掘では、乾燥させずに保存処理を施します。しかし、遺跡全体が乾燥してしまうと大変です。遺跡にとって最悪なのは、濡れたり乾燥したりを繰り返すこと。乾燥した地面の下には遺跡が埋もれている可能性もあります。それらの遺跡は露出していませんが、確実に乾燥し、劣化が進んでいる。特に、有機物を含んだ水没した石器時代の住居跡などがあれば…。

 遺跡が発見されて目に触れることができ、「なんかすごいな~」と思うかもしれません。でも、その裏では、この干ばつで、おそらく数百の遺跡が消滅し、数千の遺跡が危機にさらされている。

お宝発見!と素直に喜べない…残念です。


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