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赤べこ伝説、『評伝 小室直樹』その後

『評伝 小室直樹』(ミネルヴァ書房、2018年)の著者である村上篤直(あつなお)氏の講演をYoutubeに見つけた。1)

花ホテル講演会 というYoutubeチャンネルで2022/11/09 にライブ配信されたものである。

花ホテル講演会 とは、福島県の会津柳津温泉(あいづやないづおんせん)の、花ホテル 滝のや にて2001年から開催されている講演会で、
幅広いジャンルの講師の方がお話されており、2023年5月3日時点では435本の動画が、同名のYoutubeチャンネルにアップされている。

花ホテル支配人の塩田さんが講演会を始めた経緯は、「あいづっぺでぃあ」というWebサイトのインタビュー記事によると、

「花ホテル講演会をやってる理由は2つあってねーーー1つは、旅館の売上を上げるため。もう1つは。映画と同じように人の話を聞くのが大好きだったんだよーー。」
「結婚する前は、郡山や福島市などでいろんなセミナーや講演会に足を運んで話を聞くことが好きだった。けど、結婚して子供ができたら大変で出してもらえなくて講演会を聴きにいけなくなったからね。」

そんな時に、旅館で数人で打ち合わせしてる時に色々話してくれた一人のお客さんがおり、そのお客さんが「聞く態度いいから、また来るなーーー」とおっしゃって、次来た時にちゃんとした場を用意したのが第一回花ホテル講演会だったとのこと。2)

行けないなら呼んでしまおう!、ということですね。

花ホテルのある柳津(やないづ)は、赤べこの発祥の地とされる。

伝説によると、1611年の会津地震で被害を受けた虚空藏堂(本堂)再建のため大材を崖上に運ぶのに大変困り果てていたところ、どこからともなく力強そうな赤毛の牛の群れが現れ、大材運搬に苦労していた黒毛の牛を助け、見事、虚空藏堂(本堂)を建てることができたそうです。3)

また柳津は、小室直樹先生の母の故郷であり、先生が移り住んで幼少期を過ごした場所。

赤べこ伝説でも出てくる虚空藏堂は、只見川沿岸の崖上に立つ福満虚空藏菩薩 圓藏寺(臨済宗妙心寺派)。柳津はその門前町。

「虚空藏菩薩は、無限の智恵と慈悲をもった菩薩であり、帰依することで類(たぐ)い希(まれ)なる記憶力を授かるという。 その圓蔵寺のそばで育った小室が恐るべき記憶力を授かった。不思議な偶然である。」4)

そして本題の村上篤直(あつなお)氏による講演ですが、『評伝 小室直樹』の後日談的お話があり、とても興味深く貴重なお話であった。

小室直樹先生が、現代政治研究所という株式会社の表札をかかげておられた湯島ハイタウンというマンションの一室が売りに出されるとのことで、そのお部屋の片づけをすることになった氏の、2021年4月末からの片づけの様子がたくさんの写真とともに紹介される。

部屋の窓からは旧岩崎邸庭園が見えて、非常に景色がきれいなのであるが、部屋の中にあるのは大量のごみの山であり(村上氏には宝の山に見えたとのこと)、これを丁寧に片づけていく村上氏の姿勢に小室先生への並々ならぬ愛情が感じられました。

部屋にあったものと、湯島ハイタウンの地下に小室先生がかりられていた13個のトランクルームにあったものと合わせ、最終的につめた段ボール箱が332箱にまでおよぶ大量の蔵書は、花ホテル 滝のやの塩田支配人が何とか引き取ってくださったよう。

大量の蔵書受け入れについて、普通なかなか個人でできることではないとおっしゃっておりましたが、いずれ小室直樹ギャラリーや小室直樹研究の一大拠点として柳津がクローズアップされるのではないかと、村上氏の言。

講演の最後には、玄関ドアからはぎ取ってきた、現代政治研究所のプレートも嬉しそうに見せてくださいました。

村上氏の誠実なお人柄がうかがえる、心に残るとても良い講演でした。


【引用文献】

1) 「第713回花ホテル講演会 「評伝小室直樹より ~柳津育ちの破天荒な天才学者の生涯~!」講師:村上 篤直 氏」『 Youtubeチャンネル 花ホテル講演会』。 2022/11/09 にライブ配信。URL:https://www.youtube.com/watch?v=2qNvNHnN8F8. 2023年5月3日閲覧。

2) 「最高の「おもてなし」でこれまで600回以上の講演会を開催する【花ホテル滝のや】支配人の知られざる過去とは?」 『あいづっぺでぃあ』 2020年3月16日。URL:https://aizuppedia.org/blog/1270. 2023年5月3日閲覧。

3)  ”疫病終息祈願 赤べこ伝説 - 赤べこ伝説発祥の地 会津やないづ.” https://aizu-yanaizu.com/feature/akabeko-legend/. 2023年5月3日閲覧。

4)  村上篤直『評伝 小室直樹 』上巻6頁(ミネルヴァ書房、2018年)



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