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矜持

石田泰尚ヴァイオリン・リサイタルへ行く。
ピアノは岡本知也。
音楽の生演奏を聴くと、言葉は無力だと感じることが屡々ある。
「音楽家」は最も羨ましい職業かもしれない。
とても洗練された演奏会だった。

会場一階では、地域の「高等学校芸術文化祭」の作品展示があり、
コンサートが始まるまでの時間、高校生の作品を見て回る。
将来のアーティストの卵、なのだろうか。一生懸命さが伝わってきて、
若いんだなと思う。そして作品としては弱い。と思うものが多かった。
(それは端的に、自分がお金を出して手に入れたいと望むような作品がなかった、という意味で。)一緒にいた私の母は、「若者のエネルギーを感じる」と言って喜んでいた。

今日聴いたヴァイオリンの音色と、高校生の作品の事を考える。
プロの演奏家と学生を比較するのはおかしいのかもしれない。
(けれど表現者としては同じであるはず)
違いは、受ける評価の有無と、その厳しさ。
石田泰尚のヴァイオリンには演奏家の矜持があふれていた。
それが高校生の作品群には感じられなかった。
(もちろんそこが学生の作品のいいところでもあるのかもしれない)

来月は母の目の手術が控えており、病院から通院時の衣類の指示があって
買い物をした。手術の同意書には恐ろしいことばかり書かれている。
同意書というものはいつもこんな風だ。と思いながら捺印する。
老いることにその都度きちんと対処していくのは面倒なことだ。
近頃は、衣類を選ぶ時には特に時間をかけている。(着心地は重要なのだ)
生きることを淡々と積み重ねていくということが母の矜持なのだろう。










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