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久しぶりに歌舞伎

今年は近松門左衛門の歿後三百年にあたる。
私は近松ものが好き。戯曲自体は、文楽で観劇するほうがより楽しめる。
けれど役者さんによっては歌舞伎で観劇するほうが感動が大きくなる場合もある。特に坂田藤十郎さんは最高だった。

2月は大阪松竹座で「曽根崎心中」、今月は京都南座で「河庄」と「女殺油地獄」を観劇した。なんといっても役者さんが皆、若い。こんな若い演者で近松の歌舞伎を観るのは初めてで、かなりわくわくしつつ劇場へ向かう。
お家芸なので中村壱太郎のお初は間違いないだろうと予想していたけれど、相手役の徳兵衛が東京の役者、尾上右近だったのでどんな感じか。
結果、この二人の組み合わせはとても良かった。上方言葉にも問題はなかったし、芝居も情熱的で、泣いている観客もいた。主人公が若者のお話なので、若い人が演じるとこうなるんだな、という新鮮な驚き。

というわけで今月の「河庄」も同じ役者同士の配役で、期待して出掛ける。
一列目の端の方の席で、小春の姿がとてもよく見えたせいか壱太郎の我慢の芝居に感動。小春のお芝居で涙が出たのはこれが初めて。見事だった。
この芝居で最も目立つのは治兵衛役の右近。台詞回しなど、坂田藤十郎のお芝居をとてもよく研究しているな、と感じた。今回の指導は鴈治郎さんとのことなので当然といえばそうなのだけれど、東の役者にとって治兵衛はなかなかの難役だと思う。「女殺油地獄」は中村隼人が与兵衛。仁左衛門の指導というのも頷ける出来栄え。
「将門」は昼の部と夜の部で演出、衣裳が違っており、劇場にとてもよい香りが立ち込める。昼と夜、それぞれ香りが違うという趣向。豪華な舞台でうっとりした。

これまでとは世代交代が進んで、こういう配役での上方歌舞伎が増えていくのかもしれない。ぜひ増えてほしいとも思った。




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