東京を、好きなまま。
向島百花園の梅が開花したことを、Twitterで知った。
上京して10年。
こんなにも家を空けたことがあったかな。
2021年を迎え、三ヶ日が過ぎた頃、私はひっそりと栃木の実家へ戻ることにした。
このまま独りで東京にいられない、と思ったけれど、東京の家を引き払うほど、未練なく故郷を選ぶこともできないままに。
これは、住む場所の意思決定を縁と運に丸投げしてみた私の、これからの位置情報のはなし。
ここで生きてるだけで迷惑をかけている
言葉にするとけっこうショッキングに響くけれど、東京で2020年を終えたとき、本当にそんなことを考えていた。
米印をつけて言いたいのは、精神を病んでた訳ではありません。ただ漠然と。
1人で暮らすこの家で、寝て起きて、食べて飲んで、少なくとも毎日2000円くらいは使っていて、全てが自分のためだけの行動選択で、なかなか幸せに生きちゃっている感じだった。
誰かに咎められたわけじゃない。
でも、誰のことも幸せにしてない気がするし、養ってもいない。どこかに勤務しているわけでもなく、ただ東京を謳歌していた。
「自分のエゴで東京にいて、消費して、なんだか生きてるだけで迷惑をかけているみたいだな」
オリのようなそういう感情が、去年の夏頃から心の底にうすく沈殿していた。
こんなことを考えるに至った私の生い立ちや生活スタイルについては、昨年書かせてもらったこれらの記事に詰め込んだつもり。
私には、東京じゃないところにもちゃんと居場所がある。
だからこそ東京にいながらも、いざという時はいつでも離れられる生き方を選んできたはずで、30代もこのまま東京にいるのかは正直みえていなかった。
だから、ひとまずふるさとの日光よりも東京へのアクセスがいい宇都宮あたりに引っ越してみようかな、と物件情報も見てはいた。
「東京にはまじないがかけられているんだってよ」
季節の変わり目になると会いたくなる友達がいる。
どこかで落ち合って飲んだ後、コンビニに寄ってジャンケンで負けたほうが2人分のロング缶を買い、外で飲みながら時間を溶かすのが恒例になっていた。
ある日、隅田川のほとりでそれをやりながら、東京を離れようかどうかについて話した。
ひと通り話を聞いてくれたあとに「なんか、ずっと東京にいる人だと思ってたよ」と言われ、嬉しく思う自分がいた。
面白い話もしてくれた。
その昔、江戸時代かもっと前。都はまじないで守られていたんだって。見えないバリアみたいなものが張られていて、選ばれた人でないとここには居つけないようになっていた。今もそのまじないが効いているらしいよ。
「それでいくと、知り合った時から東京に選ばれた人って感じだったけどな」
なんだかいつも記憶に残る言葉を残す人なのだ。
自分で決めるのをやめてみた
私の一人暮らしデビューは、たぶん世間一般よりもはやい。
高校進学と同時だったので16歳。
でもそのわりには、一人暮らしが下手くそだなぁと思う。デビューこそはやいものの、トータルの期間でいえばそんなに長くはないのがそれを物語っている。
妹との二人暮らしにはじまり、社会人になってからしばらく同棲をしていたし、いまの墨田区の家に越してからも、友だちが一緒にいてくれた。
生きてるだけで迷惑をかけてるみたいな心理になったのは、きっと共に暮らす人がいないからだ。
げんに、実家に帰るとおばあちゃんは毎日私がそこにいるだけで嬉しそうにしてくれて、それだけで許されたような気持ちになった。
とはいえ実家で暮らすことは全然現実的じゃないし。
家業を手伝っていた妹が「実家を出たい」と言ったのはそんな折のことで、東京の会社に入るか、栃木でフリーランス的な動きをするか迷っている感じだった。もちろん住む場所もそれに伴って、東京と栃木で大きく異なる。
それを聞いた私はといえば、妹と再び二人暮らしをすることだけ決めて、これからをどこで生きるか、縁と運に丸投げすることにした。
妹に東京の会社から内定が出たなら、私はきっと「まだ東京に居なさい」ってことで、違ったなら「もう十分でしょう」なのだろう。流されるのもわるくないと思った。
これからのこと
妹の内定が出て、東京で女二人暮らしをすることが決まった。
もともと1人で住むには広すぎる一軒家に、妹が越してきたのが3月。
その妹よりも遅れて、約2ヶ月戻っていた実家から私も再び上京した。
いつかの隅田川で聞いたおまじないの話がずっと頭の中にあって、私は東京のおまじないに導かれて、こうなったことにしている。
とはいえ、ずっと東京の人をやっていくかといえば、それはまだまだわからない。突然好きな人ができて結婚とかしてどこかに行っちゃうかもしれない。
だとしても、家業や地元との関わりはこれからもう少し増やしていきたい。
今年度の地元での活動に関しては、宇都宮市にあるビルトザリガニというスペースを中心としたカマガワクリエイティブスクール(通称カマクリ)に関わっていきます。
あとはたぶん、実家近くの素敵な原っぱで野点と茶花のイベントを今年もやるよてい。
ちなみに墨田区でも、去年に引き続き「すみだ向島EXPO」に関わっていきます。現在冊子制作のお手伝い中。
これまでも東京と栃木を行き来する人ではあったけど、今年はもっと腰を据えて動く(表現としては矛盾してるけど)イメージで行きたいと思う。
栃木に戻る時は一週間単位で滞在してる予定なので、図らずも二拠点生活者になるのかも。
「今どこにいるの?」という声をたくさんいただいたこともあって、新年度だし。位置情報の予告でした🙆🏻♂️
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