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編集ってやっぱりたのしい。−Editor Meetup Vol.1 参加レポート

12月1日(金)に五反田のCONTENTZで開催された「Editor Meetup Vol.1」、
せっかくメモしたのに載せてなかったのでここに。

「編集者のスキルって、どうすれば上がるのだろうか…」
これは新人・中堅の編集者にとって、大きな疑問のひとつ。
昨今、ライターの勉強会やイベントは数あれど編集者向けのものはそう多くはありません。

こんなイベント概要に共感して足を運んできました。
ライターのお仕事も楽しいけど、それよりも上段から関われる編集も、やっぱり楽しいんです。

ではではさっそく。

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【登壇者プロフィール】
林亜季 (はやしあき)さん
ハフポスト日本版 Partner Studio チーフ・クリエイティブ・エディター。
スポンサードコンテンツをはじめとした、ハフポスト日本版の広告事業を統括している。
1985年、福井県出身。2009年、朝日新聞社入社。記者経験後、メディアラボで新規事業開発に携わる。経済部記者を経て、17年7月から現職。 東京大学法学部卒。
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櫛田健介 (くしだけんすけ)さん
株式会社リクルートキャリア コンテンツマーケティングG リクナビNEXT編集デスク。
『リクナビNEXTジャーナル』『リクナビNEXT転職成功ノウハウ』をはじめ、転職メディア関連のコンテンツ戦略・編集に携わる。特に『リクナビNEXTジャーナル』においてはチームリーダーとして、2年でPV1500%成長に貢献。
1985年、千葉県出身。2008年、株式会社ベネッセコーポレーション入社。教材編集・DM制作を担当しつつ、教材を活用したオウンドメディア企画を起案。2014年10月より現職。上智大学文学部出身。卒業論文のテーマは『応仁の乱』
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初瀬川裕介(はつせがわ ゆうすけさん
株式会社はてな サービス開発部 編集。雑誌出版社で編集業務を経て、Webの世界へ。サムライト社で、メーカー、人材系など大手企業のオウンドメディアを運営し、その後2017年5月から現職。自社サービスに掲載されるコンテンツ、またクライアントのオウンドメディアの運営を担当する。メディア運営から企画立案、取材、執筆、撮影、グラフィック作成など、コンテンツマーケティング全域での業務をフォロー。いま適当に考えた座右の銘は「インサイトは一日にして成らず」。1981年東京出身。
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【モデレーター】
後藤亮輔 (ごとうりょうすけさん
PR Table執行役員。宮崎県都城市出身。雑誌・CMのコピーライターを経て、エン・ジャパンで採用関連業務、CAREER HACKの運営を兼任。フォトクリエイトでのメディア事業立ち上げの後、サムライトのCCO(最高コンテンツ責任者)として2016年朝日新聞へのバイアウトに貢献。2017年6月よりPR Tableに参画。得意技は縦スラ。尊敬する人物は西口文也。

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【対談内容】

Qアウトプットどう磨いてる?

林さん:デティールが全て
取材でディテールをたくさん集める。美しいものを美しいと書いてもつたわらない。何色でどういうところがあって、、、みたいな具体的な情報にとにかくこだわって情報を集める。

—しつこく質問しないといけないときのテクニックは?

まずは記事がどんなイメージになるか、出て世の中の人にこういうことを伝えたい、と言ってとことんお願いする(遺族取材とか気まずさがある場合も)

初瀬川さん:フルスタッフで全部やる
編集者が企画を立てるのは当たり前。企画を立て、取材に行き、撮影し、デザインの真似みたいなことをやってきた。人を使わないからハンドリングがしやすい。
それぞれの真似事にすぎないことを自分でやってると、プロがあげてくるものの構造や良し悪しが理解できてくる。現場でスペシャリストたちが何を難しいと思っているのかが想像できるようになってくる。

櫛田さん:リバースエンジニアリング
エンジニア用語↑。その性能の一番キーになるところはどこなのかを考えるのは編集も同じ。自分が書きたいことがどうしたら拡散されるのか。5W1Hの基本をしっかり考えて分解していく。ヒット記事の再現性を分解していく。PVの拡散性、記事に接触した人がどういう行動を取るかというところまで落とし込んでいく。

後藤さん:エモを足し算
企業の話って上辺だけの内容しか聞けない側面がある。インタビューで「いい話は?」と聞くと面白くない。「どれだけ苦労した?」などの感情を揺さぶる部分をいかに引き出せるか?タイトルも、なるべく平易な言葉を使わない。

Q永遠課題、タイトル問題

初瀬川さん:量の表現、アイコン的固有名詞
【量の表現】
→タイトルを見て読者は内容を判断している。タイトルの中に読了メリットを盛り込む。「誰が何をどれくらい?」誰が→その人/何を→その人が語るからメリットが有ること/どれくらい→具体的な量
【アイコン的固有名詞】
→その人が語ったからこそ意味がある固有名詞。本人が日常的に使っている言葉だけど、その仕事の世界観を表現する言葉など。

後藤さん:朝採れ野菜をその日のうちに
朝得たインプットをその日の仕事で使う。
例えば今朝ニュースピックス見てて、タイトルに【謎】って書いてあった。今度やろう。
「とは」を使うな。目がキャッチしない言葉になってるから。

櫛田さん:ネガティブバイアス
ネガティブ表現の方が、人間の本性を言い当てている気がする。
例)営業トップを目指したい→一番下になりたくない 
しかし、ネガティブな表現を使わないで、いかにネガティブな本性を引き出すかを考える。良いことと悪いことを両論併記することもある。タイトルで違和感を感じても、本文の中でフォローする。

林さん:主観を思いっきり出す
ブログ;オンナ31歳生まれてこのかた生理がない
↑がバズった。一般人の話なんて誰も興味ない。これなら、一応同じくらいの歳の人が見てくれるかな。(当事者意識を持たせる工夫)
その他の例)スマホなんかいらねえよ・夏
↑作者に興味なくても、読者が自分ごと化できる。年齢や属性を入れて共感を集める。

Q:ライターへのフィードバック

林さん:いじらない(あんまり)
読者は、見出しとOGP、最初の1段落で引きが良ければずっと読んでくれると思う。なので、修正は基本的に前文しか手を入れない。そこをいじればライターは他を勝手に治すので、「前文直しておいたのであとは自分で修正してください」と伝えて戻す。

初瀬川さん:素人感を残す
はてなならでは。ブロガーさんに寄稿を依頼することが多いので、プロのライターとの付き合い方とはぜんぜん違う。逆にブロガーだから書けるテイストを残さないといけない。正直に言って稚拙に感じても、意図的に残す。読者も、プロの取材記事じゃない情報量や熱量や世界観を求めている。なので、逆に素人感を残してる。これが結構難しい。
プロのライターじゃないので、めちゃくちゃ赤入れして悲しまれたらヤダ。
例)ちっちゃい「っ」が3つならんでる、変なところで改行、顔文字入ってる とか
→自分だったらやらないだろうな、と思うことは残したほうがいいんじゃないか。

後藤さん:フィードバックに強弱をつける
2回FBすることを決めている。1回目は文章の塊に大まかなコメントを入れて戻し、2回目から細かく編集(※デティールはいじらない)。タイトルと小見出しは読者の反応を左右するので、必ずいじる。ただ、クライアントに出す最終原稿はライターに「これで提出しますね」と共有する。
データの結果、読まれてもらってる記事を根拠にライターさんにFBする。

櫛田さん:データで返す
日々の原稿の戻しや振り返りにおいて、データに基いてFBしている。まず、ライターには仕事を依頼する前に必ず対面で説明する。KPIは要するにPVなのだが、それを嫌がるライターもいるので理由を伝える。「こういうロジックでこういうのを目指すからKPIがPVなんです」と伝えて納得してもらう。数字が嫌いなライターさんに対してはPVを文章化する。副次的な高価(拡散とか)も評価する。PV以外はUU、滞在時間、シグナル数などを見てる。ライターにはPVとシグナル数を伝えてFBしてる。
編集者の自分が好きな文章よりも、KPIにつながるものを優先。それがメディア全体として決まっているので、赤入れの際の指針にしている。

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【質疑応答】

Q①インプットはどのように?②注目しているウェブメディアは?

初瀬川さん①はてなブックマークを一日80回くらい見てる。何がホットトピックスなのかをはてブで検索したりして、記事のネタにしていく。
②インフォバーンがやってるキューズっていうメディア
→ウェブメディアの常識をひっくり返す長文記事

櫛田さん
②基本的にはビジネスパーソンに関わる情報を発信しているので、その層が見ているテレビを観ている。情熱大陸やカンブリア宮殿。あとはライターが情報の源泉。ライターの提案を元にして記事化。本屋さんを上から下まで見ていく。真逆の知識を持っている編集長と毎週1時間話して、知識のシャワーを浴びる。
②競合のメディアは毎日チェックしてる。(WEBよりも本が好き)

林さん
①目の前で起きている事象を、言語化するようにしている。「なんで私はこれで怒ってるんだろう?」とか「なんでこれを美しいと思ってるんだろう?」を言語化してiCloudにメモ。毎日クライアントにアウトプットを求められるので、その情報収集のために勉強してる。
②日経新聞。(情報量が圧倒的に多い。新書1、2冊分ある)
あとは2ちゃんまとめとか知恵袋とかを見て、人の感情の勉強をしている。(世の中の人が何に対してどう反応しているのか。でも、本音は下世話な興味があるから)

後藤さん
①なんJスタジアムを毎日みてる。(2チャンネラーで才能溢れてる人多い)
仕事柄、企業のIRをよく見てる

Q文章の良し悪しはどこをみて判断?

後藤さん
文脈で見てる。つながりがおかしい文章は良くない。その文章が一定水準を下回ってたら手は加える。

初瀬川さん
ブロガーにいい文章悪い文章は決まってない。プロの場合は、全体的に「なにか欠けている」と感じてしまったらいい文章ではない。原稿を読んでいった時に、「これってなんだっけ?」と思った時点でいい文章ではない。読者の目で見た時に「これどういう意味?」となったらダメ。

櫛田さん
正直、難しい。ないに等しい。基本以外においては、その人の持ち味なのでそこまで気にしない。インタビュー記事は、オーソドックスに起承転結がちゃんとあるか。(ノウハウ記事はそこまで気にしないけど)取材対象者ならではの「転」がないとダメ。とはいえ、全部盛りの幕の内弁当みたいに「転」を盛り込んでしまうのもNG。(※記憶に残る幕の内弁当はない)

林さん
読んだ人に「無駄な時間だった」と思わせない。そこに気づきがあったり、感情が揺さぶられるのがいい文章。
あとは「、」の場所にこだわっている。声に出して自然に読める位置に「、」する。

Q良い編集者って?

後藤さん
良い編集者は「削る人」。集める時に集めすぎて詰め込んでしまうと、何が伝えたいのか分からない。ワンテーマでちゃんと削りきれることが良い編集者だと思う。

林さん
自分の感覚をらライターに信頼してもらえる編集者。人としての心の機微と、ビジネス感覚の両方を持ち合わせている。

櫛田さん
林さんの言うとおり。編集者は最大の読者であるべき。読者の気持ち、読者目線を見失わない存在であり続けること。
でも、オウンドメディアを運営している以上、ビジネス視点が求められる。「これって何のためにマネタイズするんだっけ?」というのも考える。専門領域じゃないから、とシャットアウトしちゃうと良くない。ビジネス視点を持ちつつ読者目線でいる中で、コンセプトを軌道修正するのも大事。

初瀬川さん
適切な配置ができる人。この企画を、このメディアで、このライターさんに、このカメラマンさんに、このマーケ担当さんにお願いする。という判断が重要。

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答えはなくても共感はある仕事、それが編集者かも

編集に答えはないと思う。
今回のイベントに参加させてもらって、そのことを再認識しました。
でも、「型」はあるなってことも。

まだまだ私が立派な編集者になるまでの道は遠いかもしれないけど、登壇者のみなさんと一緒に「うんうんわかる!」と頷く瞬間はいくつもあった。

ー良い編集者って?

これは、自分がこのお仕事をしている以上、一生問い続けなくちゃいけないと思う。

答えが見つかるときは、もしかしたらこないかもしれない。
でも、編集者としての共感のなかに、そのヒントは少なからず隠れてるなとも思いました。

悩むけど、編集者ってやっぱりたのしい。

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