たねをまくひと

アルデンテって書いてあるのに、パッケージの茹で時間通り麺を茹でる彼女。わざとなのか。
「っつ、ミスった。」
と彼女。ミスだったのね。まあ大丈夫なんじゃないか。と思ってたが、出来上がったパスタを見て、うーんどうだろう。と思っていた。
「カシャ」
インスタント用の写真を撮って、さあ一口。味は食べている本人しかわからないので、彼女の表情を伺った。
「はー。」
冴えない顔で食べ進める彼女。どうやら、見た目通りの味だったらしい。彼女は、料理下手ではない。このパスタも前回食べた時は、
「うまい!」
と言って、いい顔して食べていた。美味しいものを食べたい人だから、結構こだわっていつも料理を作っている。
だが、今回は様子が違う。今回は、今日は、いや、最近は、彼女の様子がおかしい。変だ。元気がないのか、心がないのか、部屋でぼーっとしていることばかり。気合いが感じられない。いつも一人で大声で笑ったり歌ったり、喋ったり。それが少ないのだ。心がないから心のない料理になったのか。
それでも彼女は、私を見つめる。私の後ろにいる太陽を見つめる。今も見つめている。
「なんなんだろう。」
と彼女は言った後、目を閉じ、口角を上げ、
「ふーーーーー」
「はーーーーーーーーーーーー」
と深く深呼吸、再び開かれた目には、私の後ろの太陽が映っていた。

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