雨が降り続く夜に

雨が降り続く夜に
あがったら忘れてしまうような話をひとつ

行動の制限が解かれて
社会全体が以前のような活発さを
急激に取り戻そうとしている今
からだやこころが元のようには動かず
その大きなうねりに飲み込まれそうになっている人たちのことを思っています

差し迫った危機が去ったとて
それなりに長い2年の間に
どこか変わってしまった日常を送る今
皆が皆、元に戻れるわけではなくて

仕事や家庭、地域、一個人として
さまざまな役割を担って充実した毎日を送っていた人ほど
その人らしさにあふれていた日常の一部を失ったまま
身の置きどころ心の拠りどころが
わからなくなっていたりするのではないかと
心配しています

震災の時もそうだった
復興へと社会が動きはじめてから
動けなくて心が傷んでしまった人がいたねと
ひさしぶりに会えた方が話してくれました

いつもまわりを明るくし
危機の中でも踏ん張って
人の心の支えになってきた人ほど
自分の調子を取り戻せず
置いてけぼりになったような心持ちでいるのかもしれない

つい気忙しくしてしまうけれど
今しばらくは歩をゆるめて
いろんな人からこぼれる小さな言葉に耳を傾け
友人知人に一筆したためたいと思います

病の峠を越えたら
いのちが助かったら
危機を脱したら万事解決ではなく
あたらしい今を受け入れて
歩をそろりと進めるには
いくらかの時間とそれなりのパワーが必要だから

雨が降ってはお日様が顔を出す
季節はかならずめぐる
ずっと同じであることはないから
今はうまく動けなくても焦らないで
時に身を委ねてのんびりいこうね