映画刀剣乱舞黎明感想クソ長文(多分厳しめ)

 元々はふせったーに乗せていたのですが、API規制の影響をモロに受けているようなのでnoteに再掲してみます。ふせったーが復活したら下げるかなと思います。


 クソ長文な上にめっちゃネタバレしています。あと厳しめ意見もあるかなと思うのでご了承ください。









以下本文

 今作はニチアサ春映画としては及第点の可、前作の続編としては考えない方が楽しめるのかなという印象。いいところもあるが同じくらいよくないところもある。詰め込めばいいというものではない

※ちょっと厳しめ意見もある長文です。手放しで映画刀剣乱舞黎明面白かった! と思う方は回れ右推奨でござるです。書いている審神者はニチアサ育ちで初期刀山姥切国広です。マジで長いし、まとまりがないのでご容赦を。

 二回鑑賞して、パンフレット・シナリオブック・小説をざーっと読んだ所感です。まだオフィシャルガイドは読めてないので、今後読んだ後やもう一度見た後に追記するかもしれません。

 ざっくりまとめると、
・圧倒的尺不足
・殺陣アクションを魅せたいということや、「こういうのを描きたかった!」というのは分かるが、説明が足りない部分が多すぎる
・大事な情報は本編でちゃんと言おうか
・あれやりたいこれやりたいを詰め込み過ぎて中途半端になってしまっているところも含めて、ニチアサ春映画という感じ
・良いところもあるが、それと同じくらい目につく残念なところも多い
・でも次につなげたいから、あと数回はなんとか見に行きたい

 なんというか、めちゃくちゃニチアサ春映画の趣きだなあと思いました。やりたいことを詰め込み過ぎている感じと、シナリオが雑というよりはシーンとシーンの間に必要な説明が省かれている感じがめちゃくちゃニチアサ感。刀剣乱舞の映画を見に行ったはずなのに、ニチアサの文脈を突然お出しされて、ちょっと面食らったなあというのが正直な印象です。減点方式だと点数低いけど、加点要素もあるので点数のつけ方がなんとも難しいけれども、手放しで良い映画! とはちょっと言えないかなあと思います。

 勿論良いところも沢山あります。流石刀剣男士というべきか、殺陣はめちゃくちゃかっこいい。ばみくんと小烏丸パパのワイヤーアクションもかっこよかった。偉い人たちよりも偉そうな本作長義天正十八年庚寅五月三日ニ九州日向住国広銘打天正十四年七月廿一日小田原参府之時従屋形様被下置也長尾新五郎平朝臣顕長所持くん(以下、山姥切長義くんと表記します)は、これが見たかった―! って感じの俺様何様本科様でした。桜吹雪の中で消えゆく山姥切国広くんはとても儚く美しく切ない表情で、はわわ……となりました。抹茶らてまきあーと気に入っておかわり所望する三日月おじじとか、その前の写真撮影タイムのお茶目な三日月おじじとかは滅茶苦茶可愛かった。冒頭の、一期兄さんとばみくんの夜戦もよかった。遡行軍に蹴りかます堀川国広くんは解釈の一致過ぎて大感謝でした。

 ここが良かったよー! っていう前向きな感想はとりあえずもう一回見て、オフィシャルブックも読んでからかなと思います。良いところばかりではないので、先ずは自分の意見や考察を整理するためにも書き出していきます。

 まず、冒頭の平安京について。小説版を読んでみると、当時の都で疫病が流行っていることや「まつろわぬ民」がいることについて触れられています。茶番が具体的に何を指すのかについても、言及があります。なんで映画ではここ省いちゃったかな?! ワンカットでも都の外の様子が入るだけで、大江山での夜戦の説得力が違ったように思います。
 審神者みんながみんな歴史に強いわけではないので、995年ごろの平安京では疫病が流行り飢饉も起きていたこと、農民だけではなく山に住まう人々がいたこと、その山に住まう人々のことを山人と呼ぶこともあれば「鬼」とされることもあったことを知らない層もいるわけですよ。だからせめて、煌びやかな都の外では……というワンカットは必要だったと思います。

 正直、今作は歴史考証初期値なんだろうなあと思ったのが、藤原道長と安倍晴明の外見年齢……キャスト発表時から感じていたのでここについてはノータッチで。ここについても、めっちゃつっこみたいけども!

 あと多分、今回のキーとなる星太刀が蜘蛛モチーフなのって、大王(天皇)に従わなかった士族たちを土蜘蛛と呼んでいたからかなあと。『平家物語』に妖怪としての蜘蛛が登場していて源氏兄弟とも関わりがあるから、もっと髭膝と絡んでも良かったのでは……という気も。平家物語で頼光が蜘蛛を斬ったときに使ったの、確か膝丸だったと思うので。違ったらすみません。ついでにこのエピソードが能に取り入れられて出来たのが「土蜘蛛」なんですよね、確か。絵巻草紙かなんかで渡辺綱と蜘蛛が一戦交えるやつはあった気がするし、今作に登場する歴史上の人物とも刀とも関わりの深いモチーフなんですよね。ここについても、源氏兄弟から一言くらい台詞があっても良かったんじゃないかなあ……。
 大江山の夜戦についても、腕が切り落とされてゴロンとなる場面がありましたが、あれは酒呑童子とも縁が深い茨木童子と渡辺綱の逸話から来てますよね。実際、斬っていたのも渡辺綱だったようなので。ここは正直、ほう……そう来たかとは思いました。

 今作において「鬼」として登場する酒呑童子ですが、彼についても説明が不足しているなあと思います。鬼と呼ばれる、まつろわぬ民をまとめる若き長であることは察せられます。ただ、酒呑童子が「鬼」に変貌できたのはなぜなのかということについては、もう少し言及すべきだったのではないかなあと思います。
 恐らくは、角の首飾りの付喪神が彼本人とまつろわぬ民たちの負の「念い(おもい)」を吸い上げた結果、「鬼」となったのかなあ……? という予想をすることしか出来ないのですが。酒呑童子も審神者に連なる「物の心を励起させる力」を持っていて、その結果目覚めた首飾りの付喪神が暴走し、それに飲み込まれたのが鬼としての酒呑童子なのだろうな、と……。恐らくは、酒呑童子の生まれ変わりであろう伊吹くんも、審神者に連なる力「物の心を励起させる力」を持っているのだと思います。だからこそ、角の首飾りに宿った付喪神の力が発動したのかなあと。この辺についてはもう少し考察していきたいところです。

 今回の本丸は煌びやかで豪華な感じだったので、単純にもう少し本丸内で待機している第一部隊たちの様子が見たかったなあという気がします。まあ尺的に足りなかったんでしょうけども……。ここは素直に勿体ないなという気がしました。あのカラフルな本丸内で任務振り返ったり、三日月おじじと山姥切国広くんのこと心配したりする第一部隊はもうちょっと見たかった。

 現代パートに入ってからは、こういうの妄想したー! とか二次創作で見たやつだ?! とかこれが見たかった―! っていう場面が結構あったように思えます。しかし、問題なのは物語の展開の仕方ですよねえ。

 まず、何故冒頭の平安京が995年でなければならなかったのか。これはパンフレットで言及されていましたが、琴音ちゃんと伊吹くんは1995年生まれの17歳、冒頭の平安京からちょうど千年後に生まれているんですよね。あのさあ、二人が2012年時点で17歳っていうのはさあ、映画内でちゃんと言えよ?! そこ大事な情報だぞ???? とは思いましたね、はい。小説でも琴音ちゃんが高校二年生であることは書かれていました。何で映画はそこ省いた??? 結構大事な情報だぞ??? つか伊吹くん17歳設定だったんだね、大人っぽいね!

 それからもう一つ大きな問題なのが、記憶を失っている山姥切国広がなぜ大枝息吹くんと行動を共にしているのか、何故彼が仮の主となったのか。このエピソードがすっぽ抜けているということなんですよね。ここについても小説では少し触れられていて、伊吹くんと過ごした数日が山姥切国広くんにとって大切な日々だったことが伺えます。うん、それならさあ、数カットでいいからその場面入れようか?! 山姥切国広くんと伊吹青年がどんな数日を過ごしたのか、そこの詳細を教えてくれ―――――!!!!!! 陰のある美青年と山姥切国広くんが過ごした日々が知りたい、とても知りたい。今後の入場者特典でも円盤特典でもいいから、公式からお出ししてほしい。
 ここの詳細が気になりすぎて、夜しか眠れない。せめて仮の主となった時のエピソードはお出ししてほしい、いやマジで。じゃないと、何であの本丸の山姥切国広という刀が伊吹くんにあんなに寄り添ってくれたのかが分かんないんだよ……。
 
 あと、伊吹くんのフルネームは思い切り酒呑童子と伊吹童子の絡みからきていますよね。大江山は大枝山とも表記されることがあります。伊吹童子と酒呑童子については、近年ですとFGOでもサーヴァントとして実装されていますね。この関係性については諸説あるので、なかなか難しいのですが酒呑童子は「鬼」そのものを指すのに対し、伊吹童子は「酒呑童子が酒呑童子となるまでの物語」という感じでしょうかね。私もあんま詳しくないので上手く言えません。酒呑童子の物語よりも、伊吹童子の物語の方が後年に生まれたものだったような気はします。
 いやでも、伊吹くんのフルネームについてももっと言及があっても良かったんじゃないかと思う。あと、弟の健くんはパッと見普通の名前だけれども、倭建命(ヤマトタケルノミコト)から名前とっているのかな? とも思います。ヤマトタケルノミコトの死のきっかけって確か伊吹山でなんかやったからじゃなかったっけ? 伊吹くんの名前は、そことの絡みもあるのかもしれませんね。この辺もうろ覚えなので間違っていたらすみません。

 健くんのようなものについては、あれは百目がモチーフになっているのかなという感じですね。結構近年に生まれた妖怪で、恐らくは水木しげる御大のオリジナル妖怪ではとも言われていますね。物語から生まれた妖怪とでもいえるのかな、百目は。フォロワーさんに言われて気づきましたけど、何か既視感あるなあと思ったらいのちのかがやきくんですね……。
 琴音ちゃんと伊吹くんにはあれが子供の姿に見えていたようだけれども、実弦ちゃんも子供には見えていなかったっぽいですよね。もしかしたら、審神者に連なる力を持つ二人にしか子供の姿に見えていなかった……? この辺についても、実弦ちゃんにはどう見えているのか伺えるようなセリフがもう少しあるとよかったのではと思います。

 あと、これまた尺の問題なのだろうけれども、仮の主と刀剣男士の場面がもう少し欲しかったなあというところ。実弦ちゃんと長谷部のファーストコンタクトとか、山姥切長義くんと各務さんのファーストコンタクトとか見たかったなあ……。
 琴音ちゃんがメインなので仕方がないとは思うのだけれども、他の仮の主たちも良いキャラクターなので、もう少しエピソードがほしかったなあと思います。なんというか、せっかく良いオリジナルキャラクターなのに勿体ないという印象です。仮とはいえ、主と刀剣男士の関係性を複数同時に見られるのって結構貴重なことだと思うので、活かし切れてないのでは? というあたりが惜しい。やはり尺か、敵は尺なのか。円盤特典でもいいから仮の主たちと刀剣男士のエピソードをくれ!

 地下での作戦会議からラストバトルに繋がる過程で特に思ったのですが、琴音ちゃんは良い子過ぎるんですよね。突然歴史を守る戦いに巻き込まれた女子高生という立場だからなのかもしれませんけれども。しかし、彼女は現代においては異能とも言える力を持っているわけじゃないですか。それで苦労もしているし、嫌な思いもしてきているし、きっと怖い思いをしたこともあったのだと思う。それであれば、あんなにピュアピュアで光属性の子ではなく、伊吹くんほどではなくとももう少し陰があってもよかったのではないかと思う。少なくとも、あの綺麗な言葉で説得できるほど伊吹くんの絶望や哀しみや怒りは軽くない。なんというか、あの説得パートには説得力ねーなあという感じがしなくもなかったです。

 あと、総じて今回説得力があるのは山姥切国広くんの言動と行動ですよね。歴史には残らない者も、また歴史の一つ。それならば、自分は目の前の主を守る、そのために戦う。たとえそれが、本来の自分の役割は異なるものであったとしても。大切なものを守る為に戦う。山姥切国広くんは記憶を失っている状態とはいえ、守るべきもの守りたいもののために戦い寄り添い続けたのは良いなあと思いました。

 酒呑童子の首についてはいろいろなエピソードがあるので省くとして、角の首飾りが三つに割れていたのは、先にちょっと触れた土蜘蛛に関わるのかも? 神武天皇が土蜘蛛を三つに切ったエピソードから来ているのかなー、あの酒呑童子は星太刀も取り込んでいましたしね。

 最後の刀剣男士集結総決戦は、ニチアサ映画特有のクライマックス戦闘感があって熱かったなと素直に思います。だがしかし、脚本がさあ~~~~総じて惜しいんですよな……そこも含めて、めっちゃニチアサ感があるなと。わしはニチアサ版刀剣乱舞を観に来たのだろうか……? と思ってしまいましたね。

 刀剣乱舞のメディアミックスとして、かなり意欲的な作品ではあると思います。だがしかし、刀剣男士とは審神者とはということを現代で描こうとしたのであれば、惜しいところ足りないところが多すぎる。刀剣乱舞が始まる前の物語に位置付けられるので、黎明というタイトルは合っていると思います。殺陣をはじめとするアクションは素晴らしいし、見どころが全くないわけでもない。でも、仮の主と刀剣男士の関係についてはもっとエピソードを加えても良かったと思うし、伊吹くん周りについてももっと描写すべきであったと思います。尺か、尺が足りないのが総ての原因なのか。でもきっと、それだけでもない気はします。

 映画の冒頭でも言っていますよね。「物が語るゆえ、物語」であると。脚本が物語をきちんと描き切れていない部分があるのは否めないので、そこは本当にもうちょっとどうにかならなかったのかなと思います。

 とはいえ、大画面で推しの山姥切国広くんの顔面は何度でも浴びたいので上映中にもう少し見に行きたいなとは思っています。興行収入上がらないと、次にも繋がりませんしね。

 以上。

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