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消失マジック

#心象スナップ  


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 水っぽい初雪を踏みつけて、飛び散ったあとに残る巨人の足跡。水たまりに落ちた小人は溺れてタイムスリップ。取り残された鏡映しのわたしが揺れる。


 傘の先で青空を攪拌。つながらないワームホール、役立たずの魔法の杖。

 百均で買った多肉植物の葉がポロポロ落ちて、ほうっておいたら鉢の隅で根を出していた。ルーペをかざすと見える、葉の端に生まれた小さな芽のようなもの。霧を吹くと水滴が葉にとどまり、いつかの雨が匂う。学校のグラウンドの色に似た、薄茶の土が濃く染まる、学校帰りの狐の嫁入り。足音が聞こえない。

 傘をさして消失マジック。わたしの隣は誰もいません。タネも仕掛けもありません。 
 
 水濡れしたカバンの、不格好に際のついた染みを固く絞った布でトントン叩いてぼかし、雨の匂いを馴染ませていく。トントントン、小人の心臓のような音をさせ、死んだ獣を蘇生する作業。消える染みに心躍らせても死。ミンクオイルで蘇る。何が?

 水たまりを踏んで逆さまに落ちていくジェットコースターは雨上がり限定。ブーツで雪道を歩く。

 花屋の前で、ミイラになった紫陽花をながめている。梅雨の色は失われ、リースに編まれ、リボンで飾られていた。傘に積もった雪が、誰かの傘にあたって落ちる。

 軒下で売られているモミの木に吊るされたサンタクロースは身長五センチだった。鉢を抱えて帰るメリークリスマス。

 サンタクロースは喋らない。


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