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主人公と呼ばないで

<登場人物>
・ミナト 男子高校生
・カコ 女子高校生
・タクヤ 男子高校生
・カイ 男子高校生
・マキ 女子高校生
・女子学生
・男子学生
・女教師
・ミナトの父親(母親可)
・ミナトの弟
・学生1
・学生2
・学生3


舞台に全員板付きが板付き
明転 各自スポット(セリフのときに明転)
女子学生 「あの、突然呼び出してごめんなさい。」
「ずっとずっと前から好きでした。」
「話したことはないけどいつもよく見かけて、眼で追ってるうちに…」
暗転

明転
男子学生 「じゃあ、学校祭の劇の王子役だけど、くじ引きで決めます。」「おーやっぱりミナトか!主人公だもんな。」
暗転

明転
女教師 「なんか困ったことがあれば聞いてね。ミナト君はなんでも背負い込んじゃう癖があるから。この前もいじめを…」
暗転

明転
ミナトの両親 「この前のテストも学年1位だったし、ミナトは本当に何でもできるな。自慢の息子だよ。」
ミナトの弟 「お兄ちゃんいつも遊んでくれるし優しくて大好き。」
暗転

舞台中央にミナトが板付き
明転   ミナトにスポットが当たる

ミナト 「いつもこうだ。話していないのに好きだとか気持ち悪い。」
「やっぱりとか、主人公とかやめろよ。」
「いじめを見過ごす奴らも俺が止めると思い込んでいるやつも、いじめるやつもなんなんだよ。」
「大した勉強しなくても点数は取れる。俺の前で困ってる人が沢山いる。」
「なんなんだよ。みんな俺をほっといてくれよ。俺は、主人公なんかじゃない。もう許してくれよ。」
暗転

教室、放課後、全員板付き
明転
マキ 「ねぇ、今日出た宿題わかんないところがあるんだけど、ミナト教えて?」
ミナト 「んー、どっかむずいところあったっけ?」
タクヤ 「いやいや、今日の宿題はは難しいって先生も言ってたやん。」
カイ 「ミナトは本当に頭いいよな。優しいし。」
ミナト 「あ?聞いてなかったわ。あー、なんか下で揉めてるっぽい。お前ら先生呼んどいて。」
ミナト退場
マキ 「さっすがキミト。二人とは違うね~。」
カイ 「先生、呼びに行く?」
タクヤ「いや、必要ないだろ。どうせミナトに気付いてあの女教師が行くだろ。本っ当に主人公だよな。」
マキ 「だね。」
カイ 「そういえば、マキはミナトのこと好きにならないの?」
マキ 「まさか。私は好きにならないよ!」
カイ 「そっか。」
暗転

体育館裏、学生123、カコ板付き
明転
学生1 「ねぇ、なにしてんの?」
学生2 「ミナトくんに近づくなって言ったよね。」
学生3 「何考えてんの?何回も言わせないで。」
カコ 「ごめんなさい。でも、どうして私だけ…」
学生1 「はぁ、良いから!ミナトくんと話すな!」
ミナト登場
ミナト 「おい、何やってんだよ。」
学生2 「ミ、ミナトくん。」
ミナト 「何してんだって言ってんだよ!3人で1人の女の子を寄ってたかって、かっこ悪い。」
学生3 「ち、違うの、ちょっと喧嘩してただけなの。」
ミナトがカコに近づき手を差し出す。
ミナト 「ねぇ、大丈夫?こいつらほおっておいて行こう。」
学生1 「ミナト君待って!違うの!」
ミナト 「うるせぇ、話しかけんな。」
ミナト、カコ退場
学生1 「カコ連れて行かれたね。あれさ、フラグじゃん。ミナトと付き合う。」
学生2 「ちょ、不謹慎なこと言わないの。」
学生3 「カコとミナトが付き合うとか絶対ないから。そんなことになったら…」
学生1 「どうにかして阻止しないと。」
暗転

タクヤ、マキ、カイ、放課後板付き
明転
タクヤ 「この教室、いじめの現場の体育館裏がよく見えるな。」
マキ「いや、今更でしょ。ミナトが毎月何回いじめを止めに言ってると思ってるの。」
カイ 「でもさ、女の子のいじめってはじめてじゃない?」
マキ 「それは、毎回男子ばっかで…」
ミナト、カコ登場
タクヤ 「ミナト!?あと、その子って…」
カイ、タクヤ、マキが表情を凍らせた。
ミナト 「いや、この子がいじめられてて、つい連れ出してきちゃった。」
マキ 「ちょっと待って、その子連れてくる必要なくない?なんでミナトが連れてくるのさ。」
カイ 「マキ、落ち着け。ミナトはその子助けただけだから。」
タクヤ 「とりあえずその子帰らせようぜ。」
ミナト 「いや、この子さっきまでいじめられてたんだよ?一人になんてできるわけないだろ。」
カイ 「いや、もう高校生だよ。子どもじゃないんだから。」
ミナト 「何かお前らおかしいよ。この子は俺が責任もって家まで送っていくから。」
マキ 「ねぇミナト、なんで?みんなで一緒に帰ろうよ。ね?いつも通り3人でさ。」
ミナト 「お前らもう帰れ。」
タクヤ 「いや、そんな急に…」
ミナト 「帰れって言ってんだよ!」
カイ 「もうだめだ、帰ろう。」
マキ 「待ってよ、でも、カコ!」
カイ、マキ、タクヤ退場
ミナト 「もう怯えなくていいんだよ。みんないなくなったし。」
「名前はなんていうの?」
「大丈夫、俺が守るから。」
カコ 「…カコ。沢村カコ。」
ミナト 「カコね。俺さ、こんな気持ちになったの初めてなんだよね。これも運命だと思うんだよね。」
カコ 「わ、私も、そう思う。」
ミナト 「じゃあ付き合うってことでいい?」
カコは小さく頷いた。
暗転

ミナト(N) 「主人公体質の俺には好きな人なんてものできないと思っていた。でもカコと出会って俺は運命を感じた。出会い方こそテンプレだったものの、このカコへの気持ちは本物だと思える。これこそ運命だ。」

明転
次の日、朝の教室、タクヤ、カコ、マキ、カイ、(学生123)板付き
マキ 「ごめんね。私がもっと近づいていれば。」
タクヤ 「いや、もうここまでかもしれない。これ以上は…。」
カイ 「もう、いいんじゃねぇの?」
マキ 「カコも何考えて…」
ミナト登場
ミナト 「おはよー。」
誰も返事をしない。存在ごと無視。がやがやし続ける教室。
ミナト 「おい、なんで無視するんだよ。なぁ、昨日は少し言い過ぎた。ごめんて。」
ミナトがタクヤに近づく。
ミナト 「なぁ、一緒に体育館で遊んでやっただろ。何やっても俺の方が運がよくてうまくいくことも女子にモテるのも俺だったけど。」
ミナトがマキに近づく。
ミナト 「おい、俺がほかの女にモテるから嫉妬してんのまるわかりだから。でも俺は運命の人に出会ったし、お前みたいなガサツな女興味ないから。」
ミナトがカイに近づく。
ミナト 「お前さぁ、いつもスカしててうぜぇんだよ。マキを好きなのまるわかりなんだよ。俺よりも全部下だもんな。」
ミナトがカコに近づく。カコはひどく怯える。
ミナト 「カコ、お前は俺の運命の人だよね。ふわふわして大人しくて従順そうで本当にかわいい…」
3人でカコを守るようにミナトから引き離す。
マキ 「近づかないで!カコはお前のことなんか!」
カイ 「お前が本当に主人公だとでも思ってんのか?」
タクヤ 「お前、自分に都合の悪いことには目を向けない。何もできないのはお前だろ。」
ミナト 「お前ら、俺のカコから離れろ。カコは俺がいないとだめなんだよ。俺が守ってやらないと。ほら、そんなカスどもから離れて、おいで。」
カコ 「本当に気持ち悪い。」
ミナト 「え、カコ…聞き間違えだよな。俺のカコはそんなこと言わないもんな。」
カコ 「黙れよ!お前のせいで、お前のせいでお兄ちゃんは…お兄ちゃんは死んじゃったんだ!お兄ちゃんはお前より何でもできるかっこいいお兄ちゃんだったのに!」
ミナト 「え?俺はこの世界の主人公だよ?俺に都合の悪いことは起きない。それが普通だもんな。」
カコ 「いい加減思い出せよ。私はか弱くないし、いじめなんかも受けてない。お前が、自分を主人公だってイカれた考えして…この人殺し。」
ミナト 「俺は誰も殺してないよ。あいつが、カコを困らせていたから。少し分からせてやっただけだよ。」
カイ 「最低だな。」
タクヤ 「イカれてる。」
マキ 「気持ち悪い。」
ミナト 「黙れ、黙れ黙れ黙れ!俺は主人公だぞ。俺は、お前らの上に立つ…」
カコ 「死んで。」
暗転

End

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