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松本⇔長野間の高速バスが廃止になるので解説します

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2023年11月11日の信濃毎日新聞にて、高速バスの松本ー長野線が廃止になるとの報道がありました。


個人的な結論から言うと、そりゃ当然だよねと思いました。

それもそのはず、みなさんが松本から長野へ、もしくは長野から松本へ移動する際、どのような手段を取るでしょうか?

もちろんいろんな条件はありますが、多くの方は車(自家用車)と答えるでしょう。その次は電車でしょうか。
高速バスと答える人はもうごくごく少数でしょうね。公共交通機関も慈善事業ではないので利用者が少なければ廃止になるのは当然でしょう。

ならば廃止まで残りわずかではありますが、高速バス松本ー長野線が発足してから今日までを振り返ってみたいと思います。


1.高速道路の開通

今から31年前の1993年3月25日に長野自動車道の豊科(現・安曇野)ICから上信越自動車道の更埴JCTが開通し、長野自動車道が岡谷JCT~更埴JCTまで全線開通となり、松本と長野が高速道路で結ばれるようになりました。
これ以前は、松本と長野を行き来するには国道19号線などの一般道しか電車しか手段はありませんでした。

長野自動車道の開通当時、管轄は日本道路公団(JH)でしたが、2005年10月1日にその日本道路公団は民営化し、安曇野まではNEXCO中日本(中日本高速道路)が、安曇野から以北はNEXCO東日本(東日本高速道路)が管轄するようになりました。
面白いことに、長野が緑色のNEXCO東日本で、松本がオレンジ色のNEXCO中日本になったわけです。

そういえばハイウェイカードなんて懐かしいですね。2005年に廃止されたのですが、2006年に免許を取った私は使ったことがないのです。
廃止の理由は2001年に導入されたETCが普及したのと、ハイウェイカードの不正利用対策でもありました。最高の50,000円券だとオマケで8,000円分ついて58,000円分使えたわけですから、そこへ偽造カードのターゲットになってしまったわけです。

ETCの導入・開発目的は、①料金所渋滞の解消、②キャッシュレス化に よる利便性の向上、③管理費の節減等。 ・ ETCは、①車種や距離によって異なる複雑な料金体系に対応可能、②1 台の車載器で事業主体の異なる複数の有料道路を乗り継ぐことが可能という特徴を具備。

https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/etc/1pdf/3.pdf

もともとETCって料金所の渋滞緩和対策によって導入、普及させてきたのが、いつのまにか高速道路料金の割引を受けるための装置となってしまったように思います。
それを象徴したのが2009年3月から2011年6月まで実施されていた高速道路休日上限1,000円ですよね。このとき、ETC機器の購入が殺到し、品薄になったのを覚えています。ETCの普及が進んだのも間違いないですが、それだけこの施策は大きかったということだったんでしょう。

そんなETCの割引制度も今は縮小傾向にあります。
割引をしないことで本来の目的である渋滞緩和になりつつあり、ある意味ダイナミックプライシングなんですけどね。

話がそれたので元に戻しましょう。

2.高速バスの発足から廃止まで

その1993年の長野自動車道の全線開通により、松本ー長野間でも高速バスが運行されるようになります。
松本バスターミナルと長野県庁を結ぶ路線で、当時はほぼ1時間に1本運行され、運賃は片道950円、往復1,500円でした。
当時、JRだと松本から長野へは片道1,090円、往復2,180円だったため、電車利用よりも安く設定されたのです。
しかし、この高速バスの運賃を受けてJR東日本長野支社は客を取られると思い、松本と長野の往復割引きっぷを発売することになり、高速バスの往復料金より安い1,400円の長野・松本1400いよきっぷを発売したのです。
1,400円の語呂から、とっても安いよというフレーズもありました。

実は、これが今現在発売されている信州往復きっぷの原点でもあります。

ところが、高速バスも電車も、競争相手はバス・電車ではなく車(自家用車)だということに気づいておらず、往復での割引があるにも関わらず利用者は年々減少していきました。
そして、2011年11月からは松本と長野を結ぶ高速バスは土・日・祝日の便が廃止され平日のみの運行になり、さらに2021年からは往復料金が廃止され、現在では開業時から約6割値上げとなる片道1,600円になってしまいました。
松本から長野県庁を結び、主に平日の朝夕しか運行されていないことを考えれば、どういう方が利用されているかがお察しできるかと思います。

長野駅前と長野県庁前の乗場を見てきました。
一方、松本バスターミナルはというと、、

松本側には運行廃止の案内があるのに、長野側には運行廃止の案内がありませんでした。
もう、これでおわかりですね。
そしてたまたま、松本バスターミナルでとある平日の最終20時発の長野行きの高速バスを見かけたのですが、、

誰一人乗っていませんでした。
これでもまだ運行廃止に反対する人などいるのでしょうか。

しかし、どうしても松本ー長野間は高速バスでないとダメなんだという少数派の方は唯一、かろうじて長野と飯田を結ぶみすずハイウェイバスが土・日・祝日も運行しており松本も通ります。
しかし、松本バスターミナル経由ではなく乗場は松本インターとなり、乗り場も違った場所になります。

ただそこまでして高速バスで長野まで往復する人などいないでしょうね。

そんな高速バス松本―長野線も2024年3月末をもって廃止となってしまったわけです。
報道では運転手不足ともありもちろんそれも理由のひとつですが、やはりこれまでの歩みをみればやはりどう考えても利用者数の減少が主な理由だったのでしょう。

3.JR篠ノ井線

先にも書いたとおり、高速バスの松本ー長野線が発足したことで当時1,400円の往復きっぷが発売されましたが、1997年に1,430円、2014年に1,470円、2019年から1,500円と、消費税の引き上げとともに値上げをしてきただけなんですね。なので、JRの運賃の制度上、消費税引上げ以外の理由で運賃の値上げはしてこなかったのです。
信州往復きっぷは現在1,500円です。
2024年時点で、普通に松本・長野間をきっぷで買うと片道1,170円、往復2,340円ですので割引率は約35%引きなのです。かなりおトクなのですが、ただいかんせん高速バスという競合がなくなってしまったことで割引する必要が無くなってしまったんですよね。

そのため、信州往復きっぷが廃止になるのも時間の問題だと思っております。
それか割引率の縮小か、値上げでしょうか。
そもそも 発売期間:2024年3月31日まで となっておりますので、これが更新されなければ来年度の発売が無くなるのです。

廃止になってもおかしくない理由として、現在の篠ノ井線、松本~長野間の普通列車の一部は2両編成のワンマン運転で行われております。つまりそれだけ電車も利用者数が減少しており、JRとしても効率化を進めているわけです。

2両編成のワンマン運転がなんでダメなのと思われるかもしれませんが、週末の日中はそこそこ混むのですよ。。

利用者が減っているのに割引きっぷだけが残ってしまったJR。
さらに言えば来年2025年春から長野駅でもSuicaが使えるようになります。

https://www.jreast.co.jp/press/2023/nagano/20230620_na01.pdf

これによって長野駅までが東京近郊区間になる予定だそうです。
高速バスという競合がなくなり、さらに長野駅でもSuicaが使えるようになるということは、遅くてもこのタイミングで信州往復きっぷの役割も終えるのではないでしょうか。
信州往復きっぷを知っている人なら長野駅でSuicaが使えないと知っている人も多いはずなのですが、未だに長野駅ではSuicaが使えないというのがバズるということは、それだけ電車が利用されていないということの裏返しだと思っています。

松本駅でも長野駅でもこれだけ注意書きがあるのに、未だに長野駅でSuicaが使えないと言ってSNSでバズるのは異常なんですよね。

高速バス松本ー長野線の廃止により、競合が無いのに割引をしているというのは意味がないですし、割引をしておきながら日中はワンマン運転で効率化をしているですから、となると篠ノ井線へSuicaを導入する一方で、往復割引を無くして通常料金に戻すという方向性に舵を切っていくのも決しておかしくない選択肢だと思っています。

余談ですが、松本駅に自動改札機が導入されたのは2006年5月20日で、その時は自動改札機の使い方というパンフレットが配られたくらいの革命が起こったくらいです。そして、Suicaが使えるようになったのは2014年4月1日で、このときに松本が東京近郊区間に入りました。このときもSuicaの使い方というパンフレットが配られましたね。
今考えると笑い話かもしれないのですが、そもそも普段電車に乗らない人からしたら令和になった今でも自動改札機どころかSuicaもそうですし、きっぷの買い方や自動券売機、指定席券売機の使い方もわからないかもしれません。

JR各社は合理化の一環でみどりの窓口を縮小、廃止して自動券売機・指定席券売機への置き換えやインターネットでのきっぷの販売を進めていたり、無人駅にして御用のある方はインターホンで問い合わせるといったことも進んでいます。
コロナ禍で出かけなくなった人がいざ電車を利用するといろんなことが変わっていることに驚かされるかと思います。

4.人口がどんどん減っていく

今後長野県の人口は200万人を切る見込みで、少子高齢化による公共交通機関の利用が減り、さらにバスやタクシーの運転手不足・高齢化が追い打ちをかけ、公共交通機関自体がそもそも存続の危機に立たされています。
それでいて高齢者は免許を返納しろと言われるのですから皮肉なものです。

地元を愛する心はあれど、それとは対照的に人口の少ない集落に住むこと自体がリスクになりつつある時代に入ってきているのではないかと思うのです。




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