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【アートの記録_0014】

ライジングサンロックフェスティバルが終わり、ほとんどの高校球児の夏が終わり、お盆休みが終わり、子どもたちは夏休みの宿題にラストスパートをかけねばならない、夏から秋へのブリッジ時期の切ない季節がやってきました。すでに日が暮れるのが早くなってきた気がします。

久しくライジングサンには行っていないけど、行ってた頃には必ず前後にモエレ沼公園を散策する時間をとっていたので、この時期にはモエレ沼が恋しくなるのです。ああ、夏のモエレ、行きたいなあ。

伊藤隆介の作品と出会ったのは、2017年の札幌国際芸術祭のモエレ沼公園。廃自転車が群をなして山に登るのです。

モエレ山は公園の中で一番高い山です。砂場遊びで砂をプリン型に詰めてポコッと出してつくった山のような、整ったシルエット。その端正な山に、廃自転車が山頂に向かって列を成し、自走しているのです。

実際は走っていないし、地面に金具でしっかりと固定されています。でも、走って見えるんですよね。気持ちよさそうに。

山頂の先頭車両は三輪車。

これは「長征ーすべての山に登れ」という作品。観たときは「わあすごい!大迫力!好き~!」というアホな感想しか出てこなかったのですが、鑑賞ガイドブックによると「安住の地(もしくは持ち主)を探すその様子は、結果的にはおそらく辿り着けないだろうと知っている旅(=人生)のメタファーとなっている」とあります。解説を読むと、先頭が三輪車だった意味が分かる気がします。

普通に考えると自転車では登れない傾斜に、大きな自転車が大量に並ぶ姿は百鬼夜行みたいでちょっと怖い。平地で風が激しいので、自転車たちの周りはビョウビョウ大きな風の音がしますしね。ただ、光さす山頂へ必死に上がっていこうとしている姿に「明日も頑張ろう」「私も頑張ろう」と励まされたのでした。

たまたま観た日が秋晴れの空が青くて風もきれいな日だったから、自転車たちもキラキラ輝いて、廃棄されたものとは思えないくらい生き生きして見えたのかもしれません。

伊藤隆介の作品をほかに観たことがないのですが、この秋には東京・神奈川でもいくつか展示会があるそうなので、チェックしてみようと思います。

【伊藤隆介】ミニチュアのフィギュアやライブビデオ、モーターや視覚装置を用いて、革新的で空想的なメディア風景を創造する映像インスタレーションで知られる。(TOKASクリエイタープロフィールより)http://www.ne.jp/asahi/r/ito/index.html

モエレ沼公園はごみの埋め立て処理場だったところなので、廃棄されたものがたくさん埋まっている山に、廃自転車が登っているわけなのですよ。その時は直観的に「百鬼夜行みたい」と感じたのですが、意外としっくりくるなあと。ずっと昔に埋められたものたちの何かが毎日地面からじわっと生まれて、山頂を目指し、モエレ山の頂上にある敷石から地面の中に戻っていくのかもしれないなあ。朝陽を浴びると自転車の形になるんじゃないかな…という妄想。結構気に入ってます。

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