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【アートの記録_0015】

キスをしている。

実際は接触すらしていないし、
液晶画面が対面して映像を映しているだけなのに。

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エキソニモの「The Kiss」は、2枚の液晶画面に人物の顔を表示し、
液晶画面を向かい合わせにして、上部を40度くらい傾けて設置された
インスタレーション。

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巨大な手が持っている2台の55インチ液晶モニターはスマホのよう。

画面上の口元が映っているだろう部分が重なり、
人物の目元だけが、見える。
映像は様々な人の顔を映すが、瞳は閉じられている。

ただ、目を閉じているだけかもしれないのに、うっとりしているように見える。
キスをするときの顔を傾けるように液晶画面を傾けてあるから、そうみえるのかしら。

脳内でストーリーを補完して、キスをしている、と感じる。
目元だけなのにうっとりしていて幸せそう、とすら感じる。
人間の眼って、脳って、なんと補正機能があるのだろうか。
きっと私たちは画面の人がキスをしていると思いたいのだ。

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こちらは2018年水戸芸術館で観た「ハロー・ワールド ポスト・ヒューマン時代に向けて」の展示。有線時代の私としては、こちらのほうがグッとくる。攻殻機動隊の何かみたい。

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コードというリアルを踏みしめながら、画面に映し出されるリアルかどうかわからないものをみる。

画像を提供したモデルさんたちは、誰とキスして見えているかどうかなど、知らされていないだろうし、
それは、観る人が勝手に合成している妄想なので、それについての責任は環境をセットしたところ(アーティスト)にあるとは言えなさそう。なんかもう、世の中って、今そういう感じだよね…ということを知らされた感じがして、ハッとします。

肖像権がどうかはさておき、勝手に見立ててしまうとか。
そういうのってよくあることだし、これからますます増えると思う。
だけど、素敵な見立てだったら、ハッピーな気分になるよね。
そこに少し自分を貸し出したって、いいような気がするんです。まだ勇気が出ないけど。

ウェブ上に写真を上げたら、どんな形であれ、使われてしまう可能性があるのですが、それを見越しても写真をアップすることの利点があるという判断があるわけで。納得済みとは思うのですが、解釈側がハッピーにとらえられれれば、お互いにとってより一層ハッピーなんじゃないかな、と思いました。

それはそうと、AI同士が恋をした場合のキスって、こんな感じなんですかね?愛情表現とか確認方法はどうなるのかしらん。とか、もわもわ妄想するのも楽しいです。

【エキソニモ】千房けん輔と赤岩やえにより、1996年に結成されたアート・ユニット。インターネット黎明期よりネットそのものを題材に作品を制作・発表。(あいちトリエンナーレサイトより)https://aichitriennale.jp/artwork/A02.html

あいちトリエンナーレはエキソニモを目当てで行ったのだけれども、前回の水戸芸術館の印象が強くて。おお!とはなったけど、もっと違う配置で観たかったなあ…メイン会場のエントランスだし、最高の場所なんだろうけど。もっと混んで人だかりができてたらちょうどよかったのかもしれない。中途半端な平日に行ったせいだな。やっぱりピーク時に観るというのは大事なことだわね、とあらためて認識。

いろいろあって、話題のあいトレ。見られない展示も多かったけど、私はもう一度くらい観に行きたいと思った。豊田市の展示も素敵だったのでどこかのタイミングで記録したいと思います。


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