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【アートの記録_0019】

ポーラ美術館の展示がとても好き。とくに銀座のアネックスは近くを通れば必ず立ち寄るほど好き。

そもそもポーラにはいい印象しかない。まじめなモノづくりをしていてお高いけどいい商品だし、90歳を超えるビューティアドバイザーが現役で営業していて尊敬を集めているところとかも好き。10年以上前に取材で研究所にお邪魔したときも研究員の方が楽しそうに仕事について話してらっしゃるのが印象的だったし、吉祥寺のハモニカ横丁で飲んでいた時に隣の席で豪快に飲んでいらっしゃった80代の現役BAさんは熱海と吉祥寺の2拠点暮らしでバリバリ働いて楽しそうだった。その時は肌荒れと化粧の下手さにダメ出しされたんだっけ。うっかりこの人からなら高級クリームを買ってもいいかと思わせる話術と人柄だった。

前置きが長くなったけど、そんなポーラ美術館関連の記憶はたくさんあって、ジャンジャン記録していかないと忘却のスピードに飲まれてしまう。次に心が動いたときに、とか、季節に合わせて、などと言っていると私の頭は勝手に脳内の箪笥の奥のほうに押し込んでしまうのである。まあ、そういう普段は使わない過去の記憶を掘り出して陰干しするのも楽しいのだけれど。

さて、これは2017年の高橋美歌個展「あなたに続く森」。ガラス作品で菌や細胞をモチーフに「いのち」を扱ってきた作家の、色のない、透明で幻想的な空間だった。

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手のひらに入るサイズのものから、ずっしりと重く大きな作品まで、どれも透き通って清らかで、光を浴びるとその重さが感じられないくらい儚くみえた。

“本展『あなたに続く森』では、植物のライフサイクルをモチーフに、目に見えない生命の「繋がり」をガラスのオブジェと光を組み合わせたダイナミックなインスタレーションとして展開します。地球上の生命体は、生と死のサイクルを繰り返し、何億年という時を経て、今の私たちへと繋がっています。その神秘的な生命の生成プロセスとカタチを植物の細胞というミクロの世界で表現します。人々はガラスの森という瞑想の世界に入ることで、そこにひっそりと佇む、目に見えないものの息吹を感じとることができます。“(ポーラミュージアムアネックスサイトより)

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菌糸が次の命を目指して手を伸ばしているようなこの作品は、タンポポの綿毛のようにも見えるし、流れ星のようにも見える。影まで美しい。そして怖い。美しく侵略されるのかと思うと、先端のイガイガがめり込んでくるかと思うと恐ろしい。

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イガイガしたウイルスのような粒々が、光を浴びてキラキラ輝く。それぞれが乱反射して、予測できない輝き方をする。体育館の緞帳の隙間から光が漏れて、埃がキラキラ舞っているのに見惚れてた小学生の自分を思い出す。

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ホルマリン漬けの動物とか、臓器とか、きれいだったな。こんな複雑なものが自分の中にもあるなんて。

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”  あなたに続く森
   外の世界がどんな風に聞こえても
   心の中はいつも自由に
   光の糸で愛情を織っていく事が出来る
   遠い昔に生命が始まって
   何度も変化を繰り返し
   いくつもの種を受け継いで
   今ここに生を頂きました
   そうしてあなたに出会えた喜びを
   どうやって伝える事が出来るでしょう?  ”

作家のことばも美しい。

光の糸が明日へ、次の命へ伸びあがっていくかのような、最後の写真の作品が一番心に残った。展示会で観たときには、つくしのように突起した部分にフォーカスをあてていた気がするけど、改めて見ると、それを支えるネットワークのような、根の張り具合の分厚さに目が行く。命の強さは根の広がりなのかもしれないな、と思った。

【青木美歌】粘菌、バクテリア、ウイルス、細胞といった目に見えない「生命の有りよう」をテーマに、ガラスを素材にした作品を発表。2008年第11回 岡本太郎現代美術展入選、2010年SICFグランプリ(青山スパイラル)。


ポーラミュージアムアネックスでの展示:https://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/archive/detail_201701.html

アートの記録、まだ20にも満たない状態。正直いうと、まじめに1000日チャレンジをしている皆さんとの差が開きすぎて焦ってます。比べてもしょうがないんだけど。回数を重ねることで気づくこともあるから記録の数は大事で、もうすでに3周回くらい遅れているので、気づきの機会も皆さんの1/3なんだよね、とか。書くのが遅いとか何回か自分が触れた後がいいとか、いろんな理由があるのだけれど、まずは書き出してみなくちゃ、と思う。あとから追記すればいいしね。(実際ものすごく細かく、繰り返し修正している)

人に読んでもらうための記録だったら、最初の5行くらいで誰のどんな作品についての記録か書くべきだとか、文体が混じってて気持ち悪いとか、気づいているけど、自分のための記録だから、今のところは書きやすいように書く。100超えたら少し考えればいい。そう言い聞かす。

ポーラだし、天気もいいからポラリスの太平洋を聞きながら書く。連休最後の日、いい日になりそうな予感がする。






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