Suicaと友達

Suicaと友達

わたしの実家の最寄駅は、Suicaが使えなかった。
田舎すぎるわけでもないのだが、有人であるからこそ、切符だったのである。
特にそれに不便は感じていなかったし、定期券で通っていたので、関係はなかった。
就職して、Suica等使うようになったのだが、これがめちゃくちゃ便利でビックリする。小銭を取り出す手間がないし、切符の取り忘れもない。
地元に帰ると切符をタッチしそうになったり、カードを入れようとしたりして混乱する。
切符には切符の良さがある。なんとなく、電車に乗る、移動する、ということのきっかけのように見える。わたしはいま、どこかに向かっている、という、気付薬みたいだ。

Suicaを手に入れる前と後でできた友達づきあいが、どことなく違う気がする。
就職して出会った友達は、フットワークが軽くて、なんとなく、付き合いもラフな気がする。深い話になることもそんなになく、楽しいを共有してくれる感じだ。
逆に、地元にいた頃、特に定期を使っていた時期の友達は、悪いこともいいことも、一緒くたになったような感じがする。単に付き合いが長いからかもしれない。
もっとも小説を書く、なにかを作る、という人があふれていた時期だから、不便でもとても馴染んでいたのだろう。
早く地元にSuicaが導入されてほしい。
感傷を覚えて、無駄に比較をしてしまう。良さも悪さも早く混じって、あたらしく、わたしの知らない土地になってほしい。

友達と会いたい。切符でもSuicaでもどっちでもいいから、会いに行ける時間だけほしい。Suicaのあの子も、チャージしたりして、切符のあの子も、買い足したりして、きっと知らないことがある。話したい。そういうことを話せる人でありたい。

今回はここまで。

#しおの雑文庫 #エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?