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【エッセイ】一人スタンド・バイ・ミー未満


海をみたいと思った。
先日書いたように無職になったわけだが、本当にやる気が出ずに何にもしないでいた。小説は書いたが。(noteで200円で公開中です)
しかも1週間外に出なかったので、1日の歩いた歩数が44歩とかとんでもなく貧弱な数字をみてしまった。

どうやら多くの人間は自分の人生と向き合わなければならないらしい。
そしてそれは私もらしい。

ひどいことだ。人生とは苦痛でしかないのか。
親は心配して色々と「ここどう?」みたいに言ってくれる。かまってもらえるすうちが華。そうだと思う。自由に生きたい。

夜は色々と考え込んでしまい、色々決めて「ヨシ!」となるのだが、朝起きると全部忘れているし億劫になる。

コロナ禍ではあるが、少しは歩かなければならない。

夕方どきに、海を目指した。
自転車がないので歩きで目指した。

夕暮れから夜になるのは早く、工業地帯を歩いていたのでめちゃくちゃに歩道が暗かった。

電線路が格好良かった。普段、全然足を伸ばさない場所で、全く知らない場所で、一人で歩いた。

スタンドバイミーを最近観た。
色々抱えている悪ガキたちが死体を見つけてヒーローになるため、線路をずっと歩いていく話だ。

進むべき場所や出来事は、昨今の展開に比べればとても小さなことだ。(列車には轢かれかけているが)

少年たちのサブストーリーを絡めるのがとてもうまくて、シンプルかつ、感動を覚える作品だった。

わたしも、死体を見つけに行こうとしているのだろう。

海が好きだ。
昔から、小説の場面に海を書くことが多かった。
家族旅行で毎年海に行っていた。親は共働きで忙しく、県内旅行がほとんどで、旅行といえば海、と定着していた。そして出不精なわたしにとっては、その海が非日常だった。
広い海。旅館の料理、温泉、土産屋、ロビーで流れるディズニー映画。夜のさざなみが見える部屋。
全て好きだった。

工業地帯の海も好きだ。なんだかよくわからない人工的な雰囲気。ここからが人間の場所。海は未開。そんな雰囲気が好きだ。

人に連れていってもらってばかりだから、少しは自分でいかねばなるまい。

海を目指してひたすら歩いた。もう当たりは真っ暗で、スマートフォンの明かりを頼りに歩いた。
秋の虫の声が鳴り響いていた。
葉のざわめきが聞こえた。

大学時代も、こんなことをした記憶がある。
わたしの通っていた大学は山の上にあった。
ルックバックでも出てきた芸工大だ。

ある夕方、大学から町まで、1時間くらいかかけて歩いた。そんなにかかっただろうか、あんまり覚えてはいないが、とにかく長い距離を歩いた。

その時も、悩みがあった時だったように思う。
サークルの人間関係とか、卒制とか、そういうものだった気がする。

スタンドバイミーとその時ちゃんと出会っていたのなら、わたしはもう少し大人になっていたかもしれない。

あの時の気持ちがよみがえっては、少しセンチメンタルになりながら歩いた。
もしも、もっと頑張っていたら、もっと真剣に先のことを考えられていたら、なんて少し考えつつ、創作のことに気を取られたりした。

あと10分くらい歩けば、というところで、キツくなってきた。体力なしにはツライ。
しかも夜も遅いし。暗いし怖いし。

それでももうすぐ海が見えるのかな、と悩みながら歩いた。
もうすぐ。
もうすぐ。
もうすぐ。

そう思ってたどり着いたのは、行き止まりのカーブ地点だ。

歩道はないし、道路しかない。
海がありそうなところには柵があって進めなかった。わたしは目が悪いうえに、夜目がきかないので、ただの行き止まりにしか見えない。
もう少し奥へ行けばいいのだろうか。でもなんかの敷地っぽいな……と思うと、まごついて進めなかった。

結局Uターンし、わたしは帰ることにした。

スタンドバイミー、ならず。

人生かよ、と思った。
金塊目前で諦める画像を思い出した。

海が見たかった。

ただ、海を見たかっただけだ。

帰り際に夕食をテイクアウトした。

人生、と考える。
絶望も希望もない。
ただ、知らないことを知ってみるというだけかもしれない。
その手間が異常にかかるだけなのだ。

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