コーヒーと風船

コーヒーと風船

コーヒーが好きだ。最近カフェインにめっぽう弱くなったか、3杯分も飲めば眠れなくなってしまった。それでもコーヒーは好きだ。香ばしくて苦い。
就職したくないなあと思った時、じゃあ何ならばできるのだろうと思っていた。ただ自由気ままに生きたい。何にも縛られずに。それには、周りの環境がかなり整っていないと、難しいということ、気づかざるを得なかったが。
コーヒーと風船を売り歩く、ワゴンカーの怪しい女にでもなればよかった。
ミルでちゃんと豆を挽いて、好きな風船をサービスであげる。夢の一部のような、ヤバイ仕事に就いてみたかった。すればいいじゃん、というじゃないか。無理なんだなあ。そんな勇気はない。せいぜい小説に登場させるに精一杯なのだ。
そもそもミルで豆を挽いたことはない。いつもインスタントである。こだわりがないのである。だめだあ。
風船はヘリウムガスが入った、浮くタイプがいい。バルーンアートができるのなら最高だが、ただの丸い風船も好きだ。
私は風船が、遠くへ飛んでいってしまう姿が好きだ。売れ残ったら暮れかけの空へ、すべて風船を飛ばしてしまおう。一番星に向かって飛んでいく色とりどりの風船たち。美しいと思う。
幸せとは遠くにあるから幸せなのだ。よくわかる。わたしはそれが好きだ。手元にある幸せ、それと比べ物にならない幸せ。
かかえきれない愛のようなものに埋もれて生活できたのなら、きっと幸せに溶けてしまうだろう。わたしはそういうのは、照れてしまうので一生浸ることはできないかもしれない。でもいつかそうなるかもしれない。幸せということを知りたい。赤い風船の中に、コーヒーの湯気の中にあるのだろう、そういうものだと、思いたい。

今回はここまで。
#しおの雑文庫 #エッセイ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?