GOST MARRIAGE(0:1:1)

(目安:20分)

◇登場人物
立花美沙:
悪魔/男:



美沙:こんにちは!
美沙:私、立花美沙っていいます。
美沙:先日、結婚相談所へ行ったのですが
美沙:どうもどの人もピンと来なくて・・・
美沙:私の相手へ求めるハードルはかなり低いと思ってます。
美沙:身長制限なし!共働き可!!
美沙:年収もこだわりがなく趣味にも口は出しません。
美沙:では、私が何にそんなにこだわっているか!
美沙:条件はただ一つ!!!
美沙:イケメンか!否か!!
美沙:こんなにハードルが低いのに
美沙:未だに結婚相手が見つかりません。
美沙:あーあ、私このまま一生独身なのかなぁ・・・。
美沙:そんなことを思いながら帰宅する途中
美沙:公園の階段ですれ違う時に誰かに肩を押されました。
美沙:あ・・・
美沙:やばい、そう思った時には既に遅く
美沙:私は死んでしまいました。
美沙:最期に見たのは私を押したであろう
美沙:知らない男の顔でした。
 :
 :(間)
 :
美沙:そんなわけで今に至ります!
美沙:ねぇ、悪魔さん!
悪魔:な、なんだい。
美沙:私ね、あの時の彼の顔が
美沙:頭から離れないの!!
美沙:きっとこれが恋なのね!!!
悪魔:え?
美沙:あのね、私彼と結婚するわ!!
悪魔:は!!!??
美沙:きっと彼が運命の人なんだわ!!
悪魔:いや、でも君はもう死んでて・・・。
美沙:それは知ってるわ!!
美沙:でも、この私の
美沙:死んでも死にきれない!って思いに呼ばれて
美沙:ここにきたんでしょ?
悪魔:いや、まったくもってその通りなんだけど
悪魔:なんだい、
悪魔:君は冥婚でもするつもりかい?
美沙:冥婚?
悪魔:・・・あ。
美沙:ねぇ、その冥婚ってなんなのよ。
悪魔:はぁ・・・。
悪魔:生者と死者が結婚することさ。
悪魔:古くは神話でも語られていてね
悪魔:ギリシア神話では
悪魔:冥界の女王ペルセポネと生者ペイリトオスの話が。
悪魔:古代エジプトでは
悪魔:太陽神オシリスと女神イシスの話が有名だね。
悪魔:しかも彼らは死後の世界で結婚して
悪魔:一子ホルスをもうけている。
美沙:子どもまでできたの?
悪魔:そうさ。
悪魔:ただし、これは神だからできることだ。
悪魔:人の身では子どもは無理だね。
美沙:そっか。
美沙:でも結婚して寄り添うことは
美沙:人間でもできるのよね?
悪魔:え、あ、うん。
美沙:なら何の問題もないわ。
悪魔:君のその結婚に対するこだわりはなんなんだい。
悪魔:こんな人間初めてだよ。
悪魔:だいたいの人間は生き返りたいと願ったり
悪魔:もっと欲の限りの願い事をするのに。
悪魔:君の願いは何だった?
美沙:私を殺したあの人と結婚がしたい!
悪魔:これだもんなぁ。
悪魔:生き返って彼と結婚したいとは思わないの?
美沙:あ、別に私は生き返らなくてもいいの。
美沙:生き返ると仕事に行かなくちゃいけなくなるし。
悪魔:あ、そう。
美沙:で、どうすればいいの?
悪魔:この赤い封筒にお金を入れておく。
悪魔:で、そいつが拾うまで放置。
美沙:え、それだけ?
悪魔:それだけ。
悪魔:本来は死んだ人間の親族が行うことなんだ。
悪魔:赤い封筒をその辺に置いておく。
悪魔:で、それを拾った人を囲んで結婚するように迫るんだ。
悪魔:ただし今回はその役は僕がやろう。
美沙:え、いいの?
悪魔:もちろん。
悪魔:ただし相手との結婚が成立した際
悪魔:君たちの魂は僕がもらい受ける。
悪魔:それでもいいかい?
美沙:それはそのあとも彼と一緒にいられる?
悪魔:君が望むなら。
美沙:じゃあ、交渉成立!
悪魔:いいのかい?僕が君たちの魂をどう扱うかわからないんだよ?
美沙:こうみえても私は一途なの。彼と一緒にいられるのなら私はかまわないわ。
悪魔:え、あ、はい。まぁ君がそれでいいのなら、僕としては都合がいいからいいんだけど。
美沙:そんなことしてる間に彼が来ちゃったわよ、早く拾わせましょ!!
悪魔:ではこの赤い封筒をこのあたりに置いておきます!ほら、隠れて!
美沙:え、えぇ。
 :
 :
0:木の陰
美沙:(小声)ねぇ、思ったんだけどどうせ彼からは見えないんでしょう?
美沙:なら隠れる必要ないんじゃない?
悪魔:(小声)こういうのは気分が大事なんだよ!
悪魔:あ、ほら来るよ!
 :
 :
男:・・・。
 :
0:男、素通り
 :
美沙:ちょっとぉ!!!!素通りしちゃったわよ!!
悪魔:えぇ・・・。あの男好奇心どこに落としてきたの??
美沙:この封筒ちゃんと人間に見えてるんでしょうね!
悪魔:もちろんだよ!なんならお金だってほら!!!
美沙:偽札じゃないの!?
悪魔:本物だよ!
美沙:そういえばそのお金どうしたのよ?
悪魔:自力で働いた僕のお金だよ。
悪魔:こう見えて僕、昔は人間だったんだよね!
美沙:ふーん。
美沙:・・・ん、百円札?
悪魔:え、なにかおかしい?
美沙:百円札ってあんたいつの時代の人間よ!
悪魔:えー、今の人間は百円札つかわないの!?
美沙:使わないわよ!廃止されてからもう60年は経ってるわよ!
悪魔:そんなぁ。
美沙:明日までにちゃんと現代のお金を用意すること!
美沙:さぁ、新しい作戦を考えるわよ!!
 :
 :
悪魔:次の日
 :
美沙:というわけで考えたわけよ!
悪魔:なんでしょうか。
美沙:封筒配って。
悪魔:は?
美沙:ほら、ティッシュ配りみたいな感じでクーポンもつけて。
悪魔:ティッシュ配り?クーポン?
美沙:そう!日本人は差し出されたものを断りずらい民族なのよ。
美沙:それにつけ込む!
悪魔:つけこむって・・・。
美沙:封筒は何枚ある?
悪魔:と、とりあえず十枚くらい、もっと欲しいなら出すけど。
美沙:とりあえずそれくらいでいいわ。
美沙:中にお金を入れて・・・。あ、ちゃんと現代のお金を入れてよね!
悪魔:わかってるよ。ちゃんと用意した。
美沙:うん、それでよろしい。
美沙:よし、じゃあ行ってこい!!
悪魔:えぇ・・・。
美沙:大丈夫!彼の手元の高さに出して
美沙:笑顔でよろしくお願いします!って出しとけば受け取ってくれるわよ!
悪魔:やけに具体的だね。
美沙:まぁ、昔ティッシュ配りのバイトをしてたこともあったからね。
美沙:ほら、そろそろ来る時間じゃない?頼んだわよ。
 : 
 :
0:男、公園を通る
悪魔:ょ、よろしくお願いしまーす!
悪魔:お得なクーポン付です、よろしくおねがいしまぁす!
 :
 :(間)
 :
悪魔:ダメだったよ!!!??
美沙:完全に受け取らない姿勢だったわね。
悪魔:僕、ティッシュ配りっていうの苦手だ。胃がねじ切れるかと思った。
美沙:悪魔のくせに情けないわね。
悪魔:う、うるさい!こういうのは得手不得手があるんだ!
美沙:そうですか。
美沙:そういえば昨日さ、あなた元人間だって言ってたじゃない?
悪魔:あぁ、うん。そうだよ。
美沙:どうして悪魔として働いてるの?死んだあとは輪廻転生?だっけ?
美沙:たしかまた何かに生まれ変わるんじゃなかった?
悪魔:通常はそうなんだけど僕の場合はちょっと違うんだよ。
美沙:違うって何が?
悪魔:僕のところも冥婚だからさ。
悪魔:だから、君の気持ちはよくわかる。
悪魔:僕の魂は彼女が満足するまで開放されることはない。
悪魔:まぁ、僕も彼女のこと愛しているからいつまでも老いることも死ぬこともない
悪魔:ずっと一緒にいられる今の状況は気に入ってるんだけどね。
美沙:へー、なんか素敵ね。
美沙:私も頑張らなくちゃ。
美沙:まぁまずは彼に封筒を拾わせなくちゃなのよね。とりあえず明日までに新しい作戦を考えてみるわ。
 : 
悪魔:次の日
 :
美沙:さて、今日の作戦はこうよ!
悪魔:どうするつもり?
美沙:普通に封筒が落ちてても昨日の彼みたいに拾おうとする人間は少ないわ!
美沙:ならどうするのか!こうする!
0:美沙、どこからかマジックペンを取り出し封筒に文字を書く
悪魔:「拾ってください」?
美沙:そうよ!人はお願いされると断れない生き物よ!きっと彼は拾うわ!
悪魔:そううまくいくかな?
美沙:いくわよ!それに彼は私の運命の人よ、私には何でもお見通しよ!
悪魔:えー・・・。
美沙:ほら来たわよ、置いてきて。
悪魔:うまくいくとは思えないけどなぁ。
美沙:いいから早く!
悪魔:わかったよ、もう。悪魔使いが荒いんだから。
悪魔:・・・ほら、置いたよー!
美沙:早く戻ってきて!!
悪魔:はいはい、どうせ人間からは見えないんだから焦らせないでほしいんだけどなぁ。
美沙:いいからさっさと戻ってくる!
悪魔:はーい。
 :
 :
 :
0:木の陰
美沙:(小声)今回のは自信あるのよ!
悪魔:(小声)そううまくいくかな。
美沙:(小声)いくわよ、なんたって私の作戦なんだもの。
 :
 :
男:ん?なにこれ「拾ってください」?
男:変なの。Twitterに載せよ。
男:・・・よし。
 :
0:男、去る
 :
 :
美沙:はー!!??なんで持って帰らないわけ!?
悪魔:いや、結果は最初からわかってたというか。
美沙:なによ!私の運命の人なんだからちゃんと持って帰ってよ!!
悪魔:横暴が過ぎるよ。
美沙:ふっ、面白い男。いいわ、絶対に私の旦那にしてみせる。
悪魔:っていうかさ、なんでそんなにあの男にこだわるの?
美沙:なんでって?それは彼の顔がいつまでも私の頭から離れないから。
悪魔:あ、いやそれは聞いたんだけどさ。
悪魔:君は容姿が整っていればあとは不問なんだろう。
悪魔:だったら他の人間でもいいんじゃない?
悪魔:ほら、例えばあそこを歩いてる男とか!
美沙:・・・もしかしてめんどくさく感じてない?
悪魔:そ、そんなことないよ!
美沙:ふーん、ならいいけど。
美沙:私ね、子どもの頃からずっとブスっていじめられてきたの。
美沙:だから自分に自信が持てなくて。でも自分にできることをしようと思ってメイクやファッションをたくさん研究した。
美沙:でもダメだった。私の子どもの頃を知ってる人がね、私の好きになった人みんなに私の昔の容姿をばらすの。
美沙:そしたらみんな口をそろえてこう言うの。こっちに寄るな、ブス。どうせ整形でもしたんだろって。
美沙:そんなに言うんだったらって整形して、私のことを知ってる人がいないここに引っ越してきた。
美沙:世界が変わったわ。みんな私のことちやほやしてくれるんだもの。
美沙:やっぱり世の中顔が全てなんだって思った。
美沙:だからね、せめて生まれてくる私の子どもには私みたいなこんな思いしてほしくないの。
美沙:だったら、私がちゃんとイケメンを探さなきゃって。
美沙:彼はとても顔がいい。彼のことを思うとドキドキするの。
美沙:こんな気持ちは久しぶり。きっと私は彼のことが好きなのよ!
美沙:大変だしめんどくさいお願いをしてあなたには申し訳ないと思ってる。
美沙:ま、たとえ思っていたとしても最後まで付き合ってもらうけどね!
悪魔:え!?
美沙:なによ、不満?もともとそういう契約でしょ。
美沙:持ち掛けてきたあなたから反古にするのはなしよ?
悪魔:うぅ、わかってるよぅ。
美沙:さぁ、そうと決まれば次の作戦なんだけど・・・
 :
 :
悪魔:次の日
 :
美沙:さぁ、今日こそ拾ってもらうわよ!
悪魔:うぅ、あの作戦ほんとにうまくいくのかな。
美沙:うまくいく、いかないじゃないの。うまくいかせるの、いい?
悪魔:・・・はい。
美沙:よし、行ってこい。
悪魔:・・・(ため息)なんでこんなにいいように使われてるんだろう。
0:悪魔、人間の姿になる
悪魔:よし、人間の姿はこれでいいかな。さてと。
 :
男:あぁ、くそっ!あとちょっとで勝ったのによぉ。あーあ、金がどっかから降って湧いてこねぇかなぁ。
0:男の少し先を悪魔が歩いている
0:悪魔のポケットからパラリと赤い封筒が落ちる
男:ん?あ、おい。なんか落としたぞ。・・・ってあれ?いない。
男:赤い封筒。そういえばフォロワーがなんか言ってたな。
男:なんだっけ、この封筒の中には金が入ってて受け取ったら死者と結婚しなきゃいけない、だっけか?
男:そんなことあるわけ・・・ッ、金だ。帯付き・・・100万入ってる。。
男:これだけあれば・・・、それどころか倍に増やして借金を返すことだって・・・。
男:ははは、よおし!!!!
 :
 :
美沙:え、もしかしてうまくいった?
悪魔:あぁ、うまくいった。ここからは僕の仕事だ。
 :
悪魔:(間)
悪魔:やぁ、こんばんわ。この度は結納金を受け取っていただきありがとうございます。
悪魔:・・・おや、身に覚えはないですか?
悪魔:ふふっ、そんなはずはありませんよね。拾いましたよね、赤い封筒。
悪魔:使いましたよね、中に入っていた100万円。
悪魔:あぁ、返していただかなくて大丈夫ですよ。返せるあてもないでしょう??
悪魔:あのお金はあなたに恋い焦がれた女性が己の魂を私に売って作ったお金です。
悪魔:彼女の気持ち受け取ってあげてくださいよ。
悪魔:・・・あなたをどうするつもりか、ですか?
悪魔:彼女と結婚してあげてください。簡単でしょう?それだけでいいんです。
悪魔:・・・では、婚姻成立ですね。
悪魔:美沙さんプロポーズ成功ですよ、よかったですね。
美沙:あぁ、嬉しい。私、彼と結婚できるのね。
悪魔:えぇ、そうですよ。よかったですね。
0:首があらぬ方向に曲がった美沙が木の陰から出てくる
美沙:改めてこんにちは!私、立花美沙って言います!
美沙:あなたとは、あなたに階段から突き落とされて殺されたとき以来ですね。
美沙:私あれ以来あなたのことが頭から離れなくて・・・。
美沙:あぁ、謝らないで。私恨んでなんかいないわ。
美沙:あなたに殺されたおかげで、私はあなたと巡り合うことができたんだもの。
美沙:私とあなたは夫婦になった。
美沙:辞める時も健やかなるときもいつまでもあなたのことを愛すると誓うわ。
美沙:悪魔さん、本当にありがとう。
悪魔:ふふふ、おめでとう。
悪魔:とってもお似合いの夫婦だよ。
悪魔:さぁ、願いは叶ったんだ。
悪魔:君たちの魂をいただくよ。
美沙:えぇ、どうぞ。
美沙:これからは私たち悪魔さんのもとでいつまでも永遠に一緒にいられるのよ。
美沙:ふふふ、あはははははははは。
 :
男:嫌だ、やめろ、来るな!来るな!!来るなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

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