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【コメティック編】 嘘ライブ『曖昧な合間』ライブレポート & 新曲インタビュー(4,472字)



ライブレポート


 前頁でシーズについて触れたが、コメティックのメンバー、斑鳩ルカはかつて緋田美琴と活動していた。2人のパートナーシップは解消され、緋田は283プロダクションでアイドル活動を開始。一方、斑鳩ルカはソロでのキャリアを続けていた。様々な憶測はあるものの、ここでは触れない。斑鳩が283プロに加入したことから、彼女たちの関係性に関わる問題ではなかったことを願う。

 とはいえ、ソロでの活動で既に人気を博していた斑鳩が、シーズにおいて、緋田が素人である七草にちかとユニットを結成したのと同じように、ノンキャリアの鈴木羽那と郁田はるきを引き連れ、コメティックとして再デビューしたのには、何か特別な狙いがあるのではないか。

 先述した緋田と七草にちかのユニット・シーズの結成が意外な化学反応を生んだように、斑鳩と新メンバーの組み合わせもまた、新たな魅力を生み出す可能性がある。各事務所やメンバー自身にとって、この新しいステップが良い影響をもたらすことを期待している。

 さて、パフォーマンスの話をしよう。ソロ活動中の斑鳩は、自身の内に溜め込んだ怒りや苛立ちを、まるで天高く吐き捨てるかのような激しさが特徴的だった。一方で、放出された感情は反動として降り注ぎ、彼女自身を傷つけていったようにも思える。まさに、「呪い」と「呪詛返し」を1人で行なっているかのような斑鳩のスタイルは、迷える若者たちの間に浸透し、熱狂的なファンを多く産んでいた。

 打って変わって、今回のライブで目の当たりにしたコメティックとしての斑鳩は、鈴木・郁田とともに、見事な調和を見せていた。新人アイドルとは思えないほど肝の座った鈴木と郁田は、斑鳩テイストの真っ黒な衣装を見事に着こなし、斑鳩の圧倒的なカリスマ性を前に、負けず劣らずの存在感を放っていた。

 鈴木・郁田の2人は、斑鳩とは異なり、たとえばイルミネーションスターズのような柔らかな衣装でも自然に映りそうな雰囲気を持っており、柔和なスタイルにも適応しそうな印象を受けた。

 しかし、ライブが始まると、2人のふわっとした印象は一変し、斑鳩と同様に、はたしてどこに鬱憤を溜め込んでいたのであろう、感情の奥底にある重苦しさを含んだ感情を見事に表現していた。
 現場でコメティックを見るのが初めてのファンも多かっただろうが、3人によって作り出されるコントラストは、ユニットに独特の深みを与え、すぐに観客を魅了していった。

 かと思えば、MCパートでは相変わらず、鈴木と郁田による、ゆるっとしたトークが展開され、どこまでもクール一辺倒な斑鳩と対照的で、非常に面白いバランスを保っていた。

 斑鳩が「たとえ1人になっても活動を続ける」と言おうものなら、鈴木と郁田はすぐさま甘え始める。まるで主人と2匹の飼い犬とのようだ。しかし、クールに見える斑鳩は、実は面倒見が良く、カラッとした親しみやすい側面も持ち合わせているようで、決して2人を冷たく扱うことはなく、むしろ、一連のやり取りを楽しんでいるようにも思えた。

 「コメット = 彗星」を意味する『コメティック』は、これまでの彩り豊かだった283プロダクションの世界に、真っ黒な彗星として突如現れた。彼女たちがどのような軌道を描き、どこへ向かうのか、その動きはまさに予測不能だ。彗星のごとく消え去ってしまう前に、彼女たちの輝きを見届けていきたい。




インタビュー



─ コメティックとしてステージに立つようになって、いかがですか?

ルカ:別に。 大きく変わった事は無いですが。 どうであれ、やることは変わらない。だいたい、 ユニットになったからといって何かを突貫で変えたところで、小手先の芝居なら見てる奴にはバレる。そういう生ぬるいことをする気はないし、してきたつもりもないですね。


これまでやってきた通り、ご自身のパフォーマンスを最大限やっていくだけだと。

ルカ:それ以外にやりようがあるなら教えて欲しいくらいです。


ありがとうございます。羽那さんとはるきさんにとって、今回のライブはいかがでしたか?

羽那:う〜ん。とりあえず、ドキドキしてました! 私は、いろんな人と関わったり、見てもらったりすること自体は全然苦手じゃないほうだと思うんですけど、まさかあんなにたくさんの人がいると思ってなくて。緊張して喋れなくなっちゃうってことはないと思っていましたけど、楽しんでもらえるのかな〜とかって考えて、少しだけ不安でした。でも、いざ本番になって、出番前に裏のモニターで他のユニットさんたちが歌っているのを見ていたら、お客さんたちは、みんな応援しに来てくれているんだ、仲間なんだな〜って思えて。そのあと、私たちの出番になってステージに立ってお客さんたちを見たら、会場中のコンサートライトが私たちの色になってて感動しました! それからはもう、すごく楽しくて! 逆に、細かい事はよく覚えていないんですけれど(笑)。

はるき:私は、実は人前に立ったりしたこととかはあったんですけど、それでも羽那ちゃんと同じで、あんなに大きな会場で、それも、自分のことをしっかり見てもらえたことってなくて。だから、リハーサルの時とかも、羽那ちゃんと一緒に「私たち、どうなっちゃうんだろうね〜」って、たくさんお話してました。 でも、ルカちゃんは少しもそういう感じがしなくて、私たちがいなくても1人でステージに立っちゃうんだろうなぁって思ったら、それはちょっと寂しいな〜というか。やっぱり、私たちはコメティックとして、ルカちゃんと3人でステージに立ちたいよねっていうふうに思っていたので、「置いていかれないようにしようね!」って、羽那ちゃんと2人で約束して。


─ 経験の差も踏まえて、羽那さんとはるきさんを引っ張っていくというような意識はありますか?

ルカ:2人がいようがいまいが、私は私がステージに立てる限り立ち続けるだけ。コメティックはあくまでそのためのパッケージに過ぎない。2人が着いてきたいなら着いてくればいい。


コメティック自体を好きでいてくれるファンもいるんじゃないでしょうか。

ルカ:どうでしょうね。それは客が決めること。逆に、もし客が2人だけを見たいって言うなら、その時は私が消える。それだけの話。

はるき:それは絶対にないよ〜!

羽那:そうだよ! というか、私たちがルカちゃんを見てたいかも?

はるき:ね〜!

羽那:それに、ルカちゃんがいなくなったら、コメティックじゃなくなっちゃうから。そうしたら、私たちもいなくなっちゃうよ。


─ ファンのみなさんにとっても、ルカさんは欠かせない存在なのでは?

ルカ:さぁ。どうでもいいですね。

はるき:いや、それは絶対にそうです! だから、まずは私たち、ルカちゃんのファンのみなさんに認められるようにしないと!

羽那:ホントだよ! 追いつけるように頑張るから、待っててね、ルカちゃん!





新曲について


01. Crazy Elegy


羽那:結構強気な曲ですよね。最初、びっくりしちゃいました。でも、良いなって思うところもたくさんあって、「破壊は再構築のための工程」ってとこ、カッコいいなって思ってます!

はるき:私もそこ、好きです!コメティックは真っ黒な衣装に身を包んでるし、これまでの曲も攻撃的…とまでは言わないけど、羽那ちゃんの言葉を借りるなら、強気な傾向があるのかなって思っていて。私自身も、何かを考えたり作ったりっていうことが好きなタイプなのですが、そっか、作るためには、まず今あるものを壊していくっていうことも時には必要なんだな〜って。

ルカ:自分で作った曲ではないし、曲についてどうこう語るのはあんまり乗り気がしないですね。ただ、ライブの反応は良かったと思います。

はるき:すっごく良かったよ! 終演後のアンケート、見させてもらったんですけど、たくさんの人が良かった曲に選んでくれてたんです!

羽那:そうだったんだ! 私たち、まだまだ新人なのにね! とは言っても、ルカちゃんが言ったみたいに、私たちが作ったわけじゃないから、どこまで喜んでいいのかはわかんないんですけど…。嬉しいです!


それは全然いいと思いますよ!コメティックに向けて作られた曲なのですから。

羽那:そう言われると、そうかもしれないですね。やったね。ルカちゃん、はるきちゃん!

はるき:うん! うれしいね〜!



02. 秘メル微音


はるき:この曲は、なかなか良いところといいますか、痛いところを突いてきたなって感じました。私、あんまり怒り慣れてなかったりするので、何か嫌なこととか不満に思うことがあっても、うまく言葉にできなくて。もちろん、そのおかげで喧嘩とかにはならないから、良いことなのかもしれないんですけど。ときどき、本当は心の中では、ちょっと怒ってるよっていう時があって。そういう部分を、自分では表に出さないように出さないようにってしているところがあったので、そんな曖昧な感情を歌わせてもらえたことで、自分にも、そういうところあるなっていうことに気づきました。ルカちゃんは堂々としてるし、羽那ちゃんはけろっとしているようなところがあるので、もしかしたらそうは思わなかったかもしれないけど。

羽那:う〜ん。私も怒ったり悲しかったりするときはあるよ。もちろんすぐに言葉にしたり、爆発したりはしないようにしてるけど。多分、みんなおんなじなんじゃないかな? そういう部分を誰でもきっと隠し持っていて、だからこの曲は、そういう、自分の中に隠しちゃった小さい気持ちの音を聞いてあげるような感じなのかなって私は思ってました。ルカちゃんは、そんなことないのかな?

ルカ:調和していた音が半音下がるだけで不協和音になることがある。たった半音ズレるだけで、その様相が一気に変わることがある。逆もまた然り。ただ、半音下げたものが、必ずしも忌み嫌われるかというと、そういうことでもない。不完全だからこそ、より際立つものもある。そういう曲だと思ってます。

はるき:あぁ〜 なるほど〜! そう言われてみたら、そんな感じがしてきたかも。

羽那:え!? えっと、はるきちゃん、今のでわかったの?

はるき:えっと、私、実はちょっとだけだけど、楽器をやってたことがあって、なんとなくだけど、わかったかも?

羽那:えぇ〜! 私も詳しく知りたいな。・・・ルカちゃん、私にもわかるように教えてもらえないかな…?

ルカ:あ?二度言わせんな


まとめてみますね。『秘メル微音』が表現しているのは、内面に隠した感情のことだったり、あるいは、何かによって隠されてしまった大事な要素だったりのことで、そのせいで欠損が生じることもあるけれど、だからといって、必ずしもそれが悪いということでもない。といった感じでしょうか?

ルカ:まぁ、そんなところです。

羽那:なるほど…。う〜ん。わかったような、わからないような〜。

はるき:羽那ちゃん、大丈夫! 私もそんなにはわかってないよ!

羽那:えぇ〜? それって、大丈夫なのかな〜?



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