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第13回ytv漫才新人賞決定戦感想・審査員寸評

1.優勝は空前メテオ

関西若手漫才師の登竜門、激戦の果てに、空前メテオが見事に同期対決を制しました。茶屋さんの比類なき想像力と、大門さんのセンスあふれるツッコミが見事に融合し、上質の漫才で会場にメテオが炸裂したと言っていいでしょう。本当におめでとうございます。

2.漫才は次世代へ

一般的に、関西の漫才といえばボケツッコミのはっきりした正統派のしゃべくりというイメージが強いと思いますが、今回最終決戦に残ったぐろうと空前メテオは前述とは少しテイストの違う漫才を繰り広げました。ボケの偏った理論にツッコミが振り回されるような、言葉の掛け合いよりも1人の話術に偏重したようなスタイルが特徴です。審査員もその発想力を評価したのだと思います。若手の大会であれば殊更に、スキルよりもセンスが求められたのかもしれません。

加えて2組は同期で4年目の超若手。漫才の新しいかたちの扉は開かれています。「西の正統派しゃべくり」という言葉も今は昔。笑いのスタンダードはこれからも日々進化してゆくことでしょう。

3.各ネタ感想。審査員寸評

1.たくろう フーレンジャー


ザコシ:トップバッターでお客さんを掴み、無茶振りでずっと進むのは良かった
リンゴ:高くつけすぎた気もするが本当に好きな漫才。いつもの感じだけど設定変えていろんな魅せ方ができる。よくできた漫才。
久馬:赤城の雰囲気はなかなか出せない。最初よくある設定と思ったが、最後の「死んだで」あたりが掴まれた
哲夫:2人の雰囲気から一見そうは見えないがめちゃくちゃテクニカル。普通はセリフが被るのは漫才で致命的だが、わざとそうやることでアドリブのような臨場感でキャラ付けしていく。その割に後からかかってくるような重要なワードは2回言っておいて、遊ぶべきところは遊ばせるのがすごい。
岩尾:ヒーローのストーリーを走り出してわからないまま進んでいく「ボケ」と「巻き込まれ」の展開だったので、もう少し長い時間見たらもっと盛り上がるのかなと。巻き込まれながらの時間が長かったからピークまで辿り着かなかった。

2.ハイツ友の会 酒と煙草


リンゴ:人をディスってここまで笑いになるのが認知されてきた。最後に嫌な気分にはならない。オチの「ふん」は真似してやろうかなと思った。
久馬:ほんとは煙草好きなんじゃないかというくらいよく観察している。
岩尾:じわじわきて時々ブローを入れてくるが、もっと強い一発で倒すパンチが欲しかった。
哲夫:無表情スローテンポは単調になりがちだが、時間をたっぷり使ったり瞬殺したり、が単調にならずに同じテンポで行くのがすごいし5年目というのがとんでもない。もう少し滑ってくれないと点数がつけにくく、粗探しになってしまう。
ザコシ:ローテンションの芸風が認知されてきているが、後半に違う方向のボケがあったら伸びた。

3.空前メテオ パティシエ


岩尾:パティシエと魚。一見ぶっ飛んだことを言っているネタだが、入りが自然。このボケに4年だと「ちゃうわ!」となりそうだが加減がしっかりしている。
久馬:たしかに泳いでるパティシエ見たことない。前半丁寧に振ったコック帽が全然関係なくて面白かった。
リンゴ:すごい発想。4分の頭1分が説明。そん間笑いない空気で喋り続けられる度胸。茶屋に目が行きがちだが大門もツッコミの盛り上げ、顔の表情もしっかりしている。4分勝負のコンクールでは最初の1分がもったいなかった。
ザコシ:茶屋のキャラが全て。無邪気。パティシエという普通の単語が連呼するうちにめちゃくちゃ面白くなってきて掴まれた。
哲夫:正直構成の面では加点はなかったが、茶屋の詐欺師のセミナーを聞かされているかのようなついつい引き込まれる感じで、ずっと何言ってるんだろうここぞのポイントで「パティシエって乾いてる」「パティシエは魚」など強いワードをドンと使ってくるので騙されてしまう。一方で大門は引き立てる感じでワードは使わないから、詐欺師のサクラみたい。

4.バッテリィズ 世界遺産

リンゴ:エースが新しいタイプのアホ。ネタを重ねていくと人間らしさが出てくる。最初にテンションを上げすぎて後半見る側が疲れてきた。強弱が欲しかった。
久馬:別にボケてはなく教えてるだけなのに相手を怒らせる構図が新しくて面白かった。
岩尾:10年目で声が出てたと思ったら単純にバカだった。(エース:野球やってたからですよ)素直で「公園めっちゃ好き」とかがリアルに聞こえた。
哲夫:エースは芸人として非常に羨ましい。ほんとにバカに見えるバカ。計算でやってるのが見えてしまうと冷める。世界遺産という知性のあふれるテーマに対しエースの用いる単語は「おもち」「墓参り」「おもちゃ」「おじいちゃん」。ボケで笑うというより2人の関係性で笑えるというのはお客さんをつかんだら離さない。後半に盛り上がったのはそれが要因。

5.ぐろう 永久脱毛

ザコシ:魂と魂のぶつかりあい。対立構造で笑いやすい。
哲夫:漫才として4年目で完成しすぎててすごい。ワードチョイスのテクもあるが、テーマを決めたらパッケージして当てはめていく方が簡単だが、そうではなく2人の掛け合いで展開していくのが良いし、お客さんが置いてけぼりになりそうなところで引き戻すところも作っている。強いて言えば力関係が逆転するところも欲しかった。
久馬:喋り方と風貌が破茶滅茶に見えるが計算されている。

6.ドーナツ・ピーナツ ワイドショー

ザコシ:めちゃくちゃ適当にやってそうでボケがコンスタントにあって笑いが絶えず良かった。
リンゴ:昨年はダブルヒガシとネタ被りがあったが今年は全然違うテイストで面白かった。かな?
久馬:10年目だけあって掛け合いは良かった。設定に関してドーナツがコメンテーターの役割を果たしておらず、もっと俯瞰で見る役で良かったかも。

7.ぎょうぶ おばあちゃん子

リンゴ:待ち疲れ。普段もっと瞬発力ある。デリカシーという言葉の意味がよくわからなくなってきた。オチのためのフリではあるが使いすぎ。
哲夫:内容は面白かったが、テーマ的に客層に合っておらず重かった。笑っていいのかという空気になってしまった。澤畑がもっと悪役になればざまあみろとなるが、会場の良心が働いた。(吉田:住之江ボートレース場ならもっと受けた。)
久馬:めちゃくちゃ面白かった。いい設定だったが残念。
ザコシ:題材に尽きる。つかみも掴みきれてなかった。
岩尾:言ってることは面白かったが入って行きづらい。皆がデリカシーを持ちすぎていた。

最終決戦1.ぐろう 結婚式

最終決戦2.空前メテオ 犬派猫派

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