見出し画像

R-1グランプリ2023を見た感想&審査員寸評まとめ

1.優勝は田津原理音

栄えある21代目ピン芸王者は田津原理音に決まりました。
ダークホースといわれる通り、一般の知名度的には劣っていたかもしれませんが、他を圧倒する笑いで抑え込む形となりました。本当におめでとうございます。

2.採点傾向と人気の分散

今年の採点結果は以下の通り

Wikipediaより

最低得点と最高得点が横並びになっていることを見てもわかるように、たった5人の審査なのに、各々の順位付けが全く異なる。特にカベポスター永見の得点は、2名ずつ最低得点と最高得点に分かれており、評価基準がまるで違うことがわかる。

審査の段階でここまでばらけるのだから、視聴者層にも同様なバラつきは発生しているだろう。さや香orウエストランドどころではない票の割れ方をすると思われる。

こういったバラつきはその他の賞レースでも稀にあるが、R-1は特に顕著だ。良い悪いを言っているわけではなく、満場一致であればある程度世間の評価もまとまるのだろうが、ピン芸はこの段階から既に評価が分散していることがわかる。

過去の記事でも述べた通り、「夢と希望」≒「売れること」と定義するのであれば、その道のりはやはり険しいことだろう。

3.感想&審査員寸評

1.Yes!アキト プロポーズ

劇場でこのネタを見たときに、昨年ザコシショウに「ギャグの羅列は評価に値しない」と痛烈なコメントを受けてからの大改革していたことに衝撃と感動を覚えた。設定のあるコントを軸にした素晴らしいギャグネタだった。その時のライブは明らかに別の芸人目当てと思われる客層だったにも関らず、ダントツで爆笑をかっさらっていたのを見て、本大会でもこれはいける。と確信したのだが、出番順に恵まれなかった。

陣内:トップバッターとして盛り上げてくれた。ギャグの羅列からプロポーズという設定で緊張しながらもギャグをやっていくというのは面白かった。
野田:ギャグにパッケージが乗るだけでここまで面白くなるのか。相手がどうなってるのか想像すると面白かった。早い段階で潔くギャグも吹っ切れてよかった。
ザコシショウ:去年よりだいぶレベルが高い。コントにパッケージ、設定も成り立ってる。テンションがもう少し突き抜けて欲しい。


2.寺田寛明:ことばレビューサイト☆1

こちらもフリップからパワポに刷新。めくる作業を排除することで、こんなにもテンポも上がりボケ数も増やせるという良い例。知性と笑いの歯車がしっかり嚙み合っていた印象。笑辞苑を素直に参考にしたのでしょうか。

バカリズム:着眼点が良く言葉選びも無駄が無かった。若干緊張はあったがネタは問題無かった。
小藪:ちゃんと賢い人で難しい言葉を若年層にもわかるように笑いに変えるのは素晴らしい。
陣内:圧倒的知識量、お笑いIQが高い。


3.ラパルフェ 都留 阿部寛

この人もこれからくすぶるイメージが全くない。むしろ賞レースでも決勝に行けたのが凄い。知名度もからくる現場での受け入れられ方が後押しになっていたようだが、得点が伸びなかったこともまあ理解できる。
ちなみにラパルフェの漫才はモノマネに留まらずメタ要素もあってめちゃくちゃ面白いので、機会があれば見て頂きたい(公式動画見つからず)

ザコシ:子供の発想をコントに仕上げており、凄く素直に笑えた。
小藪:物まねをコントにするにしてはだいぶ上質。
野田:いくら何でもでかすぎる時点で心を奪われた。強いてあげればデカすぎる方面の笑いが欲しかった。

4サツマカワRPG

個人的にはあまりハマらず。去年のYes!アキトの二の舞では?と思ってたら結構点数伸びた。
バカリ:ショートネタの羅列ではあるものの、スーツを着てタイトルも言わず淡々とやり続けることで綺麗にパッケージングされていた。一つ一つのネタも面白かった。
野田:身ひとつでやっているのがかっこよくて芸人として惚れた。
小藪:荒々しい芸風と見せてこういうネタだとギャップで心をつかまれた。

5.カベポスター 永見

ダントツで一番笑った。確かに点数のばらつきは理解できるし、個人的にも大喜利的なネタよりもコントが好みではあるが、とにかく笑ったからしょうがない。「ごめん。食べられる粘土こっちやった」から完全に引き込まれて、全部刺さった。
ザコシ:自分にとってはあるあるでおもしろかった
バカリ:悩んだが、フレーズ以外を排除しているので全ての破壊力が必要。そう考えると強弱があり、大会となると減点対象。
小藪:サツマカワの方が構成凝っていたと感じたが、言われた後に絵が浮かんでこっちに預けてくれるいい膨らませ方があった。羅列かもしれないが面白かった。

6.こたけ正義感

ナイツ塙によるフリップ芸に関する私見を引用(2021年)

 塙はこの持ち時間の短さから「フリップっていうのは、始めからそこに書いてあることで時間が大幅に減らせる」とフリップ芸をする参加者が多く見られることについても考察。「フリップが面白ければ、要するに誰でもいいじゃんってなっちゃって。表現のプラスで使っていればいいんだけど、なんかフリップだけ使ってて、人間の面白さが追いついてないことがあると思う」
東スポWEBより

この考察について自分の中でかなり腑に落ちており、フリップ+αの要素というのは非常に重要なんだなと思っている。
こたけ正義感のネタを見るときに、「面白いネタ」というよりも、「面白い法律を知っている」に終始しているなあと感じてしまう。
ただネタ終わって飄々と「普段の裁判の方が全然緊張するんで。」と喋っていたのが今大会一番笑ったシーンだった。弁護士芸人ということででテレビの需要もあるだろうし、視聴者投票で復活ステージを勝ち上がったことからも一般層の評価を得ていることがわかる。仮にお笑いで売れなくても弁護士で安泰という。どうなっても勝ちルートしか見えない男だ。

陣内:しゅっとした弁護士の姿から崩れ落ちるギャップ萌え。法律の事実だからなおさら面白い。
ザコシ:フリップなのにフリップに終わらない魂の叫びがいい。もう少しテンションが欲しい。

7.田津原理音 カード開封

OHPを使った派生フリップ。上述の通りフリップ芸には人間力が必要ということに加え、この見せ方が良かったのは、カード開封というドキドキを、お客さんと共有できたことだと思う。フリップだと無機質になりそうなものだが、直に移すことで生感が伝わった。

野田:自分の趣味にドンピシャ。どのくらい客席に伝わるか心配だったが内容は伝わっていたので点数を入れた。
バカリ:ただのカードの羅列にならないようにしていた。このネタ自体がステージ上でやる事にふさわしかったと言われると少し?。映像ネタの方が良いんじゃないか。なのでこの点数。

8.コットン きょん

まずはメンツの中で唯一正統派の演技のコントを繰り広げたことがとても好感度が高い。
しかしコンビのコントを一人コントに置換するのは「あのコント、ピンでもできる内容なんだな」と、どうしても冷めてしまう。KOCに続き二つ目の準優勝。平場/相方も含めて今後に期待できる有望株であることは間違いない。

陣内:設定もキャラも音楽の合わせもよかった。
バカリ:よくある警察コントで空いてるとこ見つけたなと。音楽も効果的に使っていた。


4.復活ステージの備忘

ほんとに備忘程度に面白かったのだけメモ。

・清川雄司(ピアノと切り絵):粗さが良かった。
・シモタ(クリスタル):演技力と設定が絶妙。ほかの人が見えた。
・ケビンス 山口コンボイ(にぎやかしショートコント):ひとりケビンス。ケビンスは確実に売れる。
・二代目ちくわぶ(ハモリ):シンプルにくだらなくて笑った。
・ソマオ・ミートボール(サンタ):自力を感じたが音響が大きすぎて会場の笑いが聞こえなかった。次回期待
・エルフ 荒川(フリップ芸):知名度とか抜きで一番面白かった。(もともとなんだろうけど)ギャルキャラを完全に乗りこなしたうえで知性も纏ったフリップ芸には感動した。個人的には復活して欲しかった。

5.おわりに

大会としてはENGEIグランドスラムにくっつけるあたり、単体で放送するのにフジテレビちょっとビビってんじゃない?と少し残念だった。
ウエストランドのおかげで数字も伸びたことだろう、井口に金一封くらい渡してあげて欲しい。

無名芸人が王者になること。夢と希望以外に形容する言葉が見つからない。
やっぱり賞レースには夢や希望があるのだ。その夢と希望が認知されるかどうか、それはこれからの王者自身に託されている。

今後の田津原理音含め、出場したすべての芸人の活躍が楽しみだ。

最後にトロフィーを失ったお見送り芸人しんいちさんのリーク情報を添えて


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?