2020/06/08 WSウイルス

【2020/06/08 WSウイルス】

本当のウイルスのこと、みんな知らないんだよ…。
未来学者O氏は、無人の講演会場で独り呟いた。

果たして、人類の最大の敵はSARS-CoV-2、つまり新型コロナウイルスなのか…

この数か月、新型コロナウイルスの存在は確かに日本人を恐怖に陥れていた。
先行して凄惨な流行が明らかになったWuhan、Italia、New York…
それらの映像を見るたびに、実直な日本人の心は寒風に晒された。

国家を挙げて臨戦態勢が敷かれた。

医療機関は必死の思いで感染症病棟を増設し、引退した医師・看護師まで集めて悲壮な決意を共有させた。さまざまな思いで職に就いている医師や看護師だが、使命感を思い起こし、また、私的な感情を無理に抑えて、戦場に立った。

社会はというと、命より大事なお金のことを一時忘れて、「八割減」の経済活動に協力した。
人の姿が消えた首都圏の街。渋谷、新宿、銀座、東京…。関西でも、梅田、難波、三宮…。全国の街から、人混みが消えた…

テレビのワイドショーは、そういう人たちに追い討ちをかけるように、さまざまな映像を流した。

日本の街の異様のことごとく。

妙に化粧が上手になったおばさまの顔を見るのも戦闘に向かうココロが高まった(人も居るらしい…)。自粛でセントウにも行けないし…

海外のものもあった。医療の現場の悲惨な状況は、見る者の心に深く入り込んでいった。
パリ、ローマ、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ…。
観光で訪れる街々も、常ならざる様子を湛えていて、ただごとならぬことを人々は学んでいったのだ。

コロナウイルスこそが人類の敵だ。

俺たちは、この敵に、力を合わせて立ち向かうのだ。

今こそ、誰もがヒーローになれ、ヒロインになれる。
皆がそう思っていた。そして、いろいろと我慢して、2か月という日々が過ぎていった。

一旦収まったように見えるウイルスだけれど、また東京でフタケタの感染者がいるらしい。
え、北九州は、第二波の真っただ中かよ…
夜の街がアヤシイ。みんなで警戒しよう!

ワイドショーは知らないことを教えてくれる。

もううんざりとしながらも、無視できない感情を持て余していた。腐れ縁の前カノのようだ、と言えばわかりやすすぎるだろうか。

六月になった。蕭々と夕立ちが降りしきっていた。


ふと。

人々は立ち止まり始めた。俺たち、何を信じていたんだろう。
なんで、こんな無為な闘いを続けているのだ。

実際、魔法がとけるように、人々の心は解き放たれつつあるようだ。

六月の梅雨がすっかり洗い流してくれるのかもしれない。

冒頭の講演会場。O氏のひとり舞台は続いていた。
誰も聞いていないのが残念でならない。

諸君、本当に憎むべき最大の敵は、WSウイルスの方なんだよ。

撲滅すべきワイドショー・ウイルスだ。

2020/06/08 Die革命グループ主宰・医師 奥 真也

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?