2020/06/05 J国の抗体バッジ

【2020/06/05  J国の抗体バッジ】

ついに、J国は、抗体バッジを導入した。

そこに至る議論は凄絶だった。
国会は二転三転の議論を重ね、厚労大臣は二人辞任し、専門家会議のメンバーはほとんどが入れ替わっていた。雄弁な首相だけは代わらなかったけれど。

第7波が一応収束した2021年の春、国の科学技術の面子をかけて完成したバッジ用抗体検査が全国民に実施された。

すごく遅いという激烈な批判を浴びながら何とかスタートした制度。

注目された抗体陽性率は20%だった。
ある意味予想通りだったのは、20代男女の抗体陽性率が突出していたこと。
優に70%を超えた。
ほかの世代はおおむね10%台。

公表が控えられたけれど、あるいくつかの地域は、世代に関係なく、5割以上の陽性であったらしい。

抗体バッジをつけて、街を歩く。
バッジをつけ忘れてると、警官が飛んでくるので、習慣は巷にすぐ定着した。

3か月。

同色のバッジをみつけると、人々は安堵した。もはや、バッジの色自体が意味するところはほとんど意味をなしてなかった。

再開された大学キャンパス内。

青い陰性バッジをつけている友達3人と談笑していたA美の脇を、彼氏の陽一が通りがかった。…正確には元カレか。名前通り陽性の赤バッジになった彼を、A美はLINEで秒で振ったのだった。

微妙な空気が流れる。
空気はいいんだけど、ウイルスが流れてこないように、A美は心の中で願った。

一斉に行われた抗体検査は強制だったけれど、それ以外は特にルールがなく、抗体バッジの指し示す色は、ごくあいまいな基準に過ぎなかった。

…いや、過ぎないはずなのだけれど、人々の意識は違った。

街には赤い店と青い店が出現し、それぞれが賑わっていた。
家族の断裂も多数生まれたと聞く。

-------------------------------------------------------------------------------------

退屈になって、Kindleを閉じた。ん?続・Die革命?…ベタなネーミング。

私は、医学史の授業で、この愚かなJ国の話を読んだのだけど、最初は信じられなかった。
あまりにも感染症を理解していない…

J国とは名ばかりで、二つの国家が同時に存在するようだった、と私が読んだこの書には書いてあった。
愚策。
想像に難くない社会の断裂と混迷…

ただ、100年後の医学生の私が改めて振り返ると、この感染症も、歴史上のほかの感染症とそう代わるものではなかったか。

2020年を生きる人達に聞いてみたいと思う。まだ、生煮えの文章だけど(笑泣)。

2020/06/05 Die革命グループ主宰・医師 奥 真也


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?