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【代理人列伝】父親の権力を乱用して、マンチェスターUを出禁になったファーガソン息子

漫画『フットボールアルケミスト』の第3巻が1月29日に発売になります!主人公が進める日本人選手のドイツ移籍を、ドイツ人代理人が妨害する・・・という「欧州移籍あるある」の内容になっています。

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その中でクラブの会長とスポーツディレクターが親子で働いているという設定が出てきます。成功した父親のツテで、息子が採用されるという“縁故採用“も「あるある」なんです。

マンチェスター・ユナイテッドの名将、アレックス・ファーガソン監督と息子ジェイソンの場合もそうでした。

父親への口利き料で稼いでいた?

息子のジェイソンはもともとスカイのプレミアリーグ中継のプロデューサーを務めていたのですが、突然、代理人へ転身。2001年春に代理人事務所「Elite Sports Group」を立ち上げ、父親の代理人になりました。

父親との関係を生かし、最終的にマンチェスターUの13人の選手の代理人を担当していました(MFダレン・フレッチャー、MFクイントン・フォーチュン、GKロイ・キャロル、10人のユース選手)。

しかし、2004年1月、親子の関係が大スキャンダルに発展します。きっかけは匿名者によるサンデータイムス紙へのリークでした。

2003年夏、アメリカ代表のGKティム・ハワードがメトロスターズからマンチェスターUに移籍した際、代理人手数料の一部がジェイソンの会社「Elite」に流れた——と告発されたのです。

この移籍でマンチェスターUとやりとりしていた“表向き”の代理人は、ガエタノ・マロッタ(スイス人)でした。

だが、その背後にモナコ在住のマイク・モリス(イギリス人)を介して、ジェイソンの存在があったというのです。

ハワードの「移籍金」は230万ポンドで、マンチェスターUは“表向き”代理人のマロッタに「仲介料」として75万ポンドを払いました(手数料約33%!)。

本題はここからです。告発によると、マロッタが(まったく関係がなさそうに見える)モリスへ13万9000ポンドを振り込んだ・・・とされています。

話がややこしいのですが、モリスはジェイソンの“同族”と見られています。モリスの携帯電話料金をジェイソンの会社「Elite」が支払い、彼は「Elite」の事務所を自由に使っていた・・・というのが理由です。

代理人報酬がマロッタ→モリス→ジェイソンと流れた?

ジェイソンは父親への口利き料を受け取った?

違法ではないとしても倫理的に問題がある。一気に疑いの目が向けられました。

BBCによる告発

さらに2004年5月、BBCが「ファギーと息子」というドキュメントで、新たな告発がなされます。2001年夏のDFヤープ・スタムのマンチェスターUからラツィオへの移籍(移籍金1650万ポンド、仲介料120万ポンド)でも、同様の手口が使われていたと。

この移籍で“表向き”の代理人はモリスでした。ラツィオは記者会見の際、モリスへの感謝の言葉を口にした。ところがラツィオに送られてきた手数料請求書の名義は、ジェイソンの「Elite」社だったというのです。

当時、スタムは自叙伝での暴露でファーガソン監督と衝突し、放出候補になります。その情報をいち早く知ってジェイソンは動いた?

当時クラブは株式を上場していたこともあって、マンチェスターUは内部調査を開始しました。

その結果、マンチェスターUは「今後Elite社との取引を一切停止する」という決定を下しました。ジェイソンは“出入り禁止”になったのです。

ファーガソン監督はBBCの番組に激怒し、その後7年間もBBCのインタビューをボイコットし続けました。

リークの原因は世界的名馬?

いったい誰が告発したのでしょう?

マンチェスターUの大口株主ジョン・マグナーは、世界的な競走馬の生産者なのですが、ファーガソン監督と共同所有する馬「ロックオブジブラルタル」の種付権を巡って裁判沙汰になっていました。

もともとマグナーがファーガソン監督に敬意を評して同馬の権利の半分をプレゼントしたのですが、なんとその馬が世界G1連勝新記録を打ち立てるなど大活躍。種牡馬になり、初年度だけで約25億円も売り上げたそうです。

マグナーとしてはプレゼントしたのは馬の保有権だけで、種付権は自分が100%持っていると考えた。しかしファーガソン監督は種付権の半分を持つと主張し、裁判を起こしました。

マグナーは筆頭株主になってファーガソン監督解任に動き、泥沼の争いになります(詳しくはwikipediaの「ロックオブジブラルタル」の解説を参照)。

マグナーは否定していますが、ジェイソンにまつわるリークの元はマグナーだと言われています。

リークの裏に内紛あり。

オーナー、監督、代理人。ピッチ外の私利私欲が絡み合い、1つになるのは簡単ではありません。

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