ユーザーの時間軸にそってKPIを立てると発想しやすい
この記事のテーマ
今日は以下の話をしたいと思います。
・大きな問題を分割する事で解きやすくなる。
・良くある分割方法として「売り上げ = 人数 * 単価」といった分割がある。
・その他に使える分割方法として「ユーザーの時間軸にそってUX上のマイルストーンで問題を分割していく」という軸が使える。
[動機] 大きな問題を分割したい
KPIの設定方法によく使われる方法として、以下のようにKGIを掛け算で分解する手法があります。
売り上げ = 客人数 * 客単価
お客さんの「人数を増やす施策」と「単価を上げる施策」は性質が異なることも多いので分解することで考えやすくなります。(分解する事によるデメリットも大きいのですが、それはまた別の記事で説明します)
このようなアプローチは大きな問題を分解していく事で解きやすくする手法と言えるでしょう。
さて、この大きな問題を分解する「軸」には色々なものがありえます。今日は、そのバリエーションの一つとして「ユーザーの時間軸にそって問題を分割する」という視点を紹介したいと思います。
[方法] UXの軸で分割する
まず、ユーザーの視点で見て体験上のマイルストーンとなる出来事をタイムラインで表現します。
このマイルストーンはログとして調べられる物を置きましょう。
図: ユーザーの体験上のマイルストーンを並べたタイムライン
※初コンバージョン: 例えばECなら初めての購買とかを想像してください。
※休眠化、離脱などの定義はサービスによって色々だと思いますが、一定期間コンバージョンやアクセスが無くなった状態だと想像してください。
そして、マイルストーンとマイルストーンで挟まれた領域を一つのユーザーセグメントとみなし、サービス全体のユーザーを各セグメントにマッピングして分析します。
ここでの分析のテーマは以下のような物です。
ユーザーの時間軸にそった分析の例
・それぞれのセグメントに何人のユーザーが居るのか?
・あるセグメントから次のセグメントに移行したユーザーと、そうで無いユーザーは何が違ったのか? 例えば流入した広告によってコンバージョン率はどう変わる? (比較)
・あるセグメントから次のセグメントまでの経過をさらに細かくマイルストーンで区切った時、どこでユーザーはドロップしているのか? (ファネル)
みたいな分析をしていきます。
この手法の便利さは、いろんな粒度の分析に用いることができるという点です。
例えば、アプリを起動してから終了するまでのタイムラインを書いてみてもいいですし、もっと細かく1画面遷移を1マイルストーンするタイムラインを書いてみても良いと思います。
あるいは、もっと広い視点で、ユーザーがプロダクトに「タッチする前 / タッチして利用している間 / 利用が終わった後」という分解も可能だと思います。これはUXデザインの用語で言う「予期的UX / エピソード的UX / 累積的UX」という分割に近い概念と言えると思います。
[利点] 顧客視点、長期視点
さて、このようにユーザーの時間軸で分解を行うメリットは何でしょうか。
例えば、売り上げ = 人数 * 単価という分解をした場合に「インセンティブを使って短期的に単価を上げる」と言った視点が出がちですが、ユーザーの時間軸で分解すると。顧客視点の分析が発想しやすいと思います。
それは、企業の視点からみれば、ユーザーベースを獲得するという長期視点に立った発想がしやすいとも言えます。
[欠点] 売り上げとの関係が不明確
一方で欠点としては、この視点から発想したKPIは、どのくらい改善したらどのくらい売り上げが増えるのかという関係性が明確ではないという点があげられます。
これまで1回もコンバージョンしていなかったユーザーが、あらたにコンバージョンするようになったとして、既存顧客と同じ単価が得られるのかは不明確です。
そういった意味で「これをやれば売り上げXX%アップが期待できる」といった短期的な施策の検討には不向きと言えるでしょう。
まとめ
・大きな問題を分割する事で解きやすくなる。
・「売り上げ = 人数 * 単価」という分解が良くあるが、「ユーザー視点で見てUX上のマイルストーンで分解する」という方法も使える。
・この手法は、短期的な売り上げの追求には向かないが、UXの改善、ひいては長期的なユーザーベースの確立に役立つ。
続き
今日は、大きな問題を分解する軸というテーマで話させていただきました。
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