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電源コンセントからインターネット!?既存設備を有効活用「高速PLC」

「電力線をインターネットに使うって本当の話ですか?」

はい、こんにちは!松井真也です。新シリーズ「1分でわかる!ネットワーク用語」第11回でございます。

前回は、FTTHに関連する技術としてPON(Passive Optical Network;受動光ネットワーク)をご紹介しました。電力供給を必要としない受動的な装置で受信するデータを分岐してくれるのでした。設置・運用コストが安くなるのが大きな利点でしたね。

さて、今回は、高速PLC(Power Line Communications)についてお話しします。この技術では、電力線をデータの送受信に使います。ケーブルは少ない方が設置・運用コストが安くすむのは分かります。ADSLでも、アクセス回線として電話線を活用しますし。でも、まさか電力線を使うとは!

そんな驚きの仕組みがちょっと気になる方は、続きをどうぞ!

 高速PLCとは何か?

高速PLC(Power Line Communication)とは、上に述べたように、電力線を通信回線として使用する技術です。数Mbpsから数百Mbpsの速度でデータ通信できます。他方、低速PLCもあり、こちらはKbps級です。

家庭やビルに既に設置されている電力線を使うので、特別に配線を追加する必要がないことが大きなメリットです。ケーブルが少なくければ、設置コストも運用コストも安く抑えられますね!

家庭内で使う場合をイメージしましょうか。1階にルータがあるけれど、2階にあるパソコンに有線でつなげたいな…。そんなとき無理やりLANケーブルを設置しなくても、電源コンセントケーブルで接続できるというわけです。

絵にすると次の通りです。

家庭内でPCLを利用するシーン

だいたい、高速PLCはどんなものかイメージできましたね!

高速PLCの大きな課題

なかなか便利そうな高速PLCですが、実は重要な課題があります。電磁波の漏洩です。

PLCは、もともと高周波信号を流すつもりはなかった電力線を通信回線として使用します。結果として、電磁波が外部に漏れる可能性があります。この電磁波がアマチュア無線など他の無線通信に干渉する懸念があるのです。

この問題に対処するため、2000年代前半から政府でいろいろ議論された結果、2006年には総務省が規制を緩和し、屋内利用向けにPLC対応製品が発売されることになりました。すると、この技術は一気に注目されるようになりました。2013年以降は、屋外利用の方法も整理されました。

広がる高速PLCの可能性

「ちょっと待て、私の周りにはそんな技術を家庭で使っているなんて聞いたことがないぞ!?🤔」と思った方。う~ん、そうかもしれません。

というのも、現代では新たな引き込み線の第一選択は光ケーブルです(メタルも健在ですが)。引き込んだ後は、Wi-Fiで自宅内のネット環境を作れば事足ります。家庭内でPLCを使ってネット環境を作るのは、あまり主要な方法とは言えませんね。

では、高速PLCはもう使われないのか…というとそうではありません。実は、ビジネス利用の方で注目されています。

例えば、パナソニックの取り組みがあります。詳細はこちらです。

2023年、自社の「HD-PLC」のブランド名を「Nessum」に変更し、その技術を広範囲に展開しています。

HD-PLCは、電力線を含む様々な種類の回線を利用してインターネットに接続する技術で、ビルや工場などでの利用が進んでいます。

ポイントは、PLCに限ったソリューションではないというところです。従来のPLCの枠を超え、多様なメディア(有線、無線、海中通信)を応用してネットワーク構築します。結果として、省線化、低コスト化、高速通信の実現が図られるというわけです。PLCを柱にしつつ既存の設備、既存の技術を上手に取り込んで最適な通信環境を作るのでしょう。

また、HD-PLC技術は現在、モビリティ分野や充電ステーション、水中通信技術!など、新たな領域への応用が検討されています。今後の展開が期待されますね!


はい、本日はここまで!今回は、電力線を使って通信しようという「高速PLC」についてご紹介しました。興味深い技術でした。

さて、次回は、近距離通信やアクセス回線の話が終わったところで、「移動通信システム」についてお話しします!

では!


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