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硫黄島の沈没船、いつからあるのか調べてみた

沈没船が陸上に…

FireShot Capture 1830 - 地殻変動で沈没船が陸上に…小笠原諸島で噴火相次ぐ|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト - news.tv-asahi.co.jp

テレビ朝日の「地殻変動で沈没船が陸上に…」の記事が話題です。https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000232187.html

朝日新聞社機による上空からの映像ということで、最近活動が活発な「福徳岡ノ場」「西ノ島」「硫黄島」の状況が一目瞭然。火山好きにはたまらないお宝映像でした。朝日新聞さん、テレビ朝日さん、ありがとうございます。

そして、火山に目を奪われると同時にめちゃくちゃ気になったのが、硫黄島の海岸線にあった「沈没船」。

まるで映画のセットのようですが、最近の活動で現れたものなのか気になったので調べて見ました。

沈没船、いつから?

Google earth proでさっそく島の西の海岸を見てみると…

硫黄島2020

確かに画面中央の海岸付近に多くの沈没船があります。今回、朝日新聞社機から撮影されていたような沈没船は、去年の時点ですでにあったようです。

Google earth proは過去に遡って画像を確認できるので、画角はそのままに昔の状況を確認してみます。一番古いのは2005年8月の画像でした。それがこちらです。ドン。

硫黄島2005

画面の中央部、海の中から沈没船の一部が顔を出しているのがわかるでしょうか。今から16年前はこのような状況だったようです。船があるのはわかるけど、今とは全然違いますね。海の中って感じです。しかし、これから8年後、2013年3月になるとこうなります。ドン。

硫黄島2013

船はまだ海の中ですが、形は以前よりはっきりしてきましたよね。画面中央上、北側の海岸線は西に張り出して、船の近くまで来ています。さらに4年後の2017年9月になるとこうなります。ドン。

硫黄島2017

海岸線が全体的に西に延びてきました。船もさらにくっきり見えます。船に波が当たって白波が立っているような様子も確認できます。さらに2年後の2019年11月になると…

硫黄島2019

はい、こうなります。北側と南側にあった船は、完全に砂浜の上に乗り上げたような形です。

2005年から2020年までの15年間で、海岸線が西に広がって、船も陸に打ち上がったような形になったことが見えてきました。

急激に"隆起"する地面

こうした背景にあるのは、島の「隆起」です。

火山活動が活発な場所では、地盤が隆起することが知られています。

硫黄島の隆起は、国土地理院がデータを公開しています。

国土地理院は火山活動が活発な地域の地殻変動の観測結果を毎月公表していて、誰でも見ることができます。こちらで確認できます⇒ https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/kazan_index.html

FireShot Capture 1826 - 国土地理院による火山周辺地域における地殻変動観測の概況 - 国土地理院 - www.gsi.go.jp

硫黄島は近年は活動が活発なので、毎月データが公表されています。例えば、2021年9月のデータを見るとこのような感じです。

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これは地殻変動のうち上下方向の変化(隆起と沈降)を示しています。島内の「M硫黄島A」という観測地点では、1か月で15.1センチも隆起しているのです。

試しに、2021年1月~9月までの値を集計してみると、なんと94.3センチ!(1月10.6cm/2月7.9cm/3月10cm/4月9.3cm/5月7.2cm/6月9.6cm/7月13.2cm/8月11.4cm/9月15.1cm)。

1年も経たないうちに1メートル近くも地面が高くなっていました。これはすごい値です。

FireShot Capture 1831 - 震災後10年間の国土地理院の対応 - 国土地理院 - www.gsi.go.jp

2011年3月11日の東北沖の巨大地震では、東北の沿岸が広い範囲で沈降したあと、ゆっくりと隆起しています。国土地理院のデータでは、そのうち最も隆起したのは石巻市ですが、震災後の10年間で隆起したのは68センチ。硫黄島ではわずか9か月でこの値を超えてしまっているんです(画像は国土地理院のページより)。

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この先、硫黄島がどう変化していくのか。引き続き、注目です。

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